

- 婚約者エリザベッタを父王フィリッポ二世に奪われたスペインの王子ドン・カルロは、友人ロドリーゴのすすめで圧政に苦しむフランドル人民の解放に立ち上がるが、王への反逆罪に問われる。一方、王子に恋心を抱く女官エボリ公女は嫉妬心から国王の前でエリザベッタを陥れる。ロドリーゴは王子の身代わりになり、罪を背負って王の部下に暗殺される。解放され、フランドルに旅立つ前にエリザベッタと永遠の別れを惜しむ王子に、国王は逮捕を命じるが、突如カルロ5世の亡霊が現れカルロを連れ去る。

エル・エスコリアル宮殿《ドン・カルロ》に出てくるのは実在した歴史上の人物たちです。唯一、ドン・カルロの親友でありフランドル人民解放の理想に燃えるロドリーゴだけが、原作を書いたシラーが創造した人物でした。物語の舞台はマドリッドの王宮とその近郊。第一幕のサン・ジュスト修道院(スペイン語ではユステ修道院)は、先王カルロ五世が余生を過ごしそこで亡くなった修道院で、現在も存在します。もう一つ重要な場所は、フィリッポ2世の有名なアリア「ひとり寂しく眠ろう」の中で、いずれ自分が葬られる場所として言及されるエル・エスコリアル修道院です。マドリッドからほど近いグアダラマ山脈の麓に位置する、フィリッポ2世が建設を命じた巨大な修道院には王家の霊廟もありました。エル・エスコリアルは宮廷の夏の離宮としても使われていました。その荘厳で威圧的な建物は、質素な作りに敬虔な祈りを感じさせるサン・ジュスト修道院とは対照的です。新国立劇場《ドン・カルロ》のマレッリ演出の舞台は、このエル・エスコリアルを美術のモチーフとして使用しています。


- 【作曲】ジュゼッペ・ヴェルディ/1865~66年
- 【原作】フリードリヒ・フォン・シラー『ドン・カルロス』
- 【台本】ジョセフ・メリ/カミーユ・デュ・ロクル(フランス語)
- 【イタリア語訳】アキッレ・デ・ラウジェレス/
アンジェロ・ザナルディーニ
- 【初演】1867年3月11日/パリ/オペラ座
- 【制作】新国立劇場2006年
- 【構成】4幕/約3時間
- 【演出・美術】マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
- 【衣裳】ダグマー・ニーファイント=マレッリ
- 【照明】八木 麻紀