

- 亡くなったばかりの大富豪ブオーゾの遺産が修道院に寄付されると知り、親類たちは愕然としている。ブオーゾの甥リヌッチョと結婚したい娘ラウレッタは父親のジャンニ・スキッキに懇願し、ジャンニ・スキッキはブオーゾになりすまして遺言状の書き換えをすることとなる。しかしジャンニ・スキッキが遺言を口述する段になると、すべては自分に遺すと言い出す。親戚たちは怒り狂うがすでに後の祭り。最後にジャンニ・スキッキが口上を述べ、幕が降りる。

アルノ川とヴェッキオ宮殿の見える夕景プッチーニが書いた唯一の喜劇オペラ《ジャンニ・スキッキ》は1299年のフィレンツェを舞台にしています(新国立劇場の粟國淳演出のプロダクションは1950年代に時代を移しています)。台本作家のジョヴァッキーノ・フォルツァーノはフィレンツェ出身で日頃から、この町で生まれた詩聖ダンテの『神曲』を愛読していました。プッチーニが《三部作》の三作目に喜劇的なオペラを必要とした時に、『神曲』の中のこのエピソードを提案したそうです。ダンテは1265年に生まれ1301年に政争でこの町を追放されるまでフィレンツェの市政の中心で活躍していました。当時のフィレンツェは、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂が数年前に着工し、政庁舎となるヴェッキオ宮殿はまさに1299年に建設が始まったばかりでした。このオペラの中で若いカップルのリヌッチョとラウレッタはそれぞれがフィレンツェにまつわる美しいアリアを歌いますが、特にリヌッチョの「フィレンツェは花咲ける木のごとく」は、シニョーリア広場、アルノ川、サンタ・クローチェ広場、アルノルフォ、ジョット、メディチ家などを列挙して、フィレンツェがいかに活気にあふれた素晴らしい町かを歌っています。


- 【作曲】ジャコモ・プッチーニ/1917~18年
- 【原作】ダンテ・アリギエーリ『神曲』
- 【台本】ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ(イタリア語)
- 【初演】1918年12月14日/ニューヨーク/メトロポリタン歌劇場
- 【制作】新国立劇場2019年
- 【構成】1幕/約1時間
- 【演出】粟國 淳
- 【美術】横田 あつみ
- 【衣裳】増田 恵美
- 【照明】大島 祐夫