

- ウィーン郊外。アイゼンシュタインは刑務所に入らねばならず苛立っている。そこへ悪友ファルケが誘いに来たため、妻ロザリンデには嘘をつき、アイゼンシュタインは気晴らしに夜会へと出かける。夜会へは仮面をつけたロザリンデも来ており、アイゼンシュタインは妻と気づかず口説く。翌朝、刑務所に出頭したアイゼンシュタインは駆けつけた妻の浮気を疑うが、自分の浮気がばれるはめに。そこへこの茶番劇の全ての仕掛人ファルケが現れ、大団円を迎える。

バーデン・バイ・ウィーン音楽の都ウィーンといえばウィンナー・ワルツがすぐに頭に浮かびます。19世紀後半に活躍したヨハン・シュトラウスⅡ世はワルツ王と呼ばれました。シュトラウスⅡ世は後年、オペレッタの作曲に着手します。中でも《こうもり》は大成功を収めました。物語は「ある大都市近郊の温泉地」を舞台にしており、ウィーン近郊のバーデン・バイ・ウィーンがモデルといわれています。ウィーンから南に26km行ったところにある温泉地で(バーデンはドイツ語で「入浴する場」という意味)、王侯貴族や、モーツァルト、ベートーヴェンなどの芸術家たちも数多く訪れました。《こうもり》の主人公アイゼンシュタインは金利生活者。彼が投獄される理由は役人に対する侮辱罪ですし、過去には泥酔した友人ファルケを仮面舞踏会の帰りに“こうもり”の格好のまま置き去りにして人々の笑いものにしたりと、かなりやんちゃな性格です。しかも豪華な夜会で口説いた美女が変装した妻だったという体たらく。でも欠点のない人間はいません。シャンパンの泡のようにはじけるシュトラウスⅡ世の音楽がすべてを忘れさせてくれるのです。


- 【作曲】ヨハン・シュトラウスⅡ世/1874年
- 【原作】アンリ・メイヤック/リュドヴィク・アレヴィ
『レヴェイヨン』他
- 【台本】カール・ハフナー/リヒャルト・ジュネ―(ドイツ語)
- 【初演】1874年4月5日/ウィーン/アン・デア・ウィーン劇場
- 【制作】新国立劇場2006年
- 【構成】3幕/約2時間30分
- 【演出】ハインツ・ツェドニク
- 【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
- 【振付】マリア・ルイーズ・ヤスカ
- 【照明】立田 雄士