夕鶴
夕鶴
夕鶴

つうの哀しみが胸深く染みる。美しい詩と抒情性あふれるメロディー彩られた日本オペラの傑作

夕鶴

JAPAN
あらすじ
雪深い村の純朴な青年与ひょうは、美しい妻つうと小さな家で仲睦まじく暮らしている。強欲な運ずと惣どは、つうが織る千羽織が高く売れると聞きつけ、もっと沢山布を織るようつうに強要しろと与ひょうをそそのかす。与ひょうは都に行くことを夢見て、布を織るようつうに命じる。つうは布を織っている姿を決して覗かないように頼んでいたが、与ひょうは我慢できずに覗いてしまう。それは鶴が羽を織り込む姿だった。翌日、やせ細ったつうは千羽織を与ひょうに渡すと別れを告げ、空に飛び立っていく。
舞台となった土地紹介
佐渡の水田
《夕鶴》は、木下順二の戯曲『夕鶴』の台詞をそのまま使い團伊玖麿が作曲したオペラです。1949年に発表された『夕鶴』は女優の山本安英のために書きおろされた芝居で、山本は生涯で1037回つう役を演じました。その源は日本各地に残るという“鶴の恩返し”の民話ですが、木下は、柳田国男編・鈴木棠三著の「佐渡島昔話集」(『全国昔話記録』シリーズの一冊)の中の「鶴女房」を元に『夕鶴』を創作しました。鶴はロシアや中国から越冬のために日本に渡ってきます。トキでも有名な佐渡市は水田が多く水が綺麗なので野鳥が飛来しやすい環境が整っていたのでしょう。この昔話の発祥は日本海側の海岸線にある北片辺の集落だといい、北片辺の公民館前には木下順二と山本安英が1989年にこの地を訪れたことを記念する碑が残っています。山の傾斜を利用した棚田が広がり、オレンジ色の岩ユリが咲く美しい土地。ここには古い布を裂いて布を織る裂織という伝統工芸もあり、それも鶴の機織りを想像させます。鶴は夫婦になると一生そのつがいと添い遂げるそうです。この土地に降り立ったつうも、自分を助けてくれた与ひょうとずっと一緒に暮らすことを願ったのでした。
  • 【作曲】團 伊玖磨/1952年
  • 【作】木下 順二(日本語)
  • 【初演】1952年1月30日/大阪/大阪朝日会館
  • 【制作】新国立劇場2000年
  • 【構成】1幕/約2時間
  • 【演出】栗山 民也
  • 【美術】堀尾 幸男
  • 【衣裳】植田 いつ子
  • 【照明】勝柴 次朗
  • 【振付】吾妻 徳穂