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2010年 12月

第5回 何もない舞台の歴史 その1

 水曜ワイルダー約1000字劇場、音響担当の水谷です。今週はちょっと時代をさかのぼって、ワイルダーが理想と考えていた演劇空間のひとつ、エリザベス朝の舞台の話を。シェイクスピア(1564-1616)が活躍した時代ですね。

 現在わたしたちは翻訳でシェイクスピアの戯曲のすべてを読むことが出来ます。たとえば『ハムレット』を読んでいるとしましょう。1幕5場で、ハムレットは亡霊からその死にまつわる秘密を打ち明けられ、興奮して「おお、満天の星よ」と呼びかけ、クローディアスへの復讐を誓います。この場面を読んで、みなさんならどんな舞台を想像しますか? 「満天の星」ですから、夜のエルシノア城の城壁近くで、風が吹いていたり・・・。『マクベス』の魔女の場面はどうでしょう? あるいは『ロミオとジュリエット』の有名なバルコニーのシーンは(これも夜ですね)? 

 みなさん、ひょっとしたら、映画のような場面を想像していませんか? でも、シェイクスピアの時代、当然、照明はありません。ちょっと当時の劇場の模型を見てみましょう。エリザベス朝の公共劇場は円筒形の建物で、屋根は舞台の一部とその舞台を囲む客席の上にしかありません。真ん中は青天井で、円の中央に張り出している舞台の上に太陽光が入るようになっており、すべては日の光の下で演じられていました。

©New York Public Library

※シェイクスピアが座付作者であった宮内大臣一座の劇場、グローブ座の模型 

 さらに良く見ると、幕を引いて舞台を隠すようには作られていません。つまり舞台転換をするにしても、隠すことができないし、何かを舞台に運び込む場合も、丸見えです。隠すという発想がそもそもなかったのかも。つまり芝居とは「嘘」であることが大前提だったということですね。さらに当時、女優は存在していませんでした。女性役は声変わりをする前の少年俳優が演じていました・・・ジュリエットも・・・(ということは、男同士が、昼日中、舞台の上で・・・歌舞伎も同じか)。

©New York Public Library

※グローブ座内部の模型

 この時代、「芝居を見る」という言い方は普通ではなく、「芝居を聞く」(hear a play)という言い方が一般的でした。台詞の大半は無韻詩という型の詩で書かれていたんですね。つまり、何もない舞台から語られる台詞(詩)により、観客は何もない舞台の上に夜だろうと、嵐だろうと、海だろうと、妖精だろうと、美女だろうと、太陽光の下で、すべてを「想像力」の助けで見ていたということになります。

 これもシェイクスピアですが、『ヘンリー5世』のプロローグにこんな台詞があります。(すでに1000字を越えてますが、お許しを!)

  われらのたらざるところを、皆様の想像力でもって
  どうか補ってください、一人の役者は千人をあらわし、
  そこに無数の大軍がいるものと思い描いてください。
  われらが馬と言うときは、誇らしげな蹄を大地に印する
  馬どもの姿を目にしているものとお考えください・・・・
  数年間にわたって積みかさねられた出来事を
  砂時計の一時間に変えるのも、皆様の想像力次第です。
                         (小田島雄志 訳)

 昔、演劇はそういうものだったんですね。と言うか、これが演劇の本質なのではないでしょうか。嘘と想像力のコラボ。少なくともワイルダーはそう考えていたと思います。でも、シェイクスピアよりも前に、もっと『わが町』に近いものがあるんですよ、結構身近に・・・それはまた来週にでも。

合唱コンクール

本日は、稽古場にて「合唱コンクール」が行われました!

これまでは讃美歌を歌う30人全員で練習してきたのですが、
チーム分けして少人数で歌うことにより、より「隣の人の声」を意識して
歌うことが出来るだろう、という「出ない」舞台監督・澁谷さんの提案でした。
うまいことに、各パートちょうど3つのチームに分けられる人数がいたのです。

そういうわけで、バス3人、テノール3人、アルト2人、ソプラノ2人の計10人の
ミニ合唱団が3つ出来まして、数日前からチームごとに練習したりしていたのです。

まずは審査委員長・小堺さんから開会宣言がありまして
第一回「わが町」合唱コンクールのスタートです!

各チームの代表者3名でじゃんけん、順番が決まります。

第一組目は鷲尾真知子さん率いるこのチーム。

やはり一番手はかなりの緊張を強いられた模様。
でも、日頃の練習の成果はちゃ~んと出ていました!すばらしい!

第二組は斉藤由貴さん率いるチームです。
このチームは昔、本当に合唱団に所属していた横山央くんや、
ゴールドシアターきっての美声の持ち主、森下さんがいらっしゃるチーム。
しかもソプラノには斉藤さんがいらっしゃいます。

やはりかなりお上手です。そしてそして、斉藤さんは本当に美しいお声の持ち主です。

最後に登場するのは佐藤正弘さん率いるチームです。
佐藤さんがリーダーなのにチーム名は「チーム・キアーラ」ソプラノの位置にいた橋本咲キアーラちゃんが前に押し出されて苦笑いです。

おぉ、とてもきれいなハーモニーです。声が合わさっている感じです。

全てのチームの合唱が終わり、審査員が集結して優勝チームを決めます。
審査員は、委員長の小堺さんを始め、演出の宮田さん、言い出しっぺの澁谷さん、ジョージ役の中村倫也くん、エミリー役の佃井皆美ちゃん、制作チームから一人、そしてこのコンクールのために来てくれた歌唱指導の伊藤和美さん。

そして、今回の優勝チームは………………………………

最後にうたった「チーム・キアーラ」に決定!!!!!!!

小堺さんから「見えないトロフィー」の授与、そして宮田さんから小さな景品の
贈呈があり、第一回「わが町」合唱コンクールは幕を閉じました。

すっかり盛り上がった稽古場でしたが、もちろんそのまま稽古に突入~。
本日は第二幕を徹底的に繰り返しております!!

こんなの、着るんですよ

本日は稽古前に衣裳の打合せがありました。
生地のサンプルとデザイン画を見ながら、この人にはこの生地でこんなデザイン、
あの人にはこっちの生地でこういうデザイン、という話をする打合せですね。

衣裳プランナーの加納さんが、そのまま稽古開始まで残ってくださって
出演者にも、今回の「わが町」の衣裳デザインが発表されました。


シンプルでいて、印象に残るコスチュームのデザイン画に、みんなからは感嘆の声が上がります。
どの役の人が何を着ているかは、稽古での役へのアプローチの仕方にも関わりますから、出演者にとっては大切な情報です。

しかしながら、みんながどんな衣裳を着るのかは、本番でのお楽しみの一つですから、デザイン画にはモザイクをかけさせていただきました~
ご了承くださいませ m(_ _)m
でも、デザイン画を見ている出演者たちの顔、嬉しそうでしょ?
素敵な衣裳になりそうで、(も)も楽しみです♪

こうやって、いろいろなことが一つづつ具体的になっていっています。
稽古の進行とともに、スタッフワークも同時に進んでいくのです。
まだまだ進化を続ける「わが町」、どうぞ楽しみにしていてくださいね!!!

内山ちひろさんのわが町

続いてはBoys&Girlsの内山ちひろさん。

私の『わが町』には、コンビニがありません。銀行もレストランも映画館もありません。 
電車は1時間に1本あるかないか。冬は‐10度以下になることもしばしば。

長野県木祖村。

私の生まれ育った田舎です。
便利な物は少ないですが、その代わり、たくさんの自然があって、家族がいて、友達がいます。
小さい頃から知っている人がたくさんいて、今でも声をかけてくれます。
この小さな村が私の大好きな『わが町』です。

稽古は激しく進行中!

11月25日から立ち稽古が始まった稽古場。
約1週間かけて、最初から最後まで、ひとまず全ての幕、すべての場の立ち稽古
一巡目、そして二巡目が終了しました~♪
早い!早いです!!

早いのには、きちんと訳がありましてですね、
前にもこちらで書きましたが、「わが町」には舞台装置らしい舞台装置が
ないものですから、まず「ルール」を決めていかなければならないのです。
ここが誰それさんのお家、あっちが商店街、ここが道、そっちがひとん家の庭、
森、川、山……もちろん、細かいことも決めていきます。
ドアはここ、お勝手口はこっち、誰が何を持ってくる、鞄はこんな、本は……
稽古場にいる全員でその「ルール」を作り、共有しないと、一つ一つの場面を
より細かく、より深めていく作業が出来ないんですね~。

そんなわけで、ルール作りの1週間を経て、本日からは場面場面を細かく割って、
丁寧に深めていく作業が進行中です。
出演者にもスタッフにもわかりやすいように、稽古場には目印がいっぱい。
ひとまずは、これらを意識しながら稽古は進行します。
でも、みんなが目印を覚え出したら徐々に無くしていくんですって!
「本番の舞台には、なんの目印もないからね。」
どの目印をいつはずしていくかは、演出家である宮田さんと舞台監督の澁谷さん
このお二人のさじ加減一つで決まるのです。

んんん、大変です!!! (も)

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