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わが町案内版

開幕!!

「わが町」本日、無事に開幕いたしました!!!
エミリー、Boys&Girlsのオーディションの公募を発表したのがちょうど1年前!
3月のオーディションを経て、6月からワークショップを重ねてきた
若者チームとは、すでに半年以上の付き合いです。
ゴールドシアターの皆さんは10月のワークショップからの参加でした。
メインキャストの皆さんとだって、稽古初日が2010年11月19日でしたから
もう2か月も前のことです。
振り返れば、意外にも長い長い道のりでした。
あんなことやこんなこと、いろいろなことが走馬灯のように脳裏をよぎります。

楽屋もロビーも、改めてお客様を迎える、いい緊張感に包まれて、
いよいよ開場の時間を迎えます。

やれることはやりきった、という自信と、どうしようという不安。
ないまぜな感情に頭がちょっとだけグルグルしながら、
(も)もたくさんのお客様とともに初日の舞台を見守らせていただきました。

本当に暖かいお客様にめぐまれ、稽古で重ねてきた成果を存分に発揮できた
素晴らしい初日でした。
客席のあちこちから聞こえる笑い声、そしてすすり泣き……
(も)もうっかり涙してしまう場面もあり。
出演者、スタッフ、そしてお客様、みんなで一つの大きな想いをを
分かち合うことが出来た、そんな初日が迎えられたと思います。

さあ、あと16ステージ! 日々、全力で邁進するのみ!!! です♪
皆さまのご来場を、本当に本当にお待ちしております!!!

第10回  三分間劇集『癒しの池、天使がさざ波立てるとき』 の序文

 水曜ワイルダー約1000字劇場、プロンプターの水谷です。もう今週が初日! ドキドキしてきますねぇ。

 さて、ワイルダーは演劇をこの世界とそれを超える次元とを結ぶ回路だと考えていたようだ、ということを前回書きました。彼の演劇観は『三戯曲集』の序文(1957)に一番良く出ていますが、もうひとつ、彼の演劇観を知る上で重要なものが、今回、演劇講座でも紹介する「三分間劇」です。これは1925年、彼がオベリン大学の学生だった頃から、大学の文芸誌に投稿していたもので、登場人物が三人、上演時間(必ずしも上演を念頭に置いてないのですが)が三分という枠を自分に課していた時期のものです。ワイルダーはイェール大学進学後も、ローレンスヴィル高校のフランス語教員時代にも、この形式の戯曲を書き続け、1928年に初の戯曲集『癒しの池――天使がさざ波立てるとき』として出版しました。

 この奇妙な戯曲集には16編の三分間劇が収められており、その大半が「死」や「宗教」を扱ったものです。この凝縮された個々の戯曲の内容も読み応えがあるのですが、冒頭に付された序文は注目に価します。

 この序文の中で、ワイルダーは「偉大な宗教的テーマに見合うだけの精神を、それもお堅い教訓に陥ることのない精神を発見したかった」と書いています。彼は宗教を、(外から強制を加える)教訓としてではなく、内発的なものとしてとらえていて、「美」が唯一の説得力を持つものだ、と熱弁をふるってます。そして最後の部分で「宗教の復興は、ほとんどレトリックの問題だ。その作業は困難で、多分不可能だろう。しかしそれで思い起こすのは、神が聖書の中で《鳩のように柔和であるだけでなく、蛇のように賢くあれ》と勧めていることである」としめくくっています。

 ワイルダーは最初の戯曲集で、20世紀という非・宗教的な時代に、あえて宗教的作家を目指すのだと、宣言しているわけです。ワイルダーが28年にこの文章を書いて以来、20世紀がどんな時代だったか、どれほど超・人間中心主義だったか、わたしたちはすでに知っています。

『サン・ルイス・レイの橋』(1927) 初版の表紙

 ワイルダーは明らかにその時代の流れに逆行しています。彼の初の小説『カバラ』や『サン・ルイス・レイの橋』でも、ワイルダーの姿勢は同じです。物語は人間世界のことを描いていますが、すでに見てきたように、こちら側の世界を描いて、向こう側の世界を、読者(観客)に想起させるのが彼の方法です。最終的に彼が内面に創出しようとしていたのは、こちらとむこうを結ぶ関係性でした。『サン・ルイス・レイの橋』の最後の部分は有名で、2001年9月11日のテロで亡くなったイギリス人を追悼する席で、当時のブレア首相もそこを引用しました。「存在するのは生きている者の国と死んでいる者の国だけであり、そこをつなぐ橋が愛なのだ、それこそが唯一生き残るものであり、唯一意味のあるものなのだ」という部分。ここだけ読むと陳腐な感じですが、通して最後にここを読むと、曰く言い難い空気に包まれます。それは『わが町』でも同じです。その空気を創出するのに、実験的な形式は不可欠な要素になっています。

 ジャンルを問わずワイルダーの全作品に見られる形式への執拗な実験は、「蛇のような賢さ」で、非・宗教的な時代に「大いなるもの」を想起させるための方途でもあったのです。

舞台稽古に入りました!

劇場は絶賛舞台稽古中です。
稽古場から劇場へ移動してきて思うことは
……広い!!! 中劇場、広い!!!
ということ。
これまで稽古場で決めてきた距離感を、少しづつ中劇場にあわせて
修正していっています。
衣裳もつけて、照明も入って、毎日、本当に素敵な場面の数々が
出来あがりつつある日々です。

時に笑い、時に涙し、毎日たくさんの想いを持たされて
帰宅の途に着きます。

乞う、ご期待! です!!

第9回  星や月が語ること

 明けましておめでとうございます。水曜ワイルダー約1000字劇場、衣装担当の水谷です。『わが町』初日まで、10日を切りました。楽しみですねぇ。

 さて、暮にはワイルダーの作品に見られる「死」という要素について書きましたが、新年の最初は、死と同様に彼の作品に頻繁に出てくる月や星のことについて考えたいと思います。『わが町』の一幕の後半には、見事な月が登場します。三幕では、きれいな星が夜空を飾ります(と言っても、両方とも目には見えませんが)。どちらの場面でも町の人々は空を見上げます。

 人間は大昔から星空に目をやり、そこにさまざまな物語を読み込み、地上の人生と関連づけてきました。そんな宇宙観がもっとも良く視覚化されているもののひとつがロバート・フラッド(1574-1637)という英国の魔術師、と言うか、錬金術師の『両宇宙誌』という書物にある大宇宙と小宇宙の対応図です。この図では小宇宙たる人間が宇宙の中心に位置し、惑星が小宇宙とその中心を「一」にして同心円上に広がっており、天体と人間世界が密接な関係にあり、対応していることを示しています。そしてこの宇宙を創造し、かつロープで回転させているのが神であることは言うまでもありません。

ロバート・フラッド、『両宇宙誌』より

 わたしたち人間が現実世界よりもっと大きな次元の何かとつながっているのだという感覚は、人間存在の根源的なところから湧き起こってくる「希望」のようなものに近いかもしれません。上の図は近代的な科学や天文学からすればナンセンスなものかもしれませんが、近代科学だって、この世の森羅万象を解明できているわけでもないから、非・科学的と恥じ入ることもないですよね。

 ワイルダーは星の瞬く夜の時間に哲学者の名前をつけて登場人物にし、哲学書や聖書の言葉を語らせたり、惑星にコーラスをさせたり、かなり非・科学的なことを好んでしています。『わが町』も『危機一髪』も「おやすみなさい」という台詞で終わりますが、夜の時間は人間の理性が休息し、その隙に理性とは別の相の知性が働くのだと考えていたのかもしれません。ワイルダーは20世紀としては時代錯誤とも言えるような、少し超自然的、神秘的な考えを若い頃から持ち続けていたようです。

 『わが町』の原型ともなった「MとNの結婚」の草稿が書かれているノートの表紙の裏には「この世界は超自然的な要素が日常生活の中に導入されなければ、ただの幻想に過ぎない。この世界は天空の巨大なドラマに比べれば、幻想に過ぎない。それ故、人は演じることができる」という興味深いメモを残したりしています。

 一見無価値に見える現実世界の些事、笑いと悲惨が渦巻く眼前の風景の向こうには、その一つ一つに意味を与える大きな体系が広がっているのだと、ワイルダーは確信していたのだと思います。そしてその体系とこの世をつなぐ方法こそ、彼にとっての演劇だったのではないでしょうか。

明けました!!

みなさま、明けましておめでとうございます!!!
年末はすっかり更新できずにおり、多方面からツッコミを受けた(も)です。
申し訳ありませんでした!!
さあ、年も明けましたので、心を入れ替えて、更新に努めたいと思います
宜しくお願いいたします!!!

というわけで、本日より年末年始でお休みしていた稽古が再開されました。
同時に劇場では仕込みがスタート♪
さあ、初日まであと9日、もうラストスパーーーーート!という感じです。

稽古場では年始の挨拶もそこそこに、早々に通し稽古が行われました。
しばらくのお休みの後の稽古ですから、なんとなくみなさん、こわごわ始まった稽古でしたが、一度走り出したらそんな数日のブランクは吹っ飛びます。
さすがです。

さて、見るたびに、グッと来るポイントが変わるのが、この芝居「わが町」。
お正月明けだからか、今日は家族の在り方について、深く考えました。
この戯曲が書かれて70年、科学は目覚ましい進歩を遂げ、
時代は目まぐるしく変わっていったように思われていますが、
実は人間は、人の営みは、何一つ変わってないんですね~。

両親がいて、子供たちがいて、それぞれを心配したり喧嘩したり。
小さい時からかわいがってくれてる近所のおじさんやおばさんにも怒られたり。
そうして大きくなって、人を好きになって。

間もなく初日を迎える「わが町」、本当に一人でも多くの方に観ていただきたい!
と胸を張って言える作品に仕上がりつつあります。
新年最初のご観劇は、ぜひ新国立劇場で!!!
お待ちしてます♪

(おまけ)
すっかり更新をさぼっている間に行っていた公開稽古の模様です

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