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2009年 10月

特別メニュー紹介その1 “ランカスタープレート”

「ヘンリー六世」通し公演の日には、劇場のブッフェで、通常メニューに加えて、「ヘンリー六世」のために考案したメニューを各種ご用意しています。

まずは、お昼の部、第一部と第二部の休憩時間にご提供するお食事メニュー、レストラン・マエストロ特製<ランカスタープレート>(1,200円)をご紹介します!

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レストラン・マエストロの料理長・鈴木シェフ自信のワンプレートです。ローストビーフやテリーヌなどのオードブルと、クリームチーズのサンドイッチ、えびのサンドイッチに、プチケーキとフルーツの盛り合わせ。

こちらのお食事は、マエストロからできたてをお届けします。もちろん一品一品、シェフの手作りです。開発チームで試食を重ねましたが、はい、正直言って、ひと品ひと品がおいしい!です。レベル高いです。繊細な味わいのオードブルを少しずつ、いろいろな種類味わえるので、ちょっとしたコース料理並みに楽しめます。

レストラン・マエストロは劇場の3階にありますが、観劇の前後にゆっくり時間をとってお食事をとるのはなかなか難しいものです。マエストロの味を試したことのない方も、このプレートで、シェフの技を味わってみて下さい。ブッフェで気軽にシェフの味を堪能できるチャンスです。

ちなみに、ランカスターというのは、ヘンリー六世一家の家名です。ロイヤルファミリーにあやかって、正統派の味をご堪能下さいませ。

 

ランカスタープレートは、公演の3日前まで予約を受け付けています。

お申し込みのご案内は、こちらです。

「一部から観るか、三部から観るか、それが問題だ~」

三部作一挙上演、通し上演9時間をうたっている「ヘンリー六世」ですが、週末など、完売の日がたくさんありまして、お客様にはご迷惑をおかけしています。

そして「3本全部はとても行けない!」「どれを観たらいいかわからない!」というお声も沢山いただいておりますので…あくまで(な)的ですが、各部の見どころをちょっとお知らせいたします。

翻訳の小田島雄志さんにじっくりお話をうかがった「小田島的POINT」付き各部の見どころ紹介が、発売中の「シアターガイド」にも掲載されていますので、そちらもあわせて、ご覧くださいませ。

さて、「ヘンリー六世」は三部作ですが、もともと1本1本、独立して書かれています。時代設定はつながっていますが、「元来ひとつの物語として構想されていたわけではない」「ひとつ書いたら大当たりしたから、次を書いたのではないか」というのが、小田島説です。

実は、「第二部・第三部がまず書かれ、後から一部が書かれた」というのが長年定説となってきていたのですが、違う説もあり、どの順で書かれたかは確証がないのだそうです。いずれにしても、若きシェイクスピアがこれで一躍有名になって、次、次、と書いたというのは確かなようです。そうしてできた作品が、劇団のレパートリーシステムの伝統の中で上演されて、替わる替る上演されてきたのでしょうね。

稽古を見てきた(な)も、「ヘンリー六世」三部作は、必ずしも、通しで見なくても大丈夫だと思います。各部にさまざまな見どころがあるので、まずは、どこか一部を見てみてください!それでは、各部のおすすめポイントです。

 

まず「第一部 百年戦争」…ヘンリー六世はイギリス王ですが、百年戦争はイギリス、フランス間の戦争です。舞台もイギリスだったり、フランスだったり。いきなり大スケールです。

第一部でぐっとくるのは、何といっても、イギリス王室を取り巻く諸侯たちの熱く静かなバトル…長いキャリアを誇る俳優さんたちがにらみ合い、いきなり「ヘンリー六世」カンパニーの厚さを見せつけます。こんな演劇が見たかった!と見ているこちらの胸も静かに熱く燃えてしまいます。(対するフランスチームのラテン系演技も…素敵です)

印象的な人物は、やはりジャンヌ・ダルク。第一部のストーリーをぐいぐい引っ張ります。ジャンヌとトールボットの殺陣のシーンは、手に汗握ります。今、巷で「殺陣」を習うのが流行っているようですが、興味のある人にはたまらないシーンだと思います。この二人の一騎打ちのキレの良さは、絶品です!

 

「第二部 敗北と混乱」では、イギリス王室周辺の権力争いが激化し、睨まれた貴族はどんどん粛清されてゆきます。陰謀か天誅か…。ヘンリーも、頼りにしていた叔父を亡くし、珍しく激情を見せます。

他の部分にはない、第二部の大きな特徴は、王妃マーガレットとサフォークとの道ならぬ愛…というまでの関係があったかどうかは戯曲では明言されていませんが、とにかく強く惹かれあい、結びつき、固い信頼で結ばれている二人が引き裂かれていくシーン、この最後の方のマーガレットのせりふはもう、男なら一度は言われてみたい、女なら一度は言ってみたい、ものすごいせりふです。シェイクスピア、昼ドラも書けそうです!

第二部の終盤は一転して、一気に薔薇戦争へと突き進みます。

 

そして「第三部 薔薇戦争」。これはもう、戦闘に次ぐ戦闘。次々と山場が続きます。裏切りがあり、殺し合いがあり…そんな中で、ヘンリーが心境を独白し、「父親を殺した息子」「息子を殺した父親」が登場するシーンは、これはもう、オペラならブラボーの声がやまない、圧巻の名場面です。

それに対する、ヨーク方のすさまじいエネルギー…。ヨーク自身はものすごい殺され方をしていきますが、息子たちはそれをバネに、一挙に反撃に出ます。後の「リチャード三世」につながる展開です。

第一部の殺陣と違い、第三部の戦場はダイナミックです。どれほどのスペクタクルが劇場を包み込むか、期待して下さい! そして第三部を通じて胸に迫る、親子の情愛…ハンカチ必携です。

 

今、チケットも、公演期間前半の第一部が取りにくい状況になっていますが、まず圧巻の第三部を見て一部・二部に戻るもよし、定説に則って、二部・三部のドラマを見てから一部を楽しんでもよし、それぞれの見方で発見があると思います。「ヘンリー六世」は至る所、見どころ続きです。迷っている方、まずは早めの日程で見てみてはいかがでしょうか?(な)

書籍紹介 ⑦

手塚治虫 作 『七色いんこ』(1981年から82年 週刊「少年チャンピオン」連載)

 マンガの神様、手塚治虫が残した、どセンター演劇漫画。一話完結で毎回芝居のタイトルが付けられ、その作品にちなんだストーリーが展開。代役専門の天才俳優で実はドロボーの七色いんこと彼を追う女刑事、千里万里子の活躍を描く。七色いんこの愛犬にして相棒の玉サブローの人気も高い。シェイクスピアの作品では『ハムレット』『じゃじゃ馬ならし』『ベニスの商人』『オセロ』(作品名は漫画に依拠)の4作品がピックアップ(『オンディーヌ』の回にリア王の台詞の朗読あり)されている。

 基本は一話完結だが全体を貫くストーリーも存在し、ハムレットに重ねあわされる七色いんこの物語は波乱万丈、ラストシーンは大いなる感動を呼び起こす。演劇青年でもあった手塚の隠れた名作である。

 単行本は表紙が都内の劇場の客席が背景になっており、各話の冒頭には上演の舞台写真が掲載されていた。

書籍紹介 ⑥

河合祥一郎 著 『謎ときシェイクスピア』(2008年 新潮選書)

 まず驚くのは、目次の2ページうしろ、項をめくると目に飛び込んでくる“登場人物”表。その一行目にはこう書かれている。

ウィリアム・シェイクスピア・・・謎の男 通称ウィル

まさに推理小説のノリである。そう、つまりこの本は全体を推理小説に見立てたシェイクスピア探しの本なのだ。第一部『シェイクスピアとは誰か』が問題編。第二部『ストラトフォードの謎の男』が解決編、という具合に。つまり根強く残る、シェイクスピア別人説に真っ向から切り込み、そして著者ならではの大胆で示唆に富んだ結論へと読者を導くのだ。推理小説の常道として、解説ではネタばれ禁止なので結論は伏せるが、ひとたび読みだすと、寝食を忘れて没頭すること間違いなしである。

 第三部では、実践編としてシェイクスピアへの痛烈な批判であろう、ロバート・グリーンの有名なことば“成り上がり者のカラス”の正体を探る。『ヘンリー六世』第三部第一幕第四場のヨーク公の台詞“女の皮に包まれた虎の心”のパロディ、“虎の心を役者の皮で包んで”とあることから、シェイクスピアが対象とされる斯界への常識に果敢に挑むその姿勢は文句なしにカッコいい。

ストラットフォード、ウォリック城

スワン劇場は改装中

スワン劇場は改装中

シェイクスピアは1564年にストラットフォードに生まれ、1616年にやはりストラットフォードでなくなった。この生没年は、「ヒトゴロシ」、「イロイロ」と覚えるようにと、むかしむかし小田島雄志先生に教わった。
テュークスベリーからタクシーで約二時間、二十五年ぶりに立ち寄ったこの町、云わずと知れたシェイクスピア専門劇団、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの本拠地でもある。
現在メインシアターのスワン劇場は改装中だが、その代替劇場で、2008年に「ヘンリー六世」三部作を上演したコートヤード・シアターで、「冬物語」を観劇。そこで、今回、シェイクスピア大学の監修をお願いしている河合祥一郎さんにばったり。
この機会にと、ストラットフォードからバスで40分程度のところにある、「ヘンリー6世」でも大活躍の「キングメーカー」ウォリック伯爵を生んだ名家ネヴィル家の居城、ウォリック城まで足をのばしてみた。
シェイクスピアが自作中でも、格別な思いを披歴したとされる、故郷ウォリックシャーの、ここは中心地の一つである。アトラクションや、展示等、サーヴィス精神にあふれる観光スポットだが、ネヴィル家のステイタスの一端に触れた思い。
何しろ「キングメーカー」といわれただけあって、王位の行方を思うままに差配したらしい大プロデューサー、ウォリック。そんな彼も、「ヘンリー六世」第三部、死の場面では恐ろしく孤独だった。自らは演出者として、夢を作ることが生きがいの人生だったらしい永遠のナンバー2。彼の生と死は、僕たちライブアートの仕掛け人にとって、他人事とは思えない感興がある。
10月11日、稽古場では一、二、三部、ノンストップの通し稽古を敢行した。全編見渡してみると、ストーリーの質というか、目の付けどころがよくわかり、俳優諸氏の表情にもメリハリがついてくる。
ホッと一息つく間もなく、スタッフはいよいよ劇場の仕込みにかかる。キャストは稽古場最後の通し稽古クール。そしていよいよ16日からは俳優諸君も劇場入り。ここまではともかく「順調」にきている…。

ウォリック城

ウォリック城

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