はじめに


  • はじめに
  • 翻訳家:小田島 雄志からのメッセージ
  • 演出家:鵜山 仁からのメッセージ

壮大なるスケールの人間ドラマ!

2009年、日本の演劇史を更新する舞台が新国立劇場に誕生する!

「ヘンリー六世」三部作堂々の一挙上演。

シェイクスピアの実質的デビュー作となった20代の作品で、彼の全作品中、唯一、三部に渡る壮大な歴史劇です。この作品により、シェイクスピアは一躍、人気作家へと駆け上りました。
時は15世紀、英仏間の「百年戦争」から、イギリス国内の王位継承問題に端を発した「薔薇戦争」まで、西ヨーロッパの激動を背景に、生後9ヵ月で王位につき、生涯を有力諸侯や権力闘争に翻弄されたヘンリー六世と、彼を巡る権力と愛憎を生き抜いた人間たちの「戦い」のドラマです。
ここにはイギリスとフランス、一般庶民と王侯貴族、親と子、男と女、赤いバラと白いバラ、実に様々な衝突が、コントラストが満ちあふれています。
ヘンリー六世役には大型ミュージカルで大活躍中の浦井健治が初のシェイクスピア劇に挑むほか、ジャンルを超えた人気、実力を兼ね備えた総勢37名の

キャストが集結、200役以上の登場人物を演じ分けます。
イギリスのみならず世界的にも「ヘンリー六世」の三部作一挙上演の機会は少なく、日本では1981年以来、新制作での上演になります。
三部構成とは言え、そのいずれも、完結した作品としてお楽しみいただけるよう、各部日替わりで上演。週末には三部作を通し公演として1日で一挙上演します。「過去から未来への高遠な広がりと、いつに変わらない人間の卑小さを、舞台上に写し取りたい。」芸術監督・演出の鵜山仁が長年温めてきた大型企画がいよいよ始動。
この秋の話題作、空前絶後、壮大なスケールで新国立劇場の舞台に登場する「ヘンリー六世」三部作、是非お見逃しなく。戦いは、今も…。

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「ヘンリー六世・三部作」一挙上演によせて

翻訳家:小田島 雄志

劇詩人シェイクスピアの実質的デビュー作『ヘンリー六世・三部作』を一挙に観ることができるのは、大きな喜びである。20代半ばを超えたばかりの彼が、すでに歴史の巨大な流れとその中で生きる個人個人を、総括的にバランスよく見る目をもっていたことは、驚くべきほどである。そのため、国家と国家、戦争と

平和、国王と庶民、大人と若者、男と女、その他さまざまなレベルでの結束と反発、愛と憎の姿を、立体的に映し出すことができたのである。そこから現代に生きるわれわれは、自分の姿を見なおすことができるだろう。

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あちこちに「ヘンリー六世」

演出家:鵜山 仁

「薔薇戦争」はどこにでもある。これが『ヘンリー六世・三部作』を前にした今の僕の、率直な印象です。通勤電車のほんの些細なイザコザにも、学校や会社の、どうにもならないような、ケチなこじれた人間関係にも、或いは家族の積年の歪み、ねじれにも、日常のひとコマひとコマの、どこをとっても、「源平の戦い」に、「第二次世界大戦」に、遠く「トロイ戦争」にも通じる「衝突」があふれている。そんな「衝突」の原因を極め、葛藤を除去することは簡単なことではありません。いやむしろぶつかり合い、きしみあいをとり除いてしまうと、およそ僕たちが生きるということが成り立たないのではないかという気がしてくる。人間の

歴史というのは、つまりは戦いの歴史。戦いこそが人間のドラマを生み出してきたのではないかと思えるのです。 過去から未来への高遠な広がりと、いつに変わらぬ人間の卑小さを一網打尽、どうやって舞台の上に写し取るか、それこそが何といっても、この大きな物語、大型企画の楽しみです。工夫を凝らし、新国立劇場のエネルギーを結集して、とにもかくにも面白い芝居をぶち上げたいと手ぐすね引いています。
観客の皆さんにも、ふるってこの奇特な企画にご参集いただきたいと思います。
2009/2010の演劇シーズン、大いに期待しています。

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