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書籍紹介 ⑥

河合祥一郎 著 『謎ときシェイクスピア』(2008年 新潮選書)

 まず驚くのは、目次の2ページうしろ、項をめくると目に飛び込んでくる“登場人物”表。その一行目にはこう書かれている。

ウィリアム・シェイクスピア・・・謎の男 通称ウィル

まさに推理小説のノリである。そう、つまりこの本は全体を推理小説に見立てたシェイクスピア探しの本なのだ。第一部『シェイクスピアとは誰か』が問題編。第二部『ストラトフォードの謎の男』が解決編、という具合に。つまり根強く残る、シェイクスピア別人説に真っ向から切り込み、そして著者ならではの大胆で示唆に富んだ結論へと読者を導くのだ。推理小説の常道として、解説ではネタばれ禁止なので結論は伏せるが、ひとたび読みだすと、寝食を忘れて没頭すること間違いなしである。

 第三部では、実践編としてシェイクスピアへの痛烈な批判であろう、ロバート・グリーンの有名なことば“成り上がり者のカラス”の正体を探る。『ヘンリー六世』第三部第一幕第四場のヨーク公の台詞“女の皮に包まれた虎の心”のパロディ、“虎の心を役者の皮で包んで”とあることから、シェイクスピアが対象とされる斯界への常識に果敢に挑むその姿勢は文句なしにカッコいい。

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