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2009年 10月 21日

「一部から観るか、三部から観るか、それが問題だ~」

三部作一挙上演、通し上演9時間をうたっている「ヘンリー六世」ですが、週末など、完売の日がたくさんありまして、お客様にはご迷惑をおかけしています。

そして「3本全部はとても行けない!」「どれを観たらいいかわからない!」というお声も沢山いただいておりますので…あくまで(な)的ですが、各部の見どころをちょっとお知らせいたします。

翻訳の小田島雄志さんにじっくりお話をうかがった「小田島的POINT」付き各部の見どころ紹介が、発売中の「シアターガイド」にも掲載されていますので、そちらもあわせて、ご覧くださいませ。

さて、「ヘンリー六世」は三部作ですが、もともと1本1本、独立して書かれています。時代設定はつながっていますが、「元来ひとつの物語として構想されていたわけではない」「ひとつ書いたら大当たりしたから、次を書いたのではないか」というのが、小田島説です。

実は、「第二部・第三部がまず書かれ、後から一部が書かれた」というのが長年定説となってきていたのですが、違う説もあり、どの順で書かれたかは確証がないのだそうです。いずれにしても、若きシェイクスピアがこれで一躍有名になって、次、次、と書いたというのは確かなようです。そうしてできた作品が、劇団のレパートリーシステムの伝統の中で上演されて、替わる替る上演されてきたのでしょうね。

稽古を見てきた(な)も、「ヘンリー六世」三部作は、必ずしも、通しで見なくても大丈夫だと思います。各部にさまざまな見どころがあるので、まずは、どこか一部を見てみてください!それでは、各部のおすすめポイントです。

 

まず「第一部 百年戦争」…ヘンリー六世はイギリス王ですが、百年戦争はイギリス、フランス間の戦争です。舞台もイギリスだったり、フランスだったり。いきなり大スケールです。

第一部でぐっとくるのは、何といっても、イギリス王室を取り巻く諸侯たちの熱く静かなバトル…長いキャリアを誇る俳優さんたちがにらみ合い、いきなり「ヘンリー六世」カンパニーの厚さを見せつけます。こんな演劇が見たかった!と見ているこちらの胸も静かに熱く燃えてしまいます。(対するフランスチームのラテン系演技も…素敵です)

印象的な人物は、やはりジャンヌ・ダルク。第一部のストーリーをぐいぐい引っ張ります。ジャンヌとトールボットの殺陣のシーンは、手に汗握ります。今、巷で「殺陣」を習うのが流行っているようですが、興味のある人にはたまらないシーンだと思います。この二人の一騎打ちのキレの良さは、絶品です!

 

「第二部 敗北と混乱」では、イギリス王室周辺の権力争いが激化し、睨まれた貴族はどんどん粛清されてゆきます。陰謀か天誅か…。ヘンリーも、頼りにしていた叔父を亡くし、珍しく激情を見せます。

他の部分にはない、第二部の大きな特徴は、王妃マーガレットとサフォークとの道ならぬ愛…というまでの関係があったかどうかは戯曲では明言されていませんが、とにかく強く惹かれあい、結びつき、固い信頼で結ばれている二人が引き裂かれていくシーン、この最後の方のマーガレットのせりふはもう、男なら一度は言われてみたい、女なら一度は言ってみたい、ものすごいせりふです。シェイクスピア、昼ドラも書けそうです!

第二部の終盤は一転して、一気に薔薇戦争へと突き進みます。

 

そして「第三部 薔薇戦争」。これはもう、戦闘に次ぐ戦闘。次々と山場が続きます。裏切りがあり、殺し合いがあり…そんな中で、ヘンリーが心境を独白し、「父親を殺した息子」「息子を殺した父親」が登場するシーンは、これはもう、オペラならブラボーの声がやまない、圧巻の名場面です。

それに対する、ヨーク方のすさまじいエネルギー…。ヨーク自身はものすごい殺され方をしていきますが、息子たちはそれをバネに、一挙に反撃に出ます。後の「リチャード三世」につながる展開です。

第一部の殺陣と違い、第三部の戦場はダイナミックです。どれほどのスペクタクルが劇場を包み込むか、期待して下さい! そして第三部を通じて胸に迫る、親子の情愛…ハンカチ必携です。

 

今、チケットも、公演期間前半の第一部が取りにくい状況になっていますが、まず圧巻の第三部を見て一部・二部に戻るもよし、定説に則って、二部・三部のドラマを見てから一部を楽しんでもよし、それぞれの見方で発見があると思います。「ヘンリー六世」は至る所、見どころ続きです。迷っている方、まずは早めの日程で見てみてはいかがでしょうか?(な)

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