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書籍紹介 ④

安西徹雄 著 『仕事場のシェイクスピア』(1997年 ちくま学芸文庫)

 数々のシェイクスピアを演出した著者がシェイクスピアの生涯に迫った迫真の書。シェイクスピア本人の記録や公文書は極めて少ないが、同時代人の手紙や証言から彼の生い立ちからロンドンでの演劇人としての日常までドキュメントタッチで綴る。もちろん二次的資料や多分に著者の推測も交じるが、元来英文学者である氏が大英博物館で、種々の文献を具に調査した結果に裏打ちされてもいるので説得力は十分。

 特に劇作家が所属した劇団が単なる職業的集団ではなく、“強い連帯感によって結ばれた、きわめて人間的な共同体”であったと推論する件は感動的。当時の俳優が半年に150ステージ、しかも日替わりで30作品、うち月二回は新作を上演していたというだけでも驚異的な記録である。

 新潮社『劇場人シェイクスピア』 改題

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