2013年10月24日
新国立劇場マンスリー・プロジェクト参加者募集開始!
新国立劇場では「マンスリー・プロジェクト」と題して、演劇講座やトークセッション、ワークショップ、リーディング公演などのイベントを、毎月実施しています。
このたび、11月22日(金)と24日(日)に、ジェローム・キルティ作「ディア・ライアー」より、その一部をリーディング形式で上演します。
本作は、バーナード・ショー作「ピグマリオン」が初演された際に主役イライザを演じた女優パトリック・キャンベルと、バーナード・ショーとの40年に渡る往復書簡を基に描かれた作品。
「ピグマリオン」にも出演する春風ひとみ、水野龍司の2人が演じます。
参加者募集中です!
<開催概要>
リーディング公演 ジェローム・キルティ作「ディア・ライアー」より
日時:11月22日(金)19:00、24日(日)18:00
会場:新国立劇場 中劇場
演出:宮田慶子
出演:春風ひとみ、水野龍司
<参加方法>
入場は無料です。ただし事前申込が必要です。
応募期間:11月11日(月)まで
お申込みはこちらから
※1プロジェクトにつきお一人様1回の応募とさせていただきます。
※先着順に受け付けますので、定員に達した場合は締切日より前に応募を締め切ります。
マンスリープロジェクトの詳細情報はこちらから
お問い合わせ:新国立劇場 情報センター 電話03-5351-3011(代)
2013年10月22日
ロンドン紀行3日目 その3
天気のよいなか、散歩もかねて、
オススメの場所へ。
本屋さん『サミュエルフレンチ』
ここには沢山の演劇に関する本が。入ってみると、こじんまりとした可愛い店内。雰囲気は小さな図書館。机や椅子もあり、役者さんらしき数名が本とノートを机いっぱいに広げて必死に勉強していました。
せっかく来たからには何か購入しようかと思い、
棚をAからZまでグルッと見てまわる。
選んだのは、もちろん「ピグマリオン」、それとハロルド・ピンターの「温室」(昨年出演した新国立劇場の作品)。
え?読めやしないのになぜ買った?ですか?
そうです、全く読めません。
しかし、日本語に訳された台本が手元にあるので、それとこの原文を照らし合わせてみることが出来る。何か行きづまったときなどにこれが効果的なのです。
日本語になっていると、少しまわりくどかったり、ニュアンスが微妙に違かったりで、分かりずらかった場所が、案外原文を見ると、すっと解決する事があるのです。ああ、こんなに直接的に言っているのか、とか、ここの文節は繋がっているのか、とか。僕にとってのお助けツールとして。ですね。
まぁ半分は自分へのお土産となっている気もしますが。
気づけばお芝居の開演時間が迫ってきていたので、劇場へ向かう。
New London Theatreへ。
演目は「WAR HORSE」
映画版はスピルバーグが映画化している「戦火の馬」ですね。
いや、すごい。
なにがすごいって。馬の表現が。
舞台ではさすがに本物の馬は出せない
この舞台では2人で大きな馬のギミックを操って表現している。(ぜひネットでwar horseと検索してみてください、画像が出てきますので。)
その機構はもちろんすごいのですが、それよりなにより、
表現力
本当にそこに命ある馬が存在しているのです。
動き・呼吸・鼓動
モノであるはずのものが、命ある生物になっているのです。
シンプルなセットがさらに客のイメージを広げます。
演劇はいいですね、本当に。無限の可能性を感じます。
あっという間の時間でした。
劇場を出ると、外は真っ暗。さすがに11時くらいになると、街には酔っぱらったおじさま(昼間は英国紳士)達が、大声で大ハシャギ。
うう、恐怖です。いきなり絡まれますし。身体に彫られたものがチラチラ見えるし、
「HEY!!BOY!!」
と何人に声を掛けられたか・・多すぎて覚えていません。
肌寒く、暗い道をササッと歩き、電車で郊外へと、帰途につく。
その手には缶ビール。
いい一日でした。
橋本淳
2013年10月18日
ロンドン紀行 3日目 その2
グローブ座を後にして、テムズ川沿い西へと歩く。
天気もよくて風もあり、気持ちのよい気候。散歩にはもってこいですね。
そして、次の目的地『テート・モダン』(近代美術館)に到着。
デデーン!!
と、存在感のある色味と大きさ。遠くからでもはっきりと分かりました。
中に入ると、広い広い。
内装も素敵です。
(またそんなものを撮影・・)
絵画やアート、沢山並んでいます。
ほとんど無料で見られるようです。(寄付制)
一角では、ギャラリーもあり、そこは有料でした。
(あとで分かったことなのですが。実は僕は気づかずに、順路の出口のほうから入ってしまったらしく、払わずに見れてしまいました・・・。ごめんなさい。本当に気がつかなかったのです。どうか貧乏な旅人ゆえ許してください。)
居心地もよくてずっと居てしまいそうなのですが、
次の予定のために、出発。
さらにテムズ川沿いを西へ。
川辺でお茶をしたり、のんびしている方が多いですね。
続いて見えてきますは、『ナショナル・シアター』ロンドンの国立劇場。
この手前にある赤い建造物がなんなのかは、すみません、全く分かりません。
なかに入るとカフェ等があったりと、オープンな劇場という印象。
この後は、新国立劇場のスタッフさんに、「行った方がいい」
とお勧めされた場所へ.。。。
橋本淳
2013年10月17日
翻訳者雑感その1 ~G.B.ショーとの出会い~
『ピグマリオン』の翻訳を担当した小田島恒志です。これを書いている今、新国立劇場の隣の稽古場で稽古していた『エドワード二世』が一足先に幕を開けました。翻訳は河合祥一郎さん、僕の幼稚園の1年先輩です。昨年『るつぼ』の翻訳を担当したのは水谷八也さん、僕の同僚にして英米演劇翻訳界の先輩です。この身近な二人が専門家として実に知的で面白いブログを連載執筆されていました。だからあなたも ― と、制作さんに言われて、「はい、わかりました、書きます」と言えないのはどうしてでしょう? それは、僕がへそ曲がりだからです。そして、へそ曲がりだからショーを翻訳したのです。説明しましょう。(あ、結局書いている・・・)
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ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw 1856-1950)という作家のことを初めて知ったのは大学3年生の時、まさに『ピグマリオン』を読む授業でのことだった。もっとも、ミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』は小学校の頃から何度かテレビで見ていたけれど、ああ、オードリー・ヘップバーンきれいだな、とか、う~ん、どれもみな素晴らしい曲だな、とか思いながら、そのシンデレラストーリーにうっとりするばかりで、作家のことなどまったく意識していなかった。ついでに言っておくと、教室でよく使う小ネタに『ローマの休日』と「ローマ字」の共通点は? というのがある。答え ― ヘップバーン。このHepburn という名前を日本人は目で読んで「ヘップバーン」とし、耳で聞いて「ヘボン」だと考えた。そう、ローマ字(と明治学院大学)を創設したヘボンさんはヘップバーンさんでもあるわけだ。おっと、頭がすっかりヒギンズ・モードになっていたので、ついつい言葉の音にこだわってしまった。失礼。
さて、大学3年生の時、現在代々木ゼミナールの人気講師・佐藤慎二や写真家・吉野正起らとともに飲酒の合間に授業、もとい、授業の合間に飲酒、いや、とにかく教室になんとなく顔を出すのんべんだらりとした毎日だったが、ショーのことを知った時には自分の中で軽い衝撃が走った。『ピグマリオン』を読む前の話である。花売り娘の発音を矯正する音声学者の話、という設定だが、作者ショー自身、言葉の音とスペルにこだわった、という紹介があった。その例として聞いた話が強烈だったのだ。「魚」fish (フィッシュ)という単語がある。「f」は「フ」、「i」は「イ」、「sh」は「シュ」と読むからフィッシュ。これは誰も疑問に思わない。じゃあどうして、「フ」なら「f」、「イ」なら「i」、「シュ」なら「sh」と決まっていないのか。例えば、「笑う」laugh(ラフ)の「gh」は「フ」、「女性たち」women(ウィミン)の「o」は「イ」、「駅」station (ステイション)の「ti」は「シュ」と発音するのだから、ghoti と書いて「フィッシュ」と発音してもいいではないか ― とショーが言っている、と言うのだ。
これを聞いた第一印象は ― なんてへそ曲がりなことを言う人だろう ― だが、へそ曲がりな僕にはツボだった。そして、いよいよ『ピグマリオン』を読んでみると ― あれ? 『マイ・フェア・レディ』の「うっとり感」がない。え? やるなぁイライザ、そうきたか! いい意味で裏切られた。それまで文学に対しナイーヴだった僕は、男と女の物語はロマンティックなハッピーエンドで終わる(か悲痛な悲劇で終わる)ものだと思っていたので、そうなることを拒むようなこの展開は、やはり作者がへそ曲がりだからなのだろうと思われた。
さらに、授業では戯曲だけでなく序文と後書きも読んだのだが、この後書き(のへそ曲がりぶり)が秀逸だった。初演時の演じ方のせいで、観客にロマンティックなハッピーエンドだという印象を与えたことに対する反論として作者が書き足した「後日物語」だという。
物語の続きは、わざわざ芝居にしてお見せするまでもないだろう。それどころか、我々の想像力が怠惰にも、ロマンスという店主が必ずしもあらゆる物語にフィットするわけではない「ハッピーエンド」仕立ての服ばかりを取り揃えている古着屋の安い吊るしに依存して、枯渇しているのでなければ、語る必要すらないだろう・・・
なんだこのへそ曲がりな文章は・・・! おかげでますます惹かれていった。
その後、文学を学び、ショーのこともいろいろわかって来ると、少々(←ごめんなさい、洒落のつもり。しょうもない。)見方が変わってきた。それまでの19世紀の演劇が、音楽とスペクタクルで盛り上げてロマンティックなハッピーエンドで観客をうっとりさせるメロドラマ(メロディドラマ)が主流だったのに対し、演劇で現実を、現実のあり方を、現実社会の問題を観客に突きつけるという近代リアリズム演劇の始祖がイプセンであり、その姿勢に倣ってイギリスでそれを始めたのがショーだと知った。確かに主流に逆らえばへそ曲がりに見えるだろう。だが、逆に「うそ」が主流の中で「ほんと」を叫ぶのはどうなのだろう。王様は裸だ、と声をあげるのは・・・そうか、へそ曲がりというのは正直者のことなんだ。うん、納得。
と、勝手に自分の性格を是認するような結論に達した青春時代。めぐりめぐって30年後、『ピグマリオン』上演のための翻訳の機会を与えられた。おお、なんとロマンティックな展開だ、嬉しい、ハッピー。あれ? 本当はロマンティシストだということを露呈してしまったか。だが、いざ翻訳作業に取り掛かると、訳しにくいという厳しい現実を突きつけられ、リアリストに戻らざるを得なくなった。トホホ。
2013年10月11日
ロンドン紀行 3日目 その1
本日も目覚めが良く5時に起床。
せっかく早く起きた事だし洗濯を。
洗濯機も乾燥機もあるなんてなんて恵まれているのだろう・・ありがとうございますSさん(アパートの持ち主)
表記が分からずとりあえずダイアルを回してみる。
グワングワンとケタタマしい音をたてながら回り出す。なんとか動いて良かった・・。
ここからがアナログとデジタルのバトル。
1時間以上回りっぱなしで止まる気配のない洗濯機。
電源をオフにしても扉のロックが空かない・・・
なんてことだ、替えのパンツ達が中で回っているのに、助けを求めているのに、無力な僕は窓から覗くことしか出来ないのだ・・。かれこれ数十分戦っていたであろう。もうパンツを買いに行こうと諦めかけたその時、灯台下暗し、小さい赤いポッチが。
ん?(押す)
カチッ(空く)
すぐ目の前にあったのです。すぐそこにあったのです。ボタン。
(このあと乾燥機でも似たような奮闘記があるのですが割愛します・・・)
ふぅ・・・。
気を取り直して3日目。
とても気持ちのよい快晴です。
今日はロンドンの南側の有名スポットをまわります。
まずはおなじみTKTSにて、夜観る芝居の当日券を購入。
そして電車でテムズ川を渡り、グローブ座へ。
シェイクスピアが活躍したエリザベス朝時代の劇場をそのまま持ってきたような劇場です。
外観もさることながら、中も素敵です。
ここでお芝居を観る時間は、なかったので中を回る見学ツアーに参加。
ガイドさんの早口な英語には全くついていけなかったので、勝手にウロチョロしていると(ホントはダメですよ)、ステージでこれから本番を迎える役者さんと演出家さんがリハーサルをしている。
さすがに写真は自粛しました、なにせ緊張感がヒシヒシピリッと伝わってきましたし。その横では、陽気そうな男優さんが声を出しながらストレッチしている。マイペースな人はどこの国にでもいることがよく分かりました。(いい意味ですよ)。
今度来る時は、シェイクスピアをグローブ座で観る事を誓いながら、
その場をあとに。
橋本 淳