2013年8月
2013年8月30日
9月1日(日)からチケット前売り開始!
日本演劇界、この秋の目玉作品の一つとして注目を浴びる「ピグマリオン」ですが、いよいよ9月1日(日)10:00よりチケットの販売が始まります。各プレイガイドの他、もちろん以下の新国立劇場ボックスオフィスでもチケットをお取り扱いいたします。
【窓口】 劇場1階メインエントランス (午前10:00~午後7:00 年中無休)
【電話】 03-5352-9999 (午前10:00~午後6:00 年中無休)
窓口、電話とも、係りの者がお客様にお席の場所のご希望を伺ったり、対象となる割引の有無をお聞きしたりしながら、チケットを手配いたします。そのため、ご不明な点があればその場で確認しつつ、安心してチケットをお求めいただくことができます。
また、発売初日で電話がつながりにくい場合などは、新国立劇場Webボックスオフィスもご利用ください。PC、スマホからのお申し込みですと、お座席の選択も可能、「ピグマリオン」の座席表はこちら(PDF)で確認できます。手数料等については、お申し込みページをご確認ください。
いつものご案内で恐縮ですが「良い席はお早めに」。皆様からのお申し込み・ご来場を、心よりお待ちしております。
2013年8月28日
ピグマリオンを語る- 宮田慶子
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の原作戯曲としても知られる、
バーナード・ショーの「ピグマリオン」。下町娘のサクセスストーリーを軸にした
ミュージカル版では描かれなかった、シニカルな恋愛観、人間関係の機微は、
今こそ時代を超え、国境を越え、観る者の共感を誘うだろう。若手キャストで挑む、
宮田版「ピグマリオン」の狙いも、まさにそこにある。
「幸せって何?」
自分で考え、自分の心に
素直に生きるイライザ
―宮田さんが「ピグマリオン」に関心を持つようになったのは、一九九八年に演出された「ディア・ライアー」(ジェローム・キルティ作)以来のことだそうですね。
宮田◆そうなんです。「ディア・ライアー」は、私の新国立劇場での最初の仕事で、バーナード・ショーと「ピグマリオン」初演の主演女優、パトリック・キャンベルとの往復書簡をもとにした作品です。そこでは舞台上のキャンベルに一目惚れしたショーが、彼女のために新作を書き下ろすという「ピグマリオン」誕生の経緯も描かれているんですが、それがとても面白くて。すでに四十歳を超え、大女優と呼ばれる彼女に、ショーはわざわざ十代の小娘の役を書く。それは彼女への純粋な憧れ、恋心でもあるけれど、同時に「やれるでしょ?」っていうような挑戦的なひねくれた態度の表れでもあるんですよね。そんな二人の不思議な関係から生まれた戯曲、ということで一気に興味が湧いてきたんです。
―今回、その「ピグマリオン」を、海外戯曲を通して日本の演劇を振り返る[JAPAN MEETS…―現代劇の系譜をひもとく―]シリーズで取りあげようと思われたのはなぜですか。
宮田◆ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の原作として、多くの人が題名は知っている。でも、ほとんどの人は、内容までは把握していないでしょう。そういう作品こそ、[JAPAN MEETS…]でちゃんと取りあげるべきだと思いました。また、このシリーズの第一弾でイプセンの「ヘッダ・ガーブレル」を演出した私としては、イプセンの信奉者だったバーナード・ショーが、その精神をどう引き継いでいるかということにも興味があったんです。バーナード・ショーの作品は難しいものが多いんですが、「ピグマリオン」なら、多くのお客様に喜んでいただけるエンターテインメント性もありますし、同時にショーならではの皮肉も楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。
―実際に読んでみると、結末も含め、「マイ・フェア・レディ」とはずいぶん違う内容に驚かされます。
宮田◆「マイ・フェア・レディ」は直球のサクセスストーリーですからね。共通しているのは、言葉を矯正するという設定くらいかもしれません。主人公のイライザにしても、「ピグマリオン」では、ミュージカル版よりもっと自分でものを考え、自分の心に素直な生き方を選択していく。綺麗な服を着たいとか、レディになりたいとか、そんな単純な動機ではなく、「幸せって何?」ってことを考えようとした女性として書かれていると思います。
―彼女に限らず「ヘッダ・ガーブレル」、「朱雀家の滅亡」、「るつぼ」と、宮田さんの手がける作品に登場する女性はいずれも、複雑な生理、心理を秘めていて、魅力的です。
宮田◆やっぱりそこは、演出家として作品を選ぶ時の、大きな手がかりの一つにはなっていますね。単なる良妻賢母だとか、ステレオタイプの女性像にはあまり興味が湧かない。その裏にある本音や本能を捉えようとしている本に共感します。その点「ピグマリオン」は、イライザだけでなく、ヒギンズ教授のお母さん、恋人のフレディのお母さんのあり方も、女性の生き方のモデルケースとして配置されていて「うまいな」と思わせるんですよね。また、そのことによって、ヒギンズ教授のマザコン的な実像も見えてくるんです。当時のイギリスの上流婦人としては完璧なお母さんがいて、その母親と肩を並べるような理想の女性を作ろうとしたんだけどうまくいかない。言ってみればフィギュア作ってるオタクな男の子ですよね。でも、イライザは人形じゃないから、血の通った人間として扱わないと、裏切られちゃう(笑)。なんだか現代の恋愛事情と照らし合わせて、いろいろ考えさせられるところも出てきそうです。
―石原さとみさんのイライザ、平岳大さんのヒギンズ教授という顔合わせも新鮮ですから、その恋愛模様、駆け引きもより身近に感じられるかもしれません。
宮田◆初演のパトリック・キャンベルが四十代でしたから、それと比べれば実年齢に近いですね。石原さとみさんはもちろん、平さんのヒギンズや友人のピッカリングも結婚の対象になりうる年代です。初演の時代には、大人が演じるからこその諧謔性も狙えたと思いますが、今なら周囲の女性も含め、リアルなキャスティングにした方が、伝わりやすいんじゃないかと考えました。
言葉と環境、学習をめぐる関係
予定調和では終わらない物語
―言葉やその話し方とアイデンティティーとの強い結びつきが、この戯曲の前提にはあります。階級が曖昧な現在の日本においても、それは共有されるでしょうか。
宮田◆確かに民主主義の世の中ですから、自分とは違った階級の言葉を聞くことはなくなっていますよね。でもそれだけでは世界が狭いという気もします。私自身、子供の頃から、祖母の下町言葉と周囲のお母様方の山の手言葉の両方を聞いて育って、環境が言葉を作り、その言葉を通して人間関係や礼儀を学習していくという実感は持っていますし、何もかもラフに、あけっぴろげな言葉で話せばいいということでもないと思っているんです。もちろん、上品な言葉を身につけたからといって、イライザに上流社会の仲間入りはできません。でも、だからといって彼女は下町言葉に戻るのでもなく、新しい自分を探し、自分の生き方を切り拓いていく。環境の中でただ流されるのではない選択がそこにはあります。
ショーは「イギリス人が自国語を大事にしないことに腹が立って、これを書いた」と言っているそうです。彼はアイルランド人ですから、どんなに作家として頑張ってもイギリスの階級制度の中で生きていくことはできない。それなのに「イギリス人たち自身が、英語の美しさやその背景にある文化を理解していないなんて」と思ったのかもしれません。だからこの作品には、言葉と環境、学習をめぐる議論が仕掛けられているんでしょうね。
―言葉と環境、人格、生き方……その関係は決して単純ではないし、簡単に考えてはいけないと?
宮田◆そうですね。この物語自体も、予定調和のハッピーエンドでは終わりません。「演劇は一晩だけの楽しみでいいのか。もう少し、人生になんらかのきっかけを与えるものであるべきなんじゃないか」。それこそイプセンとも通じますが「上流階級の、自分たちの生活とは何の関係もない絵空事の舞台をもっと民衆に近いものにしたい」とショーは考えたんだと思います。だからこそこれは、ふと立ちどまって「幸せ」の意味を考えることができる、リアリティのあるロマンスに仕上がっているんですよね。
<新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 2013年8月号より>
2013年8月23日
ロンドン1日目
ロンドン ヒースロー空港に到着したのは、16時。
約13時間のフライトと、空港に着いてから入国審査等の長蛇の列に並んで、気づけば2時間ほどの道のりは、さすがに疲れました。今日はアパートに着いたら、ゆっくりして備えようと心に決め、駅へ向かう。
アパートの最寄りの駅へは、ヒースロー・コネクト(日本でいう成田エクスプレスのような、特急列車)で、一本ということで、早速切符を購入。(もちろん英語で、ですよ・・・)
無事に切符を手に入れ、意気揚々とホームに降りてゆく。
ガイドブックなんて見たりしたり、キョロキョロしてみちゃったりしながら。
その余裕が仇となったのか、ポケットに手を入れてみると、
先ほど(5分前)そこにあったはずの切符が・・・ない!
ポケットを引っくり返してみても、カバンを漁ってもない!
5分前にはあったのに・・・。自分の愚かさにガッカリです。
少し気を緩めた瞬間にこれです。海外では命取りですね・・・今回は切符、でしたが。
どうしてもないので、心で号泣しつつも、もう一度買いに行く。
なけなしの金を早くも無駄遣い・・・8ポンド弱✕2が、5分で飛んで行く。ああ、無情・・・。なんてどうでもいいことを考えても仕方がないので、切替え切り替え!と心機一転、またもやホームに降りて行く。
すると、
ん?
エスカレーターの出口付近に四角い紙のようなモノが。
ああゴミが落ちているんですね。まさか・・・ね?
自分の視覚から入ってくる情報を心でなんとか否定しようとしながらも、エスカレーターがゆっくり下っていくのと、同じ速度で、視覚を否定する力が弱まっていくのです。
あぁ・・・まさか・・・そんな・・・。
そうです。エスカレーターで落としたのです。
切符を。8ポンドの切符を。(1300円ほどです)
不注意です、完全に不注意なのです。
阿呆な旅人と嘲りください。僕は皆様の為に、敢えての失敗をしているのです。皆様が旅先で苦労をしないように。(そう思わせてください。それしか救いがないのです・・。)
その後は、なんとか無事にアパートにつき、散歩がてらに近所のスーパーで買い物をし、軽く腹ごしらえ。(5月くらいだとアチラは21時くらいまで明るいのですね。時間の感覚が崩れてしまいそうです。)
アパートについてからも、
レンタルしたWi-Fi(ワイファイ)が繋がらない事件やら、洗濯機が永遠止まらない事件やら、ハリネズミ事件やら、
もろもろあったのですが、さすがにそろそろ英国について書かないと、注意を受けてしまいそうなので、自粛させていただきます・・・。
1日目は疲労困憊で、22時くらいには就寝していました。
さて2日目より、いよいよ街歩きです。
それでは次回。
橋本淳
2013年8月16日
いざ、英国の地へ!~ロンドン紀行~
初めにいっておきますが、海外一人旅は、20歳の頃に行った、NYぶり。ですので、行く前からかなりの緊張とワクワク感。
英語力はというと中学レベル。そうなんです、ほとんど分かりません。
何とかなるだろう精神を、ひさっげて、いざ英国へ。
一番安価と言う理由で、航空会社はBA(ブリティッシュ・エアウェイズ)
ガイドブックなどでの事前情報によると、英国は過去に移民問題があったため、入国審査が厳しいらしい・・・。大丈夫なのか、橋本。
機内での心理状態は不安のみ。
BAということで基本的にここから英語。
簡単な単語(please/coffee/fish/など)を駆使して、軽い会話の練習。なんだ案外通じるじゃないか、こんなコフィなんて発音とめちゃくちゃな文法で通じるのか、と安堵感もありつつ、字幕なしの映画を見つつ、無事にヒースロー空港に到着。
そこで、その安堵感が一気に冷や汗に変わる時が訪れるのです。
そうです入国審査です。相手は黒人のおばさま。目つきから既にコチラは萎縮。最初は良かったのです、最初は・・・。
滞在理由、滞在日数。ここまではすらっと回答。
このあとにヘマをする。職業はと聞かれた時に、何を血迷ったのか、恥じらいからなのかactorと答えずに、office workerと答えてしまったのが、悪夢の始まり・・・。
そこから英語で質問攻め、
どんな会社か?どんな仕事をしている?名刺はあるか?
マゴマゴしている様子を見てなのか、滞在場所はどこだ?の質問が来る。
即答でHOTELと答えてしまう。(実際の泊まる場所は、知り合いの空き家のアパート。コレを正直に言ってしまうと、面倒くさい事になると聞いたので、ちっちゃい嘘をついてしまったのです。)
すると、予約表を見せろと言われる、もちろんそんなものは持っていないのです。当然ながら。焦る焦る、冷や汗が全身を流れる。このまま強制送還か・・まだ何もしていないのに、残念、橋本・・・。
と、その時、ふと思い出したのです。
アパートを借りる事に決まる前に、ホテルを仮抑えしていたことを。
運良く、その時の予約表の控えがカバンの中に。日本語で書かれている紙が。もうすでにキャンセルしていたので、ホテルに電話されたらアウトの一か八かの作戦でした。
紙と僕を、交互に見つめる審査官。あの時間が永遠に感じた。
そして、遂にそのときが、ため息をつきつつも、審査官がスタンプを、ガツンと捺印。日本語で書かれた予約表のおかげなのか、それは僕にも分かりません。
あのときの開放感が今でも脳裏に、全身に焼き付いて離れません。
何はともあれ、無事に入国出来たのです。皆様、ウソはいけません。いくら小さなウソでもいけません・・よ。
しかし、安心するのも束の間で、このあとにまた困難が待っているとは・・
入国審査のことだけで、文字数がいってしまいましたので、今回はこの辺で。
橋本淳
2013年8月6日
初めまして、橋本 淳です。
初めまして、今回「ピグマリオン」で「フレディ役」をやります橋本淳と申します。何から書き出せばいいのか、一役者の僕が何を綴ればいいのか、悩みながらの書き出しです。
では、まずはこの紀行を書くキッカケのお話を少々・・・。
ことの始まりは、ピグマリオン出演が決まった時に遡ります。この作品への参加のお話をいただいたのは、昨年の秋頃です。その時、恥ずかしながら、勉強不足で、作家のジョージ・バーナード・ショーも知らなければ、ピグマリオンも知らない、唯一知っていたのはマイ・フェア・レディ・・と、そんな状態でした。(役者としてそれはどうなの?という声が聞こえてきます、すいません、無知なのです。)
そんな状態ではイカンと思い、すぐに書店に走り、戯曲を手に入れ、早速読みふける。舞台はイギリスの中心地ロンドン。英国です・・・行った事もなければ、詳しくもない・・またもや自分の無知に嫌気が差しました。物語の冒頭、コヴェント・ガーデンのシーンなのですが、活字を読んでいても、全くビジョンが見えてこないのです。元々カタカナに弱い、のはさておき、地名などに親近感が持てず、物語がなかなか頭に入ってこないのです・・・。
ハマースミス?トラファルガースクウェア?チャリング・クロス駅?
頭の中では、はまーすみす?とらふぁるがーすくうぇあ?・・・とそんな感じです。
これはさすがにイカン(2度目)と。よし、仕事が一段落したら、フィールドワークをしようと、実際の街を見たい、肌で感じに行こう、という思いが出てきたのです。
そして今年の5月末にようやくそれが叶い、英国へと飛び立ったのです。しかし、内心は、半分は観光旅行だった、のですが。
滞在わずか5日間の小旅行(自分のお財布と相談した結果)、目的は、街歩き・観劇、この2点。そして、あれはたしか、そう、滞在3日目のことでした。カフェでメールのcheckをしていると、一通のメッセージが。新国立劇場のスタッフさんからのメールでした。「せっかくイギリスに行ったのだから、このHPで紀行でも書いてみませんか?」というものでした。驚き半分、嬉しさ半分、あとは小さくガッツポーズ。自分に文章が書けるのか、などの葛藤がありましたが、せっかくお話を頂いたので、やらせてもらう事になりました。
と、ざっくり説明させていただくと、このような経緯です。
今回は経緯だけでしたが、今後は、滞在中の日記を少しずつ綴っていこうかと思います。拙い文章ではありますが、よかったらお目を通してくださると幸いです。すこしでもピグマリオン観劇までの楽しみになるように。。。
橋本 淳
2013年8月2日
ピグマリオンの神話
タイトルの「ピグマリオン」は、ギリシャ神話に登場する古代キプロス島の王の名から採られました。彫刻家でもあるピグマリオンは、現実の女性に失望していましたが、あるとき理想の女性を彫刻するうちに、その象牙の彫像ガラテアを愛してしまいます。
朝に夕に話しかけ、心身が衰弱するほど苦悶するピグマリオン。ついに彫像が人間になることを愛の女神アフロディテに願うと、彫像は生命ある女性に変身し、2人は結婚して、幸せに暮らしました。ピグマリオンは女神に感謝して、各地の神殿に女神の彫像を残したといいます。
この神話になぞらえて、人間が期待されたとおりに効果を出すことを「ピグマリオン効果」といいますが、この舞台「ピグマリオン」のイライザはヒギンズの期待に応えることができるのでしょうか。そして恋の行方は…。
皮肉屋バーナード・ショーならではの、ちょっとビターな物語をお楽しみください。
上はジャン=レオン・ジェロームの絵画「ピグマリオンとガラテア」。
まだ下半身が彫像(のように見える)のガラテアに接吻するピグマリオンを描いた作品。