2013年11月15日
いいチームワーク
昨日は、劇場のメンバーと劇場で公演中のスタッフ・キャストとの交流会がありました。
「ピグマリオン」のスタッフ・キャストも、終演後に参加してくれました。
平岳大さんと櫻井章喜さんが一緒に餅をついてます。
真ん中にいるのは、三宅克幸さんです。
台本では、櫻井さん演じるネポマックは平さん演じるヒギンズ教授の音声学のお弟子さんです。
息がぴったり合ってますよね~。
その後、腕相撲大会では佐藤誓さんが参加してくれて、準決勝まで勝ち進みました!
こんな風に「ピグマリオン」チームはとてもみなさん仲がよくて、気さくないい雰囲気です。
おかげで、舞台でもいいアンサンブルを見せてくれています。
ぜひ見に来てくださいませ。
2013年11月14日
新刊出ました!
おかげさまで昨日、無事に初日を迎えることが出来ました。
昨日の楽屋口の様子です。続々とお花が届いています。
そして昨日、劇場に今回の「ピグマリオン」の新刊が届きました!
「ピグマリオン」は、新国立劇場のシリーズ「JAPAN MEETS ・・・-現代劇の系譜をひもとく-」の八本目になります。
日本の演劇に影響をおよぼした海外戯曲、劇作家を紹介してきたこのシリーズ、今私たちが演じるにあたって無理のない言語で上演するために、新訳をお願いし、演出家と一緒に作り上げてきました。今回も、小田島恒志さんが、ロンドンの下町なまりであるコックニーを面白い日本語に翻訳してくださいました。
今回、その新訳が、光文社古典新訳文庫で出版されました。
本文の戯曲以外に、バーナード・ショーによる序文と後日談が入っています。ショーが後から書き加えた、イライザと彼女をめぐる人々のその後が書かれています。舞台を見るだけではわからない意外な結末なのでぜひ皆さんにこちらも読んでいただきたいです。
劇場ロビーでも販売しております。ご観劇後の記念にぜひお求めください。
なお、この特設ブログで小田島さんは楽しいコラムを連載してくださってます。そこでも翻訳するにあたってのご苦労や楽しさを書いてくださってます。
こちらも引き続きお楽しみください。
2013年11月9日
お得な当日券のご案内
いよいよ公演初日が間近に迫ってまいりました。
今回は、お得な当日券=「Z席」と「当日学生割引」のご案内です。
◆Z席◆
お席の場所は、2階席の最後方端ですが、何といってもこの安さが魅力!
公演当日のみ販売。1枚1,500円(税込)。
公演当日、劇場ボックスオフィス窓口のみにて販売。
1人1枚。電話予約不可。先着26名様限り。
◆当日学生割引◆
学生限定の特別割引!
公演当日に残席がある場合、正価の50%引で販売します(Z席を除く)。
劇場ボックスオフィス窓口及びチケットぴあ一部店舗にて販売。
1人1枚。電話予約不可。学生証の提示が必要です。
2013年11月8日
翻訳者雑感その3 ~ロンドン訛り(コクニー)~
コクニー英語の特徴のうち、2つの点がよく知られている。「エイ」が「アイ」になることと、「H」の音が落ちる(ハヒフヘホがアイウエオになる)ことだ。『マイ・フェア・レディ』の中で、ヒギンズはイライザに2つのセンテンスを何度も復唱させる。
The rain in Spain stays mainly in the plain.
(ザ・レイン・イン・スペイン・ステイズ・メインリー・イン・ザ・プレイン。 = スペインの雨は主に広野に降る。)
In Hertford, Hereford and Hampshire, hurricanes hardly happen.
(イン・ハートフォード・ヘリフォード・ハンプシャー、ハリケインズ、ハードリー、ハップン= ハートフォードとヘリフォードとハンプシャーでは、ハリケインは滅多に起きない。)
これを花売り娘のイライザはコクニーで「ザ・ライン・イン・スパイン・スタイズ・マインリー・イン・ザ・プライン」「イン・アートフォード・エリフォード・アンド・アンプシャー、アリケインズ、アードリー・アップン」と発音してしまう。で、特訓の末、ついにちゃんと発音できるようになって、感動の歌(と踊り) ― とミュージカルでは盛り上がるのだが、ストレートプレイの『ピグマリオン』にはこの歌は出てこない。(誤解を恐れず敢えて言っておけば、『マイ・フェア・レディ』と違って『ピグマリオン』はそういう形で観客を感動させることを目指していないのだ。が、それはまた別の話。)
さて、まず「H」が落ちること。これをそのまま日本語でやってみると結構面白い。語尾などにもアレンジを加えて「花代払ってくれよ」を「あなだいあらっちくりよぉ」に、「なんだ、そのヘンテコな字?」を「なんでぇ、そんエンテコな字?」に、などなど。やっていて面白いのだが、台本に表記する場合、意味が分からなくなるので、「あな(花)代あら(払)っちくりよぉ」などと不思議な但し書きを加える必要があった。かなり面倒くさい。面倒くさいとは言え、「ハヒフヘホ」→「アイウエオ」は比較的スムーズにできた。が、「エイ」→「アイ」はそうはいかなかった。例えば、「きれいな英語」を変換すると「きらいなあいご」となるわけだが、え、「嫌いな愛護」って何? みたいに、元の言葉を連想しにくくなってしまうのだ。恐らく、日本語の場合、英語ほど「エイ」の音が頻発しないのも原因だろう。どうしよう、と思っているうちに、ふと気がついた。日本語では逆に「アイ」→「エイ」(「エー」)にすればいいんじゃないか、と。「痛い」→「いてー」、「中産階級」→「中産けーきゅう」など。これなら自然に汚い(なんのこっちゃ?)日本語のように聞こえる。
24年前、ロンドン留学中にコクニーのことで一つ気がついたことがある。映画『マイ・フェア・レディ』のおかげもあって、「エイ」が「アイ」になることは知っていたので数字の「8(eight)」が「アイト」、「門(gate)」が「ガイト」だと言われても驚かなかった。が、こちらが「アイ」と言ったものまで「エイ」だと思われることが多々あったのだ。特に「小田島」と言う名前を人にスペルで説明するとき。「O-D-A-S-H-I-M-A」(オウ・ディー・エイ・エス・エッチ・アイ・エム・エイ)と言うと、「エイ」はちゃんと「A」と書き取ってくれるのだが、「アイ」も「A」と書かれてしまう。いやいや、そこは「アイ(I)」ですよ、と念を押すと、ああ、わかってる、「アイ」だろ? と言いながら、既に書き取った「A」の文字を太くなぞっている。おかげで、駅前のクリーニング店では1年間「ODASHAMA」という名前で通すことになった。顔を覚えられて、店に入ると「ハーイ、オダシャマ!」と呼ばれるので、なんだかどっちでもよくなってしまった。
『マイ・フェア・レディ』という題は、実は『メイフェア・レディ』のコクニー読みの洒落だと聞いたことがある。メイフェア(Mayfair)というのはロンドン中心にある高級住宅街のこと。現在では商業地区としても発展しており、いわば東京の銀座と田園調布と千代田区一番町を合わせたようなところ。これが、コクニー発音だと「マイフェア」になる。だが、待てよ? それなら「レディ」も正しくは「レイディ(Lady)」だから「ライディ」になるはずだ。「メイフェア・レイディ」はコクニーでは「マイフェア・ライディ」になる・・・などと余計なことを考えているうちに、ん、この「ライディ」って響きがいいな、と思って、『ピグマリオン』にも取り入れることにした。すなわち、「アイ」を「エイ(エー)」と読む原則を作っていたところに、「レイディ」のように英語の単語は本来のコクニーらしく「エイ」を「アイ」にして「ライディ」としてみたのだ。
要するに、かなり適当にいろいろ混ざった訛りができ上がったということ。その適当に作った言葉を稽古場で石原さんや小堺さん(主に訛る役のお二人)が一所懸命覚えようとしている姿を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。ああ、適当なのに。すみません、申し訳ない ― 弱気な僕は到底ヒギンズのような厳しい先生にはなれそうにない。
と、思っていたら、情け容赦なく厳しいダメだしを畳み掛ける怖い声が ― あ、いた、ヒギンズのような厳しい、怖い、徹底的に妥協せずに完成を目指す先生が・・・あ、いえいえ、僕の勝手な妄想ですよ、宮田さん、あ、言っちゃった。