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おススメ!『トミイのスカートからミシンがとびだした話』⑥三好十郎作品の強烈なインパクト

第19期生公演『トミイのスカートからミシンがとびだした話』(11月11日(火)~16日(日))は開幕までもう間もなくとなりました!


三好十郎作品が、今活躍する演出家や俳優に、いかに強烈なインパクトを与え、大きな成果を生み出してきたか、演劇誌「悲劇喜劇」2021年7月号の特集記事『三好と秋元のことばと未来』を中心にピックアップしてお伝えしますーーー


三好作品は、劇団文化座、劇団民藝、劇団東演のレパートリーとして数々の名舞台となってきたが、2003年に、当時新国立劇場芸術監督を務めていた栗山民也氏が『浮標』を、2004年に『胎内』を、新国立劇場公演として自ら演出し取り上げ、再評価の足掛かりとなった、と舞台演出家・貝山武久氏が指摘しています。


栗山氏は、大学時代に古本屋街で『三好十郎の仕事』という全集を見つけ、「熱く、まるで息をしているような言葉で、とても衝撃を受けた。」と、三好作品を演出することを長年にわたって温めてきたことを述べています。

栗山氏は、2009年には『炎の人――ゴッホ小伝』をゴッホ役に市村正親氏を得て上演(2011年再演)、2020年には一人芝居『殺意 ストリップショウ』を鈴木杏氏により上演し、『炎の人』では、市村氏が第17回読売演劇大賞最優秀男優賞、紀伊國屋演劇賞個人賞を、栗山氏が読売演劇大賞演出家賞を、『殺意』では、鈴木氏が第28回読売演劇大賞、同最優秀女優賞を受賞するという大きな成果となりました。


また、長塚圭史氏は、2005年に鈴木勝秀氏が演出した『胎内』に出演し、その時の気持ちを「あれほどまでに熱心にその役を生きたいと願ったことはそれまでなかった。」と、熱く語っています。(新国立劇場2021年4月公演『斬られの仙太』プログラム)

長塚氏は、その後自ら「三好の人間に対する信頼と絶望とが入り混じる傑作」と語る『浮標』を、自らが結成した創作団体「葛河思潮社」にて3度にわたり演出・出演し、『冒した者』も演出・出演してきました。長塚氏は、三好作品に共通する「肉体性」―「痛み」や「エロティシズム」を取り上げ、「人間というのは生物である以上艶かしい。そこから逃れられない宿命。私が強く三好十郎に惹かれる大きな要素です。」と述べています。


新国立劇場次期演劇芸術監督予定者である上村聡史氏も、三好十郎に心酔する演出家の一人です。

上村氏の三好作品との出会いは、2003年、文学座の研修生だった頃、栗山氏が演出した『浮標』だったそうです。「とても感動したが、その時は「自分には演出できない」と思ったほど、ただただ、そのエネルギーに圧倒されました。」とのこと。

その後、十数年を経て、2017年、文学座アトリエの会で『冒した者』を演出しました。「精神を切り裂かれながら生きる叫びが、この戯曲から鮮烈に聞こえたから」と、上村氏は、その作品選定理由を語っています。

そして、2021年、上村氏は新国立劇場で『斬られの仙太』を演出します。上村氏は、小川絵梨子芸術監督からフルオーディション企画の打診を受け、即『斬られの仙太』を提案したそうです。「「この作品に参加したい」とオーディションに手を挙げた俳優の熱量と、『斬られの仙太』が投げかける熱量が、うまく重なるのではないかと思ったのと、この作者の投げかけは、今の時代に強く響くだろうと直感した」と、上村氏は熱く語っています。
『斬られの仙太』は、コロナ禍の厳しい環境下での準備と上演にも関わらず、舞台成果には非常に高い評価が集まりました。


三好作品は、没後70年近く経った現在も、これほどまでに演出家や俳優の心に火をつけ、熱い上演と高い成果を生み出しています。