演劇研修所ニュース

おススメ!『トミイのスカートからミシンがとびだした話』③劇作家・三好十郎

第19期生公演『トミイのスカートからミシンがとびだした話』(11月11日(火)~16日(日))は開幕まであと約2週間となりました!

劇作家・三好十郎の略歴と作品についてなど、少しだけエピソードを紹介させていただきます。

【略歴】

1902年佐賀県生まれ。早稲田大学英文科卒。大学在学中に「早稲田文学」に詩を発表、詩人として活動する他、翻訳家としても活動。27年、処女戯曲『首を切るのは誰だ』を創作、劇作家として活動を開始、翌28年、同作と『疵だらけのお秋』を発表。生涯で戯曲やラジオドラマの脚本等、80を超える作品と発表し、『炎の人---ゴッホ小伝』等の成果により52年読売文学賞戯曲賞を受賞しました。1958年没。

【新国立劇場での上演歴】(クリックすると各公演記録ページをご覧いただけます)

新国立劇場では、次の6作品を上演して参りました。

『浮標』(2003年2月、演出:栗山民也/初出:1940年)

『胎内』(2004年10月、演出:栗山民也/初出:1949年)

『噛みついた娘』(2016年1月、演出:栗山民也、演劇研修所第9期公演/初出:1936年)

『トミイのスカートからミシンがとびだした話』(2018年10月、演出:田中麻衣子、演劇研修所第12期公演/初出:1951年)

『斬られの仙太』(2021年4月、演出:上村聡史/初出:1934年)

『夜の道づれ』(2025年4月、演出:柳沼昭徳/初出:1950年)

【作品について】

吉本隆明は、「三好十郎には文学的な営みがすべて、生存の根拠を問い直す死活問題だった。」(宍戸恭一『三好十郎との対話』(深夜叢書社、1983年)に寄せて)と、三好の筆致の壮絶さを表現しています。

また、文芸評論家の奥野健男は、「現代日本戯曲大系 第一巻」(三一書房、1971年)の解説で次のように述べています。

「戦後初期の新劇の不振の約十年間の中で、真にあふれるような、火山の噴火のような仕事で、新劇というジャンルを、いや劇作家の光栄と責任を負ったのは三好十郎だけと言ってよい。三好十郎は日本の戦後新劇をひとりで負っていたのだ。」

三好は、敗戦後の気持ちを次のように書いています。

「一九四五年八月十五日の直後、いろいろの事を考えた。

もちろん、すべてが、あまりあかるいものでは、あり得なかった。

予想される前途の困難は、多種多様で、しかもその一つ一つが非常な力と忍耐を要する。それを思うと、ほとんど絶望に近いものを感じた。しかし絶望ではなかった。」

「「さあ、これからだ」と思った。すっぱだかになって土の上に立ったように、自然でスナオで謙虚な気持ちになった。同時に、もう誰が来ても、どんな目に逢っても、これ以上どうにもなるわけには行かないと言ったふうの強い腰のすわりを感じた。」

(三好十郎の仕事 別巻、「戯曲研究会のノートから」、學藝書林、1968年)

そして、三好は戦後の数年の間に、次のような現在も上演が続く幾つもの力作を生み出していきました。

『崖』(1946年)、『廃墟』『猿の図』(1947年)、『その人を知らず』(1948年)、『胎内』(1949年)、『夜の道づれ』『殺意 ---ストリップショー ---』(1950年)、『トミイのスカートからミシンがとびだした話』『炎の人 ---ゴッホ小伝』(1951年)、『冒した者』(1952年)

『トミイ』は、正にこの時期に書かれた、三好の戦後の充実期の作品の一つです。

上演は11月11日(火)から16日(日)まで、新国立劇場小劇場にて。詳細はこちら。チケット絶賛発売中!お見逃しなく!


tomiesskirt2025_ticket640272.jpg