2013年9月
2013年9月9日
河合祥一郎さんのコラム「マーロウの素顔①」
今日から毎週月曜日に、今回の「エドワード二世」を新たに翻訳してくださった河合祥一郎さんによるコラム「マーロウの素顔」が始まります。5回の連載予定。どうぞお楽しみに! では、その第1回目です。
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戯曲『エドワード二世』は『悲劇喜劇』10月号(発売中)に掲載されており、エリザベス朝演劇については10月14日(月・祝)のマンスリー・プロジェクト演劇講座でお話しするので、ここでは『エドワード二世』をより深く理解するために、マーロウの驚くべき素顔に迫ってみよう。
クリストファー・マーロウはシェイクスピアと同じ1564年に生まれ、他に先駆けてブランク・ヴァースを使い、シェイクスピアに多大な影響を与えた重要な劇作家として知られるが、その作風は「ジェントルな」と言われるシェイクスピアとはまったく違い、激しく壮大で、爆発するような力を秘めたものだった。それは、マーロウ自身の神をも恐れぬ波乱万丈の生き方とつながるところがある。
マーロウは男色家であり無神論者だったが、これはキリスト教が大きな力をもっていた当時、あまりにも無謀な、考えがたい立場だった。彼が描く劇の主人公たちがあらゆる権威に挑戦し、果てしない欲望のままに生きようとするのは、マーロウ自身の姿勢と無縁ではない。
マーロウがエドワード二世に惹かれたのは、自分の欲望を満たすためなら国などどうとでもなれという王の破天荒さゆえだろう。まわりの貴族たちが呆れかえるほどの好き勝手をやり、寵臣ギャヴィストンが殺されたら今度はスペンサーを寵愛するというその歯止めのきかなさは、まさにとどまるところを知らないマーロウ好みの人物と言える。
エドワード二世とマーロウには、マーロウも予期していなかったほどの強烈な共通点がある ―― どちらも、暗殺されたのだ。マーロウは29歳の若さで国家権力により抹殺された。これは一体どういうことなのか。(つづく)
クリストファー・マーロウの肖像画
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「悲劇喜劇」10月号
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/731310.html
マンスリー・プロジェクト演劇講座「エリザベス朝演劇」10月14日(月・祝) 18:00 新国立劇場小劇場 応募期間9月17日(火)~10月7日(月)
https://www.nntt.jac.go.jp/play/monthly/