2013年10月25日
ブレヒトによる「イングランドのエドワード二世の生涯」
最後にふたつ、マーロウの「エドワード二世」の受容史上、お伝えしておきたいことを記します。
ひとつは、20世紀を代表するドイツの劇作家・演出家・詩人、ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)による「イングランドのエドワード二世の生涯」―マーロウによるベルトルト・ブレヒトの年代史劇―です。日本語では、『ブレヒト戯曲集』第1巻(岩淵達治訳・未来社)に収録されているのを入手できます。もちろん、新国立劇場情報センターにもございますので、ご興味がございましたら、ご覧ください。戯曲の前言に「この戯曲をわたしはリオン・フォイヒトヴァンガーの協力を得て書いた」とあり、続けて
ここにお目にかけまするはイングランドの国王 エドワード二世の麻の如く乱れた治世と 国王のいたましい死の物語 それに彼の寵臣ガーヴストンの栄華とその末路 さらには女王アンナの波瀾万丈の運命 それに偉大なるロジャー・モーチマー伯爵の 栄枯盛衰、これらすべての物語は 今を去る六百年前に、イギリス、主としてロンドンで 起こった出来事でございます。
とあり、この作品の真髄がブレヒトにより、冒頭で描かれています。登場人物が少し整理されていますが、「エドワード二世」全体がブレヒト劇らしい台詞と構成で成立しています。初演は1924年3月、ミュンヘン室内歌劇場にて。その前年11月に映画監督で演出家でもあったカールハインツ・マルティン(1886-1948)がマーロウの戯曲をアレンジし、ベルリンにて彼のドイツ語訳で上演されています。ブレヒトはその影響を受けたといわれています。
このブレヒトによる作品がマーロウの国、イギリスで初めて上演されたのは、1956年のパレス・シアター、ベルリナー・アンサンブルのロンドン公演によるものでした。(ま)
↓ 『ブレヒト戯曲集』 第1巻