2013年7月11日
「火の鳥」インタビュー①小野絢子
ダンサーが語る「火の鳥」
─火の鳥とイワン王子のスタイルとは?
ストラヴィンスキーの出世作であり、バレエ・リュスの名作のひとつ「火の鳥」。1910年に初演されたこの作品の踊りを、現代のダンサーはどう感じるのか。2010年に踊った火の鳥役・小野絢子とイワン王子役・福岡雄大が語る。インタビュアー◎守山実花(バレエ評論家)
小野絢子
独特のスタイルと存在感
シンプルだからこそ難しい
一幕ものなのですが、走って、ソロ、パ・ド・ドゥを踊り、また走って……と、火の鳥役は体力的にとても大変でした。一〇〇年以上前の作品ですので、現代の作品のようにテクニックがたくさん入っているわけではありません。使われているパ(=ステップ)の種類もそれほど多くないのではないでしょうか。テクニックや複雑な動きで見せるのではない、だからこそシンプルな動きの中で表現する難しさがありました。羽の動かし方にしても、白鳥のように優雅に動かすのではない、独特のスタイルがあります。ビントレー監督からも「こうやるんだよ」と実際に腕の動かし方を見せいただき、研究しました。
後半、カスチェイのもとに現れてからは、存在感を出すことが大切です。立っているだけで魔力を表現しなければなりません。お客様の視線は中央で踊っているダンサーたちに行きますから、あまり気がつかないかと思いますが(笑)、実は、魔力を送るように、ずっと手を細かく動かしているんです。
「火の鳥」の音楽は前奏を聴いただけで、これから何が起こるんだろうとドキドキします。張り詰めた緊張感がありますね。音から世界観が広がっていくストラヴィンスキーの音楽は大好きですし、踊っていても、入り込んでいくことができるので、私にとっては踊りやすい作曲家です。
新国立劇場・情報誌『ジ・アトレ』6月号より