Storyものがたり
【第一幕】むかしむかし ある島に 浦島太郎という心の優しい青年がいました。
ある日、浜辺で子ども達が亀を面白がっていじめるのを見た太郎は、亀を助け、海に逃してやりました。その晩、太郎は、風を切り、光を放ち、大空を飛んでいる不思議な夢を見ます。次の朝、波の中から昨日助けた亀が現われて言います「お礼に、竜宮城にご招待をさせてください。」亀の背中に乗って、いざ海の旅へ出ると、波が二人を運び、魚たちと光がきらめいて、水と空の二重の風景が太郎を包んでいます。
この亀は、竜宮城のプリンセスだったのです。辿りついた竜宮城では楽しい宴が始まり、美味しいお酒と料理、魚たちの歌と踊りで太郎は厚い接待を受けます。とりわけ亀の姫の舞は、妙なる美しさでした。心の優しい太郎に惹かれた姫と太郎は互いに心を寄せ合い、恋に落ちます。そして時は瞬く間に過ぎていきました。
【第二幕】亀の姫と夢のような時を過ごす太郎は、竜宮城に「季(とき)の部屋」があるのを知ります。
その部屋の四方の襖の向こうには、それぞれの四季の庭が広がっていて、四季の美しさを一度に堪能できるのです。長い時間入ってはいけないこの部屋に「少しだけ...」と入ってしまった太郎は、日本の四季に感動し、故郷の美しさをあらためて思い出します。我に帰った太郎は「故郷に帰らなければ」という思いを亀の姫に伝えます。泣く泣くその思いを受け入れた姫は、玉手箱を太郎に授け、別れを告げるのでした。「この玉手箱は、竜宮城に受け継がれてきた、大切な宝の箱。あなたへの愛の証をこの箱に閉じこめました。でも、決して開けてはいけません。」
太郎は、再び波に運ばれて海を進み、気がつくと、浜辺に倒れていました。
あたりを見回すと、寂しげな気配。そこは、700年の歳月が流れた故郷(ふるさと)の浜辺でした。人影はなく、老松だけが佇み、子ども達の声も聞こえません。途方にくれた太郎は、抱えていた玉手箱を開けてしまいます。すると、玉手箱から煙が立ち上り、みるみるうちに太郎は老人になってしまうのです。年老いた太郎は、涙しながら全てを受け入れて行きます。「時の流れの中で生きる、限りある命のこと」「すべてを産んでくれた偉大な母なる海のこと」を。
そして太郎は鶴に姿を変え、大空に飛び立ちます。風を切り、光を放ち、空を飛ぶ明神となった太郎。「あの時みた夢は、このことだったのか!」そこへ、亀の神となった亀の姫があらわれます。亀の姫は鶴の浦島太郎とともに、この島の夫婦(めおと)明神(みょうじん)として、未来永劫、島の民の守り神となりました。
めでたし めでたし!