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稽古の進め方。

三部作、9時間の作品の稽古をどのように進めていくのか……。想像するのは、なかなか難しいですよね。

われわれも、稽古に入るかなり前から、いろいろ考えました。一日を三部に分けて、一部の時間(たとえば、10時~13時)、二部の時間(たとえば、14時から17時)、三部の時間(たとえば、18時から21時)と、毎日三部三本の芝居を並行して進めていくことも検討していたのですが、実際は、一部を初めから順に2、3日かけて稽古し、次の数日で二部、さらに続けて三部、というように進めています。

つまり、9時間の作品をひとつ、初めからじっくりと創っていくということなんですよね。三本の作品でなく、一本の芝居なんだ!と実感しています。

でも、ひと通り最後まで当たり、次に同じ場面を稽古できるのが一週間以上もあとになってしまう。それで、スタッフ・キャストのみなさん、貴重な稽古時間に、それはそれはすごい集中力とタフネスさを発揮して下さっています!(ま)

ケアードさんの特別講座を掲載しています

「ヘンリー六世」公演期間中には、無料連続講座「シェイクスピア大学校」が開かれます。

豪華講師陣をお迎えする予定ですので、チェックよろしくお願いします。

 

この「シェイクスピア大学校」ですが、今年の5月、プレ企画として、「開校記念特別講座」と題して、演出家のジョン・ケアードさんのレクチャーを行いました。

この特別講座、実はほぼ完全な記録を、Web上で公開しています。読み応え十分です! 講座を聞き逃した方、ぜひぜひ、Webでお読みください。

ケアードさんの特別講座の記録は、こちらです。(な)

ウェークフィールド サンダル城

サンダル城址

サンダル城址

サンダル城址

サンダル城址

 ヨーク市からは電車で約一時間、同じヨークシャーの田舎町、ウェークフィールドの街はずれ、住宅地の真ん中の丘の上に、というヨーク公リチャード・プランタジネットゆかりの城跡がある。
今では遺跡の入り口に、小さいながら歴史展示館めいた建物が立っていて、こぎれいな史跡センターといった体裁だが、数年前までは幽鬼のような城跡がわずかに崩れ残った、何とも不気味なロケーションだったらしい。しかしまあ今回の戦跡めぐり中、唯一戦跡らしい雰囲気を漂わせていたのは、何といってもここサンダル城だ。
「ヘンリー六世」第三部、一幕二場。ヨーク公とその息子、エドワード、ジョージ、リチャードの三兄弟が、数の上での不利を承知でランカスターとの決戦に打って出る、一族決意の場面の舞台がここサンダル城。この戦闘でヨーク公は王妃マーガレットをはじめとするランカスター方に惨殺され、ヨーク市の城門にさらし首になるわけだが、その「ウェークフィールドの戦い」の主戦場は、城跡のある丘の周辺。城址から三百メートル程ほど下った小学校の校庭にはヨーク公終焉の地という黒ずんだ碑が立っていて、丁度桜の花が花盛りだった。
稽古場は立ち稽古の第二段階。一部から三部まで一通り見当をつけて、先週末からは二順目に入っている。あたり前の話ではあるが、まあ相当な分量なので、とにかく先へ先へと稽古を進めないと、次、いつまた出番が巡ってくるか全く予断を許さない。楽しいながら、何かと気ぜわしい、本番四十五日前の稽古場である。

ヨーク公終焉を示す碑

ヨーク公終焉を示す碑

「ウェークフィールドの戦い」のかつて主戦場には、小学校が建つ

「ウェークフィールドの戦い」のかつて主戦場には、小学校が建つ

赤バラと白バラの再利用

7月21日の制作発表で、キャストのみなさんが一輪ずつ手にしてくださった赤バラと白バラの花(制作発表動画レポートを参照)が、演出部・小道具スタッフの手により早変わり。稽古場で再利用されています。

第一部の前半、「ロンドン、テンプル法学院の庭園」の場。のちの薔薇戦争に発展する有名な場面ですが、ここは史実ではなく、シェイクスピアの創作です。ランカスター家のサマセット(水野龍司さん)とヨーク家のリチャード・プランタジネット(渡辺徹さん)が激しい法律論争を繰り広げ、居合わせた貴族たちが、どちらに賛同するかを、両家の紋章の赤バラか白バラを手折ることで表明するシーン。のちの戦いを予言するような、印象的なシーンです。

薔薇戦争(Wars of the Roses)なる名前は、19世紀の小説が起源とされています。

実際の舞台では、どのようなバラがどんな様子で登場するか、乞うご期待!!(ま)

before

before

after!

after!

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ヨークからタウトンへ

タウトン古戦場の慰霊碑

タウトン古戦場の慰霊碑

古都ヨークからタウトンへは、タクシーで約30分。タクシーでなければ行けないような、へんぴなというか、とにかく見わたす限り、ただの野っぱら。ほんとに何もないところなのです、ここタウトンは。
史実によればヨーク方の総帥ヨーク公リチャード・プランタジネットの死後、西暦1461年3月27日、ランカスター方の勇将クリフォードが首に矢を受けて倒れ、その翌々日、29日、降りしきる雪の中、赤薔薇のランカスター vs. 白薔薇のヨーク、敵味方入り乱れての死闘が繰り広げられたこの古戦場。
両軍に別々に徴兵された親と子供が、偶然同じ戦場に居合わせ、敵味方に分かれて殺しあったという、文字通り血で血を洗う乱戦を、ひとり丘の上から見下ろすヘンリー6世の、哀切きわまるモノローグ。今回の第三部中でも、ひときわ印象に残る場面です。
約550年前の激戦とほぼ同じ季節。訪れた我々を迎えてくれたのは、あくまでも青く晴れわたった春の空。野中にぽつんと建った慰霊碑には、それでもひっそりと、黄色い花が手向けられていました。
稽古場の方は立ち稽古が始まったばかり。どんなアイディア、表現が飛び出してくるか分からない、現場ならではの、とてもスリリングな毎日です。ただし一度ざっと当たった場面を、更に練り直す機会が次に巡ってくるのは…何しろ1週間以上も先…まあそれも全編9時間、長大三部作上演の稽古場の醍醐味かと、一座あくまでも前向きに、ヘンリー6世ライフを満喫しています。

 

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