2009年 10月 19日|スタッフ
伊形 洋 著 『シェイクスピア 劇のありか』(1982年 南雲堂:演劇らいぶらり3)
主要作品を時代を追って解読。
序章で『ヘンリー六世』から『リチャード三世』への、劇作家の成長の軌跡を追う。特にリチャードという魅力的なキャラクターを創造したシェイクスピアが、そこに新たな劇世界の可能性を見出し、そこにこそ“劇のありか”を見出したと喝破する論旨は見事の一語。
その他、どちらかと言えばマイナーな作品である『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』のほか、『アントニーとクレオパトラ』『冬物語』なども読み解く。また筆者ならではの硬質な文体が読後にえもいわれぬカタルシスを残す。
絶版だが、ネット古書等でも入手可能。
2009年 07月 31日|スタッフ
松岡和子 著 『シェイクスピア「もの」語り』(2004年 新潮選書)
作中の「もの」にこだわり全作品を概観した、好事家垂涎の書。「もの」の選択も松岡氏ならではの視点で、たとえば『オセロー』の「ハンカチ」のように王道をいくものもあれば、「えっ!?これですかぁ」と意表をつくものもあり、まさに百花繚乱。具体的な「もの」が主役だけに、作品を顕微鏡で見ているような微細な分析をとおして、シェイクスピアの全体像が浮かび上がります。ちなみに『ヘンリー六世』第一部は「庭園」と「薔薇」。そのほかはお楽しみ。
2009年 07月 31日|スタッフ
小田島雄志 著 『小田島雄志のシェイクスピア遊学』(1982年 白水社)
数ある小田島氏の著作のなかで、シェイクスピア入門として最適の書。主要作品を執筆順(定説)に生涯との関わりから論じ、登場人物の造形の深化の過程を描く。と書くと難しそうだが、小田島氏本人が「遊学」の「遊」の方に重点を置いたと仰るほど平明な語り口で書かれ、思わず各登場人物に感情移入してしまうほどヴィヴィッドに描かれている。
2009年 07月 17日|スタッフ
さまざまな角度から論じられるシェイクスピア像やその作品群。「堅苦しいのでは?」という先入観をはずしてみると、なんと豊かで人間的な世界が広がっていることか。読書の秋には早いけれど、気になる書籍をピックアップしてみては。