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研修生による〈アリアをもっと楽しむ秘訣!〉連載⑥『アレコ』より「みんな寝ている」『LE PROMESSE 2021~アリアコンサート~』



新国立劇場オペラ研修生によるLE PROMESSE 2021~アリアコンサート~では、各自が自身のレパートリーとなるオペラ作品やアリアについて研究を深め、研修を積んだ成果を皆様にご披露します。
現在、研修生たちは11月21日の公演に向けて、本格的にリハーサルを重ねています。

連載で、各自が歌う曲目について、研修生自身が皆様にその魅力や楽しみ方をご案内しています。

今回の案内役は、湯浅 貴斗(第22期生)です。


【研修生による〈アリアをもっと楽しむ秘訣!〉】

オペラ『アレコ』より「みんな寝ている」

1892年、ラフマニノフはモスクワ音楽院作曲科の卒業制作の課題として、19歳の時にこのオペラを作曲しました。

ロシアの国民的詩人プーシキンの『ジプシー』を原作として書かれた、演奏時間約1時間の一幕のオペラです。この作品は、卒業試験としてラフマニノフ自身によって演奏され、最高の評価を得ました。

以前から彼の作品を絶賛していたチャイコフスキーは『アレコ』の初演時に、自身の一幕のオペラ『イオランタ』も共に演奏したいと持ちかけるほどでした。

物語は19世紀帝政ロシア末期、青年アレコは貴族社会や都会での生活に嫌気がさし、放浪の旅に出ます。その道中で恋に落ちたジプシーの娘ゼムフィーラとの間に子供まで授かりますが、奔放な彼女は次第に若いジプシーの男へ心変わりし、ついにはアレコに対し、もはや愛していないとまで告げてしまいます。


今回演奏するのは、ゼムフィーラの言葉を受け、夜中に一人、彼女との甘く楽しい日々を思い出しては、嫉妬と怒りに苦しむアレコのアリアです。


孤独感、次に儚くも幻想的な愛し合った日々の幸せ、興奮、最後には悲しみ、怒り、絶望。弱冠19歳が作曲したとは思えない様々な感情が錯綜するこの曲を、この後、ゼムフィーラを相手の男共々殺してしまう、そのようなアレコの人間性も含めて余すことなく表現したいと思います。



湯浅 貴斗 
Yuasa Takuto バス

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大阪音楽大学卒業。同大学院修了。『イオランタ』レネ王役、『悩める劇場支配人』ドン・クリソーボロ役、『ジャンニ・スキッキ』ベット・ディ・シーニャ役で出演。レパートリーに『フィガロの結婚』バルトロ。



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オペラ研修所試演会『ジャンニ・スキッキ』より(2021年7月公演)〈写真左・ベット・ディ・シーニャ役
                                             撮影:平田真璃

 

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