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研修生による〈アリアをもっと楽しむ秘訣!〉連載②『リゴレット』より「慕わしい人の名は」 『LE PROMESSE 2021~アリアコンサート~』



新国立劇場オペラ研修生によるLE PROMESSE 2021~アリアコンサート~では、各自が自身のレパートリーとなるオペラ作品やアリアについて研究を深め、研修を積んだ成果を皆様にご披露します。
現在、研修生たちは11月21日の公演に向けて、本格的にリハーサルを重ねています。

連載で、各自が歌う曲目について、研修生自身が皆様にその魅力や楽しみ方をご案内しています。

今回ご案内させていただくのは、原田 奈於(第22期生)です。


【研修生による〈アリアをもっと楽しむ秘訣!〉】

オペラ『リゴレット』より「慕わしい人の名は」

オペラ『リゴレット(Rigoletto)』は、1851年にジュゼッペ・ヴェルディ(G. Verdi)によって作曲された、3幕からなるオペラです。台本はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェによって書かれ、原作はヴィクトール・マリ・ユゴーの戯曲『王様はお楽しみ』です。

オペラの大まかなあらすじは、以下の通りです。

公爵に仕える道化師のリゴレットには、ジルダという愛する娘がおり、女好きのマントヴァ公爵はジルダを弄びます。

それに怒ったリゴレットはスパラフチーレ(殺し屋)に公爵の殺害を依頼します。

しかし、公爵と恋に落ちてしまったジルダは、弄ばれていたことを知りつつも愛する公爵を救うため、身代わりとなって殺されてしまいます。リゴレットは、死にゆく娘を腕に抱き、絶望の中でオペラは幕を閉じます。

今回演奏する「慕わしい人の名は(Caro nome che il mio cor)」というアリアは、ソプラノのアリアの中で有名な曲の一つです。

父親と二人きりで暮らしている箱入り娘のジルダは、基本的に教会と家の往復しかせず、世間知らずでとても純粋でした。そんなジルダが、初めて若い男性(身分を偽った公爵)と出会い恋に落ちて、彼が「グアルティエール・マルデ」という名であることを知ります(しかしこれも偽名です)。彼が去った後もその名前を思い出すだけで愛おしく思えるほど初恋に舞い上がっている幸せに満ちた場面のアリアです。

恋に恋するジルダの微笑ましい様子を演じながらも、高度な歌唱技術を求められる曲で、現在も有名な歌手たちの演奏が数多く残っています。

曲中で多用される休符はジルダの心臓のドキドキを表現し、急に現れるアクセントは彼女気持ちの昂りを表しているのではと考えています。

好きな人の名前を見たり呟いたりしただけで嬉しくなってしまうのは、なかなか共感しにくいかもしれませんが、もし現代に例えたなら、スマホに好きな人からの連絡がきて、画面にその通知が見えただけでドキドキしてしまう女子高生のようなものではないでしょうか。

そんなひたむきで可愛らしい様子をこのアリアでお届けできたらなと思っています。



原田 奈於 Harada Nao
 ソプラノ

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愛知県立芸術大学卒業。同大学院修了。『イオランタ』リードコーラス、『悩める劇場支配人』フィオルディスピーナ役、『ジャンニ・スキッキ』ラウレッタ役、ゲラルディーノ役で出演。レパートリーに『フィガロの結婚』バルバリーナ。


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オペラ研修所試演会『ジャンニ・スキッキ』より(2021年7月公演)〈ラウレッタ役〉     撮影:平田真璃