演劇研修所ニュース

演劇研修所第19期生公演 朗読劇 『少年口伝隊一九四五』にて視覚に障がいを持つお客様への観劇サポートを実施いたしました

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8月2日(土)演劇研修所第19期生公演 朗読劇『少年口伝隊一九四五』にて、視覚に障がいを持つお客様向けの観劇サポートを実施し、8名(そのうち、障がいをお持ちの方は4名)の方々にご参加いただきました。


被爆80年を迎える今年、演劇研修所第19期生が取り組む朗読劇『少年口伝隊一九四五』は、井上ひさし氏が2008年に演劇研修所の研修生のために書き下ろした作品です。本作は、昭和20年8月に原爆によって壊滅的な打撃を受けた広島が、敗戦直後の9月には戦後最大級の枕崎台風の襲来によって更なる惨禍に見舞われるという歴史的事実を背景に、三人の少年の姿を通してその悲劇を語る約1時間の朗読劇です。


研修所公演として初めて観劇サポートを実施するにあたっては、研修生がアクセシビリティについて理解を深めるために、事前にワークショップやレクチャーを実施しました。そして当日は、研修生もスタッフの一員として参加しました。

視覚に障がいをお持ちの方向けの観劇サポート(8月2日(土)開催)

事前舞台説明会

お客様のお出迎え、ご案内の一部は研修生が担いました。最初に受付で本日の流れを簡単にご説明した後、研修生がお客様を劇場内へお連れしました。

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研修生がお客様を劇場内へお連れしました。
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お客様一組につき研修生が一人ずつ担当しました。

開演前にまず小劇場ホワイエにて、小道具に実際に触れていただきながら今回の公演概要等についてご説明しました。解説は演劇研修所第12期修了の中坂弥樹さんが担当し、朗読劇ならではの上演形式や舞台の見どころをはじめ、作品のあらすじや登場人物について丁寧に紹介しました。

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ホワイエにて、まず公演概要等についてご説明しました。
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解説役の中坂弥樹さん。

舞台上に設置されている広島の模型については、今回の説明会のために演劇研修所第21期生が製作したものをご用意しました。街並みの部分は段ボール紙で四角く枠組みを作るなど、実際の模型と同じ手法で再現されており、お客様に手で触れて、当時の広島港の地形等を感じ取っていただきました。また、劇中で雨が降る場面で使用する砂などに直接触れることで、その触感や音を体験していただきました。

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段ボールで作った模型の大きさや形状を、実際に触って感じていただきました。
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劇中で使用する砂は2種類。それぞれ手に取っていただきました。

ホワイエでのご説明の後、後半は小劇場へ移動し、スタッフの解説のあと舞台上を歩いていただきました。まず、舞台と客席が向かい合う舞台形状や舞台のサイズについてご説明し、続いて舞台上に設置された広島の模型や小道具などの位置をご紹介しました。さらに、朗読劇の進行に合わせた音の響きをご体感いただくため、スタッフが舞台の四方から声を出し、音の聞こえ方の違いを感じていただきました。最後にはスタッフと一緒に舞台上を歩きながら、小道具に直接触れ、舞台空間全体の広がりを体感していただきました。

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舞台の大きさや形状について、ご説明しました。
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舞台上に並んだ椅子の両端にスタッフが座り、そこから声を出して空間の広がりを感じていただきました。
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実際に舞台に上がり、椅子の形状などにも触れて確かめていただきました。
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舞台奥の小ステージの形状もご説明しました。

お客様の声

・(観劇サポートについて)また来たいのでご案内いただきたい。
・案内がここまで丁寧なことはなかなかない。
・とても丁寧で良いと思った。気配りもよく、誘導もあるので助かった。

トークイベント

今回、研修公演で観劇サポートを実施したことを踏まえ、障がいの有無を超えて、誰もが演劇を始めとする芸術文化を享受できる仕組みを整える、いわゆるアクセシビリティについて考えるトークイベントを、研修生向けに実施しました。イギリス・ウェールズ地方にあるクルーイド劇場で20年以上の経験を持つプロデューサーであり、本公演で導入した英語字幕サービスにもご協力いただいたウィリアム・ジェームズ氏を招き、演劇研修所からは宮田慶子所長、第1期修了で観劇サポートにも長らく関わっておられる講師の窪田壮史氏が参加し、劇場におけるアクセシビリティについて意見交換を行いました。

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公演終了後、小劇場ホワイエにて実施しました。
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第20期生、第21期生が参加しました。
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ウィリアム・ジェームズ氏、通訳の近藤聡子さん。
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宮田慶子演劇研修所長、講師の窪田壮史氏。


新国立劇場は、多くの方にとって舞台芸術や劇場が身近なものになりますよう、これからも様々な取り組みを続けてまいります。