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インタビュー

  • [演出] ハリー・クプファー
  • [グルネマンツ役] ジョン;トムリンソン
  • [クンドリー役] エヴェリン・ヘルリツィウス

[クンドリー役]エヴェリン・ヘルリツィウス

エヴェリン・ヘルリツィウス
ジ・アトレ6月号より

2014/2015シーズンのオープニングを飾る、日本中のオペラ・ファン注目の新制作「パルジファル」。ワーグナーの最後の大作の新国立劇場初上演には、世界トップレベルのワーグナー歌手が集結する。そのひとりが、クンドリー役を歌うエヴェリン・ヘルリツィウスだ。バイロイトの常連歌手である彼女は、歌だけでなく役への没入も相当なもの。最高の歌唱と役になりきった演技で、今望みうる世界最高のクンドリーが聴けるに違いない。そんなヘルリツィウスに、歌手になるまでの興味深い話と、「パルジファル」の魅力についてうかがった。

混沌とした今の時代だからこそ「パルジファル」は多くの共感を得るのでは

─ヘルリツィウスさんは素晴らしいワーグナー歌手でいらっしゃいますが、声楽家を目指したきっかけは? ハンブルクで声楽とバレエを学んだとのことですか、ダンサー志望でもあったのですか。

ヘルリツィウス(以下H) 歌手になったのは偶然です。子供の頃からクラシック・バレエを習っていて、声楽は成人してから「なんとなく」レッスンを受けていただけでした。ところが次第に歌のほうが自分にはあっていると感じるようになり、バレエ学校の卒業試験を受ける一年前、二十歳のときに声楽に専念する決心をしました。そこからピアノなど、音楽大学に入るために必要な勉強を一から始めて、ダンスのほうは完全にやめました。

 バレエはクラシックよりコンテンポラリーのほうが好きだったので、声楽家にならなかったら今頃ピナ・バウシュの舞踊団で踊っていたかもしれません。

─それはそれは。ダンスとは異質な声楽の世界に飛び込んで、大変なことも多かったのでは?

H ええ。身体の使い方や呼吸法が違うので、最初は戸惑いました。足のつま先が外を向くバレエの第三ポジションでちょこんと立って胸で呼吸するクセが抜けなくて、先生に「どっしりと腰を落として、お腹を膨らませて深く息をしなさい」とよく注意されました。バレエでお腹を出すのは厳禁ですからね(笑)。

─そうですよね(笑)。ところでご両親も何か芸術関係のお仕事をされているのですか。

H 家族で芸術家になったのは私だけで、父は税理士、母は実家がパン屋。音楽ともダンスとも無関係な世界の人たちです。私にバレエを習わせたのは、肥満児で足の筋力が弱く、健康のために医師に勧められたからでした。でもあまりにもおデブちゃんだったので、最初に行ったバレエ教室では入学を断られました。当時まだ五歳でしたが、「この子にバレエは無理!」と言われたことはよく覚えています(苦笑)。

─そんなバレエ少女も、今や世界を代表するワーグナー歌手のひとりなわけですが、あなたは役作りを徹底的になさる方だと聞きました。どのようにして役に取り組んでおられるのですか。

H  新しい役に挑戦するときは、二年間かけてじっくり準備してから本番を迎えるようにしています。バレエと同じで、徐々に自分の身体に役を叩きこんでいくのです。作品の理解を深めるために、さまざまな関連文献も読みます。作品そのものに関する著書はもちろんですが、時代背景について書かれた様々なジャンルの本にも目を通します。私は役になりきって歌うタイプの歌手ですが、舞台が終わったらすべてを忘れてリセットするようにしています。いつまでも役を引きずって生活していたら、気が変になってしまいますからね。

─「パルジファル」は日本では上演機会の少ない作品ですが、ヨーロッパでは各地の主なイースターの音楽祭の慣例演目となっていますね。とはいえ、ヨーロッパで「パルジファル」がこれほどまで上演される理由は、最終幕が聖金曜日の奇跡を描いているからだけではないように思います。

H 「パルジファル」はただの宗教劇ではないから、多く上演されるのでしょう。キリスト教をはじめ、様々な精神世界の題材を用いつつ、宗教とは直接関係のない普遍的な問いを投げかける作品です。宗教や神秘主義の知識がなくても「パルジファル」を理解することは十分可能です。混沌とした今の時代だからこそ、多くの共感を得られるのではないでしょうか。

─「パルジファル」は長年バイロイト以外での上演が禁じられていましたが、ワーグナーはなぜこのような制限を課したのだと思いますか。

H バイロイト祝祭劇場のために書かれた作品だったため、夫亡き後、妻のコジマが同劇場以外での上演を禁じていました。確かにあの劇場の音響は独特で、舞台で歌っていて特別な感動を覚えます。あそこで初めて「パルジファル」の前奏曲を聴いたときは、感激のあまり鳥肌が立ちました。オーケストラの音がピットを覆う屋根に反響して一度舞台に跳ね返ってきてから客席に届くので、ほかの劇場と比べて遅れ気味に歌いださないといけませんが、私は違和感なく歌っています。

音が魔法のように溶け合う第三幕ドレスデン・アーメンの美しさにいつも涙が出そうになります

─ヘルリツィウスさんが演じる役クンドリーは「パルジファル」の主要登場人物のなかのただ一人の女性でありながら、ヴェーヌス(「タンホイザー」)のような騎士を誘惑する“魔性の女”でもないし、ワーグナーの多くのヒロインのようなヒーローを救済する“純粋な乙女”でもありません。クンドリーをどのような女性と考えていらっしゃいますか。

H クンドリーは、この世をさ迷う最も哀れな女ですね。エレクトラや「ヴォツェック」のマリーにも似ていて、恐ろしいほど深い孤独と罪悪感を抱えて生きています。ただエレクトラは死ぬし、マリーは殺されるし、ブリュンヒルデは炎に身を投げるし、ヴェーヌスはあの後で別の男と一緒になるかもしれないし(笑)、まあ、みなさんそれぞれ何とか最後に終わりを迎えて救われるのですが、クンドリーは違います。死ぬことすら許されません。

─第二幕、パルジファルを覚醒させる接吻をする場面で、クンドリーは誘惑しながらも救済を求めていますね。

H はい。クンドリーはクリングゾルの言いなりでありながら、つねに自分を救済してくれる男性を探し求めています。歌うときはこうした彼女の両面性を上手く表現しなければいけません。そして第三幕の洗礼と聖金曜日の情景ですが、ワーグナーはクンドリーの描き方に不満が残っていたようで、確かに「人物像が未完成だ」と感じます。彼は最後に彼女にもう一度長く歌う場面をつくろうと考えていましたが、時間が足りず断念せざるを得ませんでした。最後に彼女を救ってあげたかったのかもしれませんね。

─「パルジファル」は非常に長大な作品ですが、あなたが最も心を惹かれる音楽はどこですか。

H 第三幕すべてです! 音が魔法のように溶け合って、聞き手を恍惚状態にします。絶妙なタイミングで響き渡るドレスデン・アーメンの美しいこと!いつも涙が出そうになります。

─最後に「パルジファル」を待望する読者のみなさんにメッセージを。

H ドレスデンの歌劇場と来日した経験はありますが、新国立劇場で歌うのは初めてですので、私もとても楽しみにしています。忙しい日常を忘れて、この素晴らしい音楽に身を任せてご堪能いただければ幸いです。

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最高の布陣でお届けするワーグナー至高の傑作「パルジファル」。2014年10月2日~14日まで上演。

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