くるみ割り人形

【NEW NATIONAL THEATER, TOKYO 新国立劇場バレエ団 】くるみ割り人形 THE NUTCRACKER

コラム
column

コラム 〜その2〜
知ると楽しい。『くるみ割り人形』
鑑賞ポイントと豆知識!

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第1幕の面白さ

バレエは事前にストーリーを理解してから鑑賞するのがおすすめ。特に『くるみ割り人形』の1幕は、ストーリーをそのまま表現している演技が多く、初めてバレエ鑑賞する方にもわかりやすい。シュタルバウム家の客間の場面は、登場人物が次々と出てくるクリスマスパーティの様子で、舞台のどこを見てもダンサーたちの個性的な演技を楽しむことができる。一見するとバレエ的な見どころがないようにも感じる1幕だが、人形たちの踊り、王子とクララのパ・ド・ドゥ、そして雪の国へと続き、バレエ通にも十分見ごたえのある踊りが随所にちりばめられている。

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くるみ割り人形の由来

クリスマスの時期になると飾られるくるみ割り人形は、ナポレオンをイメージしていると言われる。原作となっている『くるみ割り人形とねずみの王様』をホフマンが発表した当時は、ナポレオン戦争でドイツが荒廃した時期であった。人々は兵士たちが苦しい生活を強いられる中、ナポレオンを模した醜い人形に硬いくるみを割らせることで、鬱憤を晴らしていたと言われる。それがやがて、クリスマスに食べるくるみを割ってくれる愛すべき人形へと変わっていったようである。

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白いバレエの魅力

『白鳥の湖』や『レ・シルフィード』などで見られる、白い衣裳を着たコール・ド・バレエが出てくる作品を「白いバレエ(Ballet blanc)」と言う。コール・ド・バレエは、手足の動きだけでなく、体の方向、顔の向き、縦も横も列を揃えなければならない。脇役だと思ってあなどるなかれ、コール・ド・バレエがバラバラだと、主役に目がいかなくなってしまう。したがってコール・ド・バレエを観れば、バレエ団のレベルがわかるとも言われる。2階や3階の席からは、舞台全体の美しい動きを観ることができるため、白いバレエを鑑賞する際には座席も悩みどころだ。『くるみ割り人形』では、雪の国で白いバレエの美しさを存分に楽しめる。さらに、雪の女王は1幕を締めくくる重要な役で、テクニックも難しく、主役級のダンサーが踊るため、バレエ愛好家にはたまらない見どころ満載の場面である

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第2幕の見どころ

2幕は、ダンサーたちの競演となり、バレエファンにとっては一曲たりとも見逃すことのできない場面である。いろいろな国の踊りを取り入れたディヴェルティスマンは、さまざまな踊りを楽しむことができる。トウシューズを履いて踊るクラシックバレエは、貴族文化から生まれた宮廷舞踊が発展したものだが、土着民の祭りなどから生まれた民族舞踊であるキャラクター・ダンスは、足を踏み鳴らしたり、手を叩いたりして踊られる。古典バレエ作品にはたいていキャラクター・ダンスが組み込まれており、クラシックバレエの途中に入れることで、舞台の雰囲気を変えるスパイスのような役目を果たす。『くるみ割り人形』の2幕は原台本ではお菓子の国であり、スペインはチョコレート、アラビアはコーヒー、中国はお茶、ロシアはトレパックという大麦糖の飴菓子、フランス(葦笛の踊り)はミルリトンという各国のお菓子の名がついているのも面白い。

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(2013年当公演プログラムより)

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