1957年英国ロイヤルバレエの振付家クランコが構想、英国人作曲家ブリテンに委嘱して創られた『パゴダの王子』。その後マクミランも振付けた、英国にゆかり深いこの作品が、ビントレーの手で新たに生まれ変わります。浮世絵などからインスピレーションを得、物語にも独自のアレンジを加えた愛と魔法の舞台が誕生します。日本では全幕初演奏となる、バリ島のガムラン音楽の影響を受けた魅惑的な響きを持つブリテンの音楽や、トニー賞を受賞するなど欧米で高い評価を得ているレイ・スミスの美術も大きな見どころです。 2014年にはイギリス・バーミンガムでも上演予定の『パゴダの王子』。2008年にビントレーの手により世界初演された『アラジン』に引き続き、新国立劇場バレエ団が世界へ発信する作品として大きな注目が集まっています。観る者を別世界に誘うビントレー・マジックにぜひご期待ください!
"パゴダ"とは英語で「仏塔」のこと。語源的には「神像の家」「神に属する家」「釈迦の住む家」などの意味があります。今回の作品では、バリ島のガムラン音楽に魅了された作曲家ブリテンをなぞるように、"パゴダの国"の場面で舞台上に効果的にバリ島の要素を取り入れ、異国情緒と神秘性を高めています。 もともと『パゴダの王子』はともに英国人である振付家ジョン・クランコが構想し作曲家ベンジャミン・ブリテンに曲を委嘱して創作された、まさに初めての英国オリジナルのクラシカルバレエです。1957年、クランコによって英国ロイヤルバレエで初演された後、彼を敬愛するマクミランが新演出を構想し89年に再び同バレエで上演しました。そして来年、2012年、ブリテン生誕100周年(2013年)を前にマクミラン版が英国ロイヤルバレエによる上演が決定されており、現在『パゴダの王子』は注目される作品となっています。 ビントレーは今回の『パゴダの王子』では、日本的文脈の中でストーリーを再構築することを試みました。「日本が日本以外の国とどうつながりを持っているのか、自分自身の意味を問うような構成にしていと思っています。どの国も自分たちがこうありたいというイメージ持っていますが、それは往々にして実際とは違っているものです。それを強調し、複雑ながらも一つのファンタジーとしてつくっていこうと思うのです」。
皇帝は息子の早すぎる死を嘆き、その悲しみから立ち直れない。時は流れ、妹のさくら姫に4つの王国の王が求婚。さらに現れた5番目の求婚者は、実は継母の呪いでサラマンダー(とかげ)に姿を変えられてしまった、さくら姫の兄であった。さくら姫は様々な試練を受けながらもサラマンダーとともに彼の王国パゴダにたどり着き、そこでサラマンダーが兄だと知る。兄妹は力を合わせて王国を元の平和な地に戻そうとするが…。
「菊の王国」のある国の皇帝が、自分の息子である王子を埋葬する。幼い妹のさくら姫は亡き兄を見てすすり泣き、継母である女王は冷めた目でそれを見ている。
時は流れ、宮廷は4人の外国の王を迎え入れる準備をしている。北、南、東、西のそれぞれの王がさくら姫に求婚しているが、女王はもっとも条件のいい王にさくら姫を嫁がせようと躍起になっている。皇帝は自分の息子を失ったことから立ち直れず衰弱しているため、この女王エピーヌこそが今や影の実力者となっている。 4人の王はそれぞれに粋を凝らし、さくら姫に求婚するための貢物を皇帝にさし出すが、さくら姫の心は動かず、彼女を嫁がせようとする女王の努力を拒絶する。最愛の兄との思い出が彼女の心を占めているために、彼女は求婚者を受け入れない。 女王エピーヌは4人の王をなだめ、彼らの富や権力を手に入れようとする。 宮殿の外でファンファーレが鳴り響き、世界中の奇妙な動物を側近に従えた、5人目の求婚者の到着を伝える。この5人目の「王子」は、美醜合わせ持った黄金のサラマンダー(とかげ)であった。さくら姫は、欲深い女王や肉欲的な他の求婚者に服従するくらいならと、このサラマンダーの為すがままに身を任せ、その側近によって宮殿から連れ去られてしまう。
さくら姫はサラマンダーに連れられて彼の王国へと向かう。その途中、「土、風、火、水」の4つの要素をくぐり抜けながら、サラマンダーはさくら姫に試練を与え、悪魔や怪獣の攻撃に耐える勇気を試す。 ついにさくら姫はパゴダの国にたどりつく。そこは奇妙な、黄昏に染まるサラマンダーの王国で、さくら姫は目隠しをされたまま、王子が来るのを待つように言い渡される。 しばらく後に王子が現れる。彼は、自分が魔法にかけられたことを話し始め、魔女である継母がいかにして彼を最愛の父と妹から引き離したか、そしてこのジャングルのあるパゴダの地で、呪われた黄金のサラマンダーとして生きなければならなくなったかを語った。 さくら姫はそれが自分の子供の頃の話であると理解した。自分の兄の恐ろしい運命の真実に力を与えられ、父親を魔女の謀略の軛から救い出すため、さくら姫は「菊の王国」へ戻る長い旅に出る。
宮殿はすべて女王エピーヌの僕となってしまっている。4つの国の王はそれぞれ住居を与えられ、放蕩の限りを尽くしている一方、皇帝は自室に鍵をかけられ、監禁されてしまっていた。 この老皇帝は哀れなことに、さくら姫がいなくなってからというもの精神的にひどく落ち込み、意識も薄れた状態のため、帝国は完全に女王エピーヌの支配下にあった。 さくら姫が旅から戻ってきたとき、幽霊のようになり下がった父の姿を見て、彼女は女王を責めるが、女王は逆にこのわがままな継娘を捕まえようとする。その時サラマンダーが現れ、兄と妹二人して皇帝に対して真実を暴露する。 女王エピーヌは宮殿から追放となり、サラマンダーはもとの人間の姿に戻る。父と息子は再会を喜び、祝福の中で帝国には安寧が戻る。
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