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初日を前に演出・栗山民也氏からのメッセージです。演劇研修所第15期生 朗読劇 『少年口伝隊一九四五』



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▲新国立劇場稽古場より


朗読劇『少年口伝隊一九四五』 初日(8/5)を前に演出・栗山民也氏からのメッセージをお届けします

<語り続けること>

 なにかを静かに思う時に決まって聴く、一枚のCDがある。アメリカのピアニスト、ピーター・ゼルキンの弾く「明子のピアノ」(被爆ピアノ)だ。広島を訪れたピーターは、そのピアノと出会う。爆風で砕けた窓ガラスの破片による傷跡が残っている。1945年8月6日に被爆したそのピアノから流れるバッハの音楽は、人間の生きる静かな呼吸のように聴こえる。

 2017年のノーベル平和賞は、核兵器廃絶の国際キャンペーンを続けた「I CAN」に送られた。その受賞記念コンサートでも、被爆ピアノが演奏された。歴史を継ぎ、その音は「記憶せよ!」と語りかけるように、現代のオスロから世界へと流れた。

 そのピアノの音が今の私たちを強く揺さぶるように、人の心の深みへと届けられる犠牲者たちの声も、また同じだ。食べる、歩く、話す、眠るなど、そんな当たり前のことすべてが、一瞬で奪われてしまった76年前の時間と向き合う。この作品の主題は、人の「いのち」である。三人の少年口伝隊や広島の人たちの声を綴ったこの焼けるような物語を、語り続けねばならない、今この時こそ。

 

栗山民也



【プロフィール】

栗山民也(くりやま・たみや)

東京裁判三部作『夢の裂け目』『夢の泪』『夢の痂』、『日本人のへそ』『雨』など井上ひさし氏の戯曲を多数演出。紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞最優秀演出家賞、毎日芸術賞千田是也賞、朝日舞台芸術賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞。2000年~07年新国立劇場演劇部門芸術監督。2005年4月開所時より16年3月まで新国立劇場演劇研修所長。13年紫綬褒章受賞。


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▼2018年演劇研修所朗読劇『少年口伝隊一九四五』より

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(舞台写真撮影:小林由恵)


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