オペラ研修所ニュース

指揮・星出豊氏インタビュー② オペラ『領事』鑑賞術 partⅡ

《詩を語るがごとく》がメノッティ作品の命


今回上演されるオペラ『領事』は言葉の活かし方がとても大切です。オペラですので、当然台本は会話風に書かれています。しかも普通の理解しやすい英語で語られています。たとえば、同じ単語を何度も繰り返すように書かれていて、わかりやすい英語で語られているので、意味はわかるのですが、その表現の仕方がとても難しい。同じ単語が並んでいても、その意味するところが全く違っていたりします。


例を挙げますと、同じ「Good-bye, Good-bye」という言葉で語られていても、子供に「さようなら」と言うのか、夫婦の間で「さようなら」と言うのかで、意味合いは異なってきます。死にゆく幼子に涙を流しながら「Good-bye」と言う時、ただ単に「さようなら」ということだけが語られているわけではありませんよね。


それがメノッティ作品の命なのです。「語る」という言葉を僕は使いましたが、普通の会話での語りではなく、ここで言う「語る」は、「詩を語るがごとく語る」ということです。会話風に聴こえますが、このオペラでは「詩を語るがごとく」という風に僕はこの作品を創りあげ、メノッティ氏から学んだことを実現していきたいと思っています。


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      ▲リハーサル室より。星出豊氏とオペラ研修所第23・24・25期生


音楽の面では、この作品は1950年に書かれた現代音楽なので和音構成は非常に難しい。難しい音ではありますが、どこか美しく聴こえる。ただ、この作品に取り組む歌い手にとってはとても音が取りにくいのです。

また、この作品を歌う研修生にとっては、オペラというのはまず語らなければ人に伝わらない、という原則的なことを知る機会になると思います。オペラはただ良い声で歌っていてもだめで、メノッティ氏が言うようにそれが本質的な意味で語られる時に、聴く人に初めて非常に強く訴えかけることができるのです。


★『領事』公演日時:7月17日(日)14:00、18日(月・祝)14:00
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