新国立劇場 2013/2014シーズン ピグマリオン

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2013年11月18日

翻訳者雑感その4 ~言葉遊びの話~

ウィンポール・ストリート (ヒギンズ教授の家があるところ)

ウィンポール・ストリート (ヒギンズ教授の家があるところ)

Shaw, then…じゃなかった、承前。コクニー訛りの日本語を適当に作った話を書いた後で劇場へ行ったら、すでに稽古が稽古場から本舞台へ移っていた。すると、ある場面の立ち位置が稽古場と違って予想以上に高いところにあったことに驚いた石原さとみさんが思わず声に出して言った ― 「わっ、たっけぇーー(高い)!」お、完璧な“コクニー訛りの日本語”。やるなぁ、もうすっかりイライザだ。

ところで、このブログを書き始めたときに名前を出した『るつぼ』の翻訳者・水谷八也さんからメールでこんなコメントを頂いた ― 「少々(ショーショー)だなんて、バーナード言ってるんじゃない!」 うーん、さすが。声に出して言ってみたいダジャレ。

ショーの言葉へのこだわりは、訛りの表記だけではなく、ちょっとした表現や言葉遊びにも表われている。例えば、イライザが初めてウィンポール・ストリートを訪ねてきた時のこと。ヒギンズ「名前は?」 ― イライザ「イライザ・ドゥーリトル」 ―

ヒギンズ: イライザ、エリザベス、ベッツィ、ベス、
spacer 森へ出かけた、目当ては鳥の巣、
ピカリング: 見つけた巣の中、卵が4つ、
ヒギンズ:  一人一つで、残りは3つ。

(Higgins: Eliza, Elizabeth, Betsy and Bess,
spacerThey went to the woods to get a bird’s nes’:
Pickering: They found a nest with four eggs in it:
Higgins:  They took one apiece, and left three in it.)

翻訳だとイマイチ伝わりにくいのだが、要するに、あれ? 4人で4つの卵を一人一つずつ取ったら、残りは0でしょ? 何で3つ? と思わせるのがミソ。答え ― イライザ(Eliza)、ベッツィ(Betsy)、ベス(Beth)はすべて「エリザベス(Elizabeth)」という名前の呼び名のバリエーションだから、これは4人ではなく1人の話。一人一つずつ卵を取ったというのは一人で一つ取ったというだけのこと。

ウィンポール・ストリート27Aのあたり ― ただし、番地は昔と違うはず

ウィンポール・ストリート27Aのあたり ― ただし、番地は昔と違うはず

翻訳する際、できるだけわかりやすく意味を伝える努力はするべきだと思うのだが ― 例えば、せめて最後の行を「一人一つずつ取ったら・・・」とするとか ― こういう詩のようなスタイルだと、意味だけじゃなくリズムも重要になる。殊に、2行目の最後など、「巣(ネスト)」(nest)という単語をわざわざ省略した「ネス」(nes’)という表記を使うことでちゃんと脚韻を踏んでいる、というような「意識的」な原文の場合、こちらとしてもそれなりの工夫をして訳す必要があるだろう。この4行を訳す時に何度も声に出してリズムを整えながら微調整していったのだが、喫茶店や電車の中でも作業していたので、回りから不審の目で見られてしまった。(でも、回りの目を気にせず「言葉」に夢中になる男たちの間抜けさ加減が伝われば本望です。)

言葉遊びやダジャレを訳す場合、意味よりも雰囲気を伝えることを優先させることが多い。だが、雰囲気だけでなく意味も大事なセリフの場合、どこかで妥協せざるを得なくなる。今回、訳しきれずに最も唸ったセリフが、アルフレッド・ドゥーリトルの高度(?)な洒落。紳士の身分になった(いや、させられた)ことに文句を言う彼に、ヒギンズ夫人が「遺産の受け取りを断ることもできるんですよ」と言うと、「そこが悲しいとこなんですよ、奥さん。いらねぇやい、って口で言うんのは簡単だけど・・・」このまま何もなしでやっていくのが怖くなって受け取らざるを得なくなった。中産階級の紳士になると、自分じゃ何もさせてもらえなくて、みんなが駄賃目当てに勝手に世話を焼く。それを嘆くセリフが ―

ドゥーリトル: もあや(もはや)、あっぽう(八方)うさがり(ふさがり)だ。どっちか選ぶしかねえ、救貧院の「おかゆ地獄」か中産ケーキューの「おせっかい攻撃」か。

この二つの選択肢がどうしても訳せなかった。原文では ―

…it’s a choice between the Skilly of the workhouse and the Char Bydis of the middle class…

この Skilly というのは救貧院(workhouse)で出されるお粥のこと。Char Bydis というのは恐らくCharwoman(雑役婦)のChar にbiddy(女性)の複数形の変形をつけたもの(つまり、身の回りの世話をする女中)、と意味は解釈できる。だが、これが「between Scylla and Charybdis(スキュラとカリュブディス に挟まれて)」という言い方の洒落だと分かると簡単には訳せなくなる。ギリシャ神話の中で、Scylla (スキュラ)は海の岩に住む6首12足の怪物のこと。Charybdis(カリュブディス)は海の渦巻きの擬人化された怪物のこと。船でこの間を通ることは「前門の虎、後門の狼」みたいなもので、「進退きわまる」という意味。ギリシャの英雄オデュッセウス(中に兵隊を入れたトロイの木馬をトロイアに送り込んだ知将)は、渦巻きに飲まれて全滅するのを避けるためにスキュラの岩の方を通ることを選んで、部下を6人犠牲にした。

救貧院の「スキリー(お粥)」を食べる悲惨さと中産階級の「チャービディス(女中)」に世話を焼かれることのどちらかを選ぶということを、二つの怪物「スキュラとカリュブディス」に挟まれた状態になぞらえて八方ふさがりであることを示す ― こんな洒落訳せっこない! 洒落として訳すのは諦めて、とにかく意味をなんとか表わしてみた。それにしても、当時の観客はわかって聞いていたのだろうか・・・

言葉の専門家ヒギンズ教授でもピカリング大佐でもなく、ドゥーリトルという人物がこういう洒落たセリフを言う、というのが何ともおかしい。実はもう一つ・・・

四つのドラマと出会う・・・秋から冬 -Try・Angle + JAPAN MEETS-

ピグマリオン+3公演 お得なセット券 発売!!

2013/14シーズンは、前半4作品通しのお得なセット券をご用意いたしました。

「OPUS/作品」(9月公演・小劇場)、「エドワード二世」(10月公演・小劇場)、「ピグマリオン」(11-12月公演・中劇場)、「アルトナの幽閉者」(2014年2-3月公演・小劇場)の四作品の特別割引通し券を発売します。(「ピグマリオン」S席・他作品A席)

チケット料金(税込み)

一般:21,000円 (正価24,150円)
会員:18,900円 (郵送申込、先行販売期間)、19,950円(一般発売日以降)

前売開始

2013年6月23日(日) 前売開始
会員先行販売期間:2013年6月2日(日)~ 6月19日(水)

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