2016/2017シーズン オープニング公演 ジークフリート2016/2017シーズン オープニング公演 ジークフリート

INTERVIEW インタビュー ブリュンヒルデ役 リカルダ・メルベートINTERVIEW インタビュー ブリュンヒルデ役 リカルダ・メルベート

父ヴォータンの命に背き、英雄ジークフリートが生を受けるよう守り抜いたブリュンヒルデは、『ワルキューレ』の最後で岩山で眠りにつき、そのジークフリートによって『ジークフリート』で目を覚ます。神から人間の女性へ、『ジークフリート』で大きな変化を遂げるブリュンヒルデを演じるのは、リカルダ・メルベート。世界的なワーグナー歌手の彼女が、大役ブリュンヒルデに挑む意気込みを語る。
<ジ・アトレ4月号より>

2012年「ローエングリン」より 撮影:三枝近志

「神」の残影が少しずつ人間になっていく、そこがブリュンヒルデ役の最も魅力的なところ「神」の残影が少しずつ人間になっていく、そこがブリュンヒルデ役の最も魅力的なところ

――メルベートさんは、新国立劇場で2006年『コジ・ファン・トゥッテ』フィオルディリージ、2007 年『タンホイザー』エリーザベト、2012年『ローエングリン』エルザ、2015年『さまよえるオランダ人』ゼンタに出演されています。劇場についての感想をお聞かせください。
メルベート(以下M) 声が隅々まで美しく届く音響が素晴らしく、新国立劇場で歌うのはいつも楽しみです。オーケストラも舞台スタッフも優秀ですね。熱い情熱を抱えながらも控えめで真面目な日本人のメンタリティーが好きで、東京滞在はすごく快適です。コンサートでもオペラでも、聴衆が確かな耳をもっているのを感じます。
2012年「ローエングリン」より 撮影:三枝近志
――メルベートさんのワーグナー役といえばエリーザベト、エルザ、ゼンタですが、今回は『ジークフリート』のブリュンヒルデを歌われます。新国立劇場の公演直前の4月にベルリン・ドイツ・オペラでも『ジークフリート』に出演されるのですね?
M ええ。初めて歌います。ちょうど準備の最終段階に入ったところで、今も、目の前にあるピアノに楽譜を置いて役と格闘中です(笑)。役というものは歌いこめば歌いこむほど成熟するので、ベルリンで歌った直後に東京でもブリュンヒルデが歌えるのは嬉しいです。特に東京もゲッツ・フリードリヒさんの素敵な演出なので、その点でも楽しみです。ジークフリートを歌うグールドさんは、ハンブルクの『トリスタンとイソルデ』をはじめ、バイロイトやウィーンでもよく共演している馴染みの相手なので、思いきりぶつかっていけます。
――『ジークフリート』でのブリュンヒルデは、「ニーベルングの指環」第1日の『ワルキューレ』とは異なり、神ではなくなり、1人の人間の女性となります。『ジークフリート』でのブリュンヒルデの歌唱と演技は、どのようなところに留意すべきだと思いますか。
M ワーグナー歌手ならいつか歌いたいと夢見る役、それがブリュンヒルデです。でも難しい役です。岩山で炎に囲まれて眠りについている間に神から人間の女性に変わっていき、ジークフリートによって目覚めます。目覚めたときは、まだ神だった頃の記憶が残っているのを音楽が「語って」います。ワルキューレだったときの動機をオーケストラが変容させていくように、舞台上でも気持ちを徐々に切り替えていきます。目覚めた後も彼女の中にはしばらく「神」の部分が残影のように残っていて、少しずつ人間になっていきます。この役で最も魅力を感じるところです。
2012年「ローエングリン」より 撮影:三枝近志
――これは空想の話になるかもしれませんが、ブリュンヒルデは岩山で眠りについている間、どんな夢を見ていたと思いますか?
M 面白い質問ですね(笑)。熱い炎の中に寝かされて、悪夢にうなされていなければいいんだけれど……。本番までに考えておきます!(笑)
――『ジークフリート』は「指環」4部作のなかで、ジークフリートとブリュンヒルデとの愛の喜びというハッピーエンドを迎える唯一の作品ですが、この2人の愛の場面から受け取ってもらいたいことは?
M 確かに幸福の絶頂にいますが、暗雲立ち込める先々の運命を予感するブリュンヒルデは、どんよりとした不安を覚えます。だから「笑いながら愛するわ……ともに笑いながら、没落しましょう! 消え去れ!輝くヴァルハラの世界など!」と歌うのです。神々の黄昏を予見するとき、彼女の中に未来を見通す「神」としての性がまだ残っているのがわかります。

15年の間に、深みのあるドラマティックな声にゆっくり成長しました15年の間に、深みのあるドラマティックな声にゆっくり成長しました

――メルベートさんは、世界の名だたるオペラハウスでワーグナーのヒロインを歌っていますが、ご自身がワーグナー歌手になることを意識されたのはいつ頃ですか?
M 比較的早い段階でドラマティック・ソプラノの役を歌っています。音大を卒業して最初に契約したマグデブルクの歌劇場でのデビューが『ワルキューレ』のロスヴァイセ役でしたが、最初に歌った大役はゼンタです。ゼンタを皮切りに次々とワーグナー作品のオファーが来るようになって、声の成長に合わせて着実にレパートリーを増やしていきました。でも、デビューからワーグナーを本格的に歌うようになるまではモーツァルトを多く歌っていました。声のためにも賢い選択だったと思います。
――レパートリーはドイツものが多いですか?
M はい。ワーグナーのほか、ウェーバーの『魔弾の射手』、リヒャルト・シュトラウスの『カプリッチョ』や『ばらの騎士』、ベートーヴェンの『フィデリオ』といったドイツものを中心に歌っています。年齢、経験を重ねるたびに声は徐々に変わっていきますが、私はこれまでずっと、その時の声に合う適切なオファーに恵まれてきました。そしてマネージャーをはじめ、貴重な助言をしてくれる人たちがいる面でも恵まれていると思います。ありがたいことです。すでに30年歌っていますが、さまざまな役を通じて、ここ15年の間に深みのある声量豊かなドラマティックな声にゆっくりと成長していきました。
2007年「タンホイザー」より 撮影:三枝近志
――メルベルートさんはライプツィヒで学ばれた後、マグデブルク、ワイマールの歌劇場を経て、しばらくウィーン国立歌劇場を中心に活躍されていましたよね?
M ええ、1999年から2005年までアンサンブル歌手として在籍していました。モーツァルト、ワーグナー、シュトラウスからヤナーチェクまで、本当にいろいろな役を歌わせてもらいました。フリーになった今でも、年に1回は必ずウィーンに客演しています。
――現在のお住まいは?
M 両親が住むドレスデンに6年前から暮らしています。夫がデンマーク人なので、彼の実家もウィーンよりドレスデンのほうが近いかなと思って引っ越しました。ザクセン州はわたしの故郷です。
――今後のご予定を教えてください。
M 東京では新国立劇場で今年の11月から12月にかけて『ばらの騎士』の元帥夫人を歌います。2018年にミラノ・スカラ座で『エレクトラ』のタイトルロールに初めて挑戦します。当分ドイツもののスペシャリストとして頑張っていくつもりです。あ! でも、今度ベルリン・ドイツ・オペラとマルセイユ歌劇場でプッチーニの『トゥーランドット』を歌います。これは例外です(笑)。
――最後に、メルベートさんの再登場を待望する新国立劇場の聴衆にメッセージを。
M 大好きな日本のみなさんとの再会を心待ちにしています。私のブリュンヒルデを気に入っていただけると嬉しいです。

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