ダンス「サーカス」 森山開次インタビュー(後編)

ダンサー・振付家として国内外の舞台やテレビで活躍する森山開次が、

子どもも大人も楽しめるダンスとして創作に取り組んでいる『サーカス』。

インタビュー後半では、共演する出演者や、出来上がる舞台の構想を伺います。

<下記インタビューはジ・アトレ4月号掲載>

インタビュアー:稲田奈緒美(舞踊評論家)

キーワードは「さかさま」
固定観念を壊すサーカス×ダンス

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Photo:Uehara Isamu

─今回は様々なジャンルのダンサー、パフォーマーと共演するそうですね。


森山 サーカスは火を噴く大男がいたり、身軽な綱渡りや猛獣遣いがいたりと、一芸に秀でた人の集まりですよね。彼らの芸が大きな見せ場であり、観客の驚きにつながる。一方でピエロ、クラウンと呼ばれる人は踊ったり、演技もできるオールラウンドプレーヤーです。芸の見せ場もあるけど、むしろ曲芸を引き立たせるために、曲芸師と観客の間に入ってつないでいく仲介者のような役割があります。どういう風に観客を作品に引き込むかを考えるのは、ダンスも同じ。だから今回の作品では、バレリーナが舞台の中央でクルクル回転したり、大道芸のパフォーマンスがあるかもしれないし、クラウンのようにお客さんを作品に引き込んでいくダンサーがいるかもしれない。出演者がひとつの役割に固定されず、それぞれの個性を発揮しながら、でもダンスとしてまとまっていく作品にしたいと考えています。


─「サーカス」の世界をダンスで描くのではなく、観客と舞台の間にある関係性を考えながら創っていくのですね。

森山 もちろんサーカスの情景や、ピエロの悲しみが伝わるようなシーンもあると思いますが、もう少し違う夢を見られる情景が出てきたり、今いる世界と夢の世界を行ったり来たりできるようにしたいですね。NHK 教育番組「からだであそぼ」から飛び出した「LIVE BONE」という公演では、舞台を子どもたちに囲んでもらって、いろんな状況の中で踊り、演じながら全国を回ってきました。今回も、小劇場の舞台を客席が囲む配置にしようと考えています。


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Illustration: Moriyama Kaiji

─チラシに使われている可愛いイラストは、森山さんが描かれたものだそうですね。


森山 僕は絵を描いていると時間を忘れる方で、どんどん想像力が湧いてくる。このイラストも描いては切り抜いて、動かしたり、重ねたりしながらアイデアを膨らませています。今、考えているのは「さかさまにする」こと。最初にサーカスって何だろう、と考えたとき、観客にとっては驚き、ドキドキすることだけど、僕にとっては身体的に逆立ちが起源だと思ったんです。小学生のとき体操競技をしていたこともありますが、逆立ちするとなんだか嬉しかった。世の中が反対に見える楽しさとか、重力が逆さになるとか。それで、よく兄と競争していました。今度の作品では、「さかさま」と言ってもアクロバットではなく、ダンサーが寝ていれば、雲みたいにふわふわ浮かんでいるように見えたり、鳥のように飛んで見えるかもしれない。音楽ならメロディを逆さにしたり、言葉なら「トマト」や「しんぶんし」など逆さまにしても変わらないものがあるかもしれない。僕はあまりコミュニケーションが得意ではないけれど、踊りによって人との付き合いができるようになってきました。体で表現することで何かを伝えたり、教えることができるんです。今度の作品も、子どもから大人までいろいろな人に見てもらい、「こんなサーカスもあるのか」って固定観念を壊すような作品にしたいと思っています。


子どもも大人も楽しめるダンス公演『サーカス』は6月20日(土)開幕!
森山開次とジャンルを超えた出演者が創りあげるサーカスの世界、ぜひご期待ください。