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新国立劇場 開場20周年記念特別公演 フィデリオ新国立劇場 開場20周年記念特別公演 フィデリオ

〈新制作〉

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

[全2幕/ドイツ語上演/字幕付]

Message from Artistic DirectorMessage from Artistic Director

2018年 5月20日(日) 14:00 / 5月24日(木) 14:00 5月27日(日) 14:00 / 5月30日(水) 19:00  6月2日(土)     14:00

『フィデリオ』の奥深さに徹底的に迫る『フィデリオ』の奥深さに徹底的に迫る

新国立劇場オペラ芸術監督 飯守泰次郎

『フィデリオ』は、ベートーヴェンが作曲した唯一のオペラです。ベートーヴェンは、『英雄』『運命』『第九』等の交響曲に代表されるように、「音楽によって人々をより崇高な世界へと導きたい」という熱狂的な欲求を持っていた、特別な作曲家です。

当時のオペラは、恋のもつれや嫉妬、裏切りなど、生の人間の姿を等身大で楽しみ、美しい声と歌唱の技巧を堪能するものでした。ベートーヴェンはそのような娯楽性を受け入れることができず、自分の理想に合致する台本を探し求めて苦労しました。そして、フランス革命の時代を背景に流行した「救出劇」と呼ばれる題材の中に、「より良く、より高貴な人間像」を描くにふさわしい、権力闘争に勝利する気高い夫婦愛、という崇高なテーマを見出したのです。

第1幕は世俗的で小市民的な場面から始まりますが、監獄所長ドン・ピツァロが登場すると、物語は一気に絶望と闘争に焦点が絞られていきます。歌とセリフで物語が進行するジングシュピール(歌芝居)と、最終場面のオラトリオのような合唱を、ひとつのオペラとして成り立たせているのは、やはりベートーヴェンの音楽の圧倒的な力です。

男装してフィデリオという偽名を使い、夫を救うために命を賭けて監獄に乗り込むレオノーレが、内心から沸きあがる決意と希望を歌い上げるアリアは、女性に対するベートーヴェンの高い理想像が凝縮されています。「囚人の合唱」では、「闇から光へ」というベートーヴェンの一生を貫くテーマが、感動的な響きで歌われます。第2幕で、長く地下牢に幽閉されているフロレスタンが初めて登場するアリアも、高潔な人格が見事に表現されています。
そして、フィナーレの合唱「素晴らしい妻を得た者はこの歓呼に参加せよ」は、その後もベートーヴェンの中で一生かけて温められ、20年後に作曲する『第九』で交響曲史上初めて用いられた声楽によって、同じ内容が再び高らかに歌われることになるのです。

『フィデリオ』、および交響曲を中心とするベートーヴェンの作品が、音楽史の流れを革命的に変えたことは、もはや言うまでもありません。しかし現代の社会は、「偉大なベートーヴェン」に慣れてしまい、私たちに語りかけるベートーヴェンの力強い本質にはいまだ到達できていないように思われます。『フィデリオ』が作曲されたのは、ヨーロッパにおける時代の大きな転換期でした。私たちも今、同じような転換期に生きています。新国立劇場20周年という節目こそ、彼の唯一のオペラの内容に改めて深く切り込むべき時、と考え、世界のオペラの次世代を担う特別な演出家であるカタリーナ・ワーグナーに演出を依頼しました。皆さまとともに『フィデリオ』の真の奥深さに徹底的に迫り、私の新国立劇場オペラ芸術監督としての4年間を締めくくりたいと思います。

Highlights & StoryHighlights & Story

みどころ&ものがたり

高らかに鳴り響く自由への賛歌。
ベートーヴェン唯一のオペラを
新演出で

正義、自由そして人類愛を崇高な音楽で描いた
ベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』を、
開場20周年を記念し新制作で上演します。

Staff&Cast

スタッフ&キャスト

Interview & Column

『フィデリオ』のテーマはどの時代にも起こりうること

演出 カタリーナ・ワーグナー

新国立劇場開場20周年記念公演の新制作『フィデリオ』の演出を担うのは、カタリーナ・ワーグナー。リヒャルト・ワーグナーの曽孫であり、バイロイト音楽祭総監督である彼女は、新たな観点から作品を解釈することで知られる気鋭の演出家だ。生まれながらの舞台人である彼女が新国立劇場で初めて演出する『フィデリオ』は、どのようなものになるのだろうか。ドラマツルグのダニエル・ウェーバーと共に、話をうかがった。

今こそ『フィデリオ』を掘り下げベートーヴェンのメッセージを熟考すべき

指揮 飯守泰次郎

正義、自由、夫婦愛を讃えるオペラが、新国立劇場に高らかに響く―
新国立劇場開場20周年記念を祝して新制作するオペラ『フィデリオ』。リヒャルト・ワーグナーの曽孫でバイロイト音楽祭総監督である気鋭の演出家カタリーナ・ワーグナーが演出することでも大きな注目を集める公演を、オペラ芸術監督・飯守泰次郎が指揮する。
なぜ今、『フィデリオ』なのか、その思いを語り、オペラ芸術監督としての4年間を振り返る。

ベートーヴェンの音楽の素晴らしさそれが『フィデリオ』の魅力です

ドン・ピツァロ役 ミヒャエル・クプファー=ラデツキー

飯守オペラ芸術監督が任期の最後にタクトを執り、ワーグナーの曽孫でバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナーが演出する、新国立劇場開場20周年記念特別公演『フィデリオ』。
政敵フロレスタンを国事犯に仕立て上げ、監獄に幽閉し、処刑しようとする監獄所長ドン・ピツァロを演じるのは、ミヒャエル・クプファー=ラデツキーだ。
悪役ドン・ピツァロこそ『フィデリオ』の推進力となる役だと語る彼に、ベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』の魅力をうかがった。

『フィデリオ』―ベートーヴェンの音楽が内包する自由への希求

沼口 隆(国立音楽大学准教授)

『フィデリオ』の存在は独特である。いわゆる大作曲家が完成させた唯一のオペラで、現代のレパートリーに確固たる地位を築いている。ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』が比較対象にはなるかも知れないが、上演頻度の点だけを見ても比肩できるとまでは言えまい。

公演日程〈2018年〉

5月20日(日) 14:00  5月24日(木) 14:00 5月27日(日) 14:00  5月30日(水) 19:00  6月2日(土) 14:00

「フィデリオ」
2018年5月20日公演より

新国立劇場オペラ「フィデリオ」
制作発表