2013年8月23日
「くるみ割り人形」ダンサー・インタビュ-②菅野英男
王子 ★ 菅野英男
ポーズ、回転、跳躍など
クラシックの動きの美しさを見せなければ
「くるみ割り人形」の王子役を新国立劇場バレエ団で踊るのは初めてですが、全幕バレエのなかでは僕が一番多く踊っている作品です。モスクワでもキエフでもたくさん踊りました。ですから構えずに安心して踊れる感覚がありますし、思い入れがある作品です。
「くるみ割り人形」の王子は、結局のところクララの夢なんですよね。だから、人間臭さがなく、明確な感情表現がない、イメージが曖昧な役です。でも、お客様に楽しんでいただくには、自分でキャラクター像をしっかり作って踊らないと、伝わりません。ですから僕個人としては、新国立劇場版のようにクララと金平糖の精が別のダンサーによって演じられるバージョンの場合、王子は、クララを温かく見守るお兄さん的なイメージで踊っています。
王子の見せ場はやはりグラン・パ・ド・ドゥですが、クララと金平糖の精が別人の場合、第2幕で初めて登場する金平糖の精と王子のあいだには何もストーリーがありません。そんな2人が一緒に踊るのですから、2人の関係性のドラマではなく、踊りの美しさを見せていかなければと思っています。ポーズや回転や跳躍など、クラシックの動きの純粋な綺麗さを見せることができたら、そしてそれをお客様にお楽しみいただけたらいいですね。
新国立劇場情報誌「ジ・アトレ」8月号より
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