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カリキュラム


【研修1年目】
俳優としての基礎固め−演劇に主体的に関わる

身体と知の共通言語をめざして

1年目は、さまざまなバックグラウンドをもって集まってきた研修生たちが、3年間、 この研修所で学ぶための共通の方法を身につけ、演劇についての認識を新たにする期間です。基礎段階であるとはいえ、この初年度においても、明確なテーマと目標が提示され、その達成に向かってカリキュラムが進められていきます。

1学期に、まず行われるのは、「声と演技」と「身体と演技」です。声と動きは、明晰な日本語を発語し、また柔軟な身体表現をするための、基盤にあたります。この訓練によって、俳優にとって必要不可欠な身体的条件の獲得を目指すとともに、この訓練をみずからに課していく習慣を身につけます。また、1学期の半ばから、「即興」の授業が加わります。あるアクションに対し、まず受け入れて、それに対して俊敏に反応する身体感覚が、求められます。この集中的なトレーニング期間を通して、俳優としての個に内向するのではなく、他者とのコミュニケーションを自在に行える身体と精神の基礎を固めます。

2学期から3学期にかけて、「声と身体」「身体と演技」「即興」の基礎訓練が継続して行われますが、新たな授業として、「朗読」と「シーンスタディ」が加わります。「朗読」は、第一線 で活躍する俳優を講師に迎え、明晰な日本語表現が、いかなる技芸によって支えられているかを体験します。戯曲のみならず、すぐれた詩や散文をテキストとして用い、 文章表現に対する理解力を高め、俳優の身体を通して、テキストが音声として発語され、いかに台詞として実体化されていくか、そのプロセスを探求します。 また、「シーンスタディ」は、栗山民也所長はじめ、現役の演出家の指導によって行われます。長い歴史を生き抜いてきた古典から現代の清新な作品まで、劇文学としてもす ぐれた達成とされる戯曲を取り上げます。ここでは、上演を前提とする舞台稽古にありがちな必要以上の緊張は排除されます。また、演出家の一方的な指示によるのではなく、俳優自らが自主的に考え、発想し、試行錯誤を繰り返して、演技を組み立てていくプロセスが重要視されます。
また、台詞劇のみならず、幅広い演劇ジャンルに対応するための実技として、「歌唱と演技」 「日本舞踊」「ダンス」「ステージ・コンバット」の授業が設けられています。「歌唱」では、単に歌唱法の指導に終わるのではなく、 音楽劇や挿入歌のある作品を想定して行われます。「日本舞踊」は、舞踊を通して、着物を着て動くときの所作の基本を身につけ、和物の作品に対応できる俳優育成を目指します。「ダンス」では、コンテンポラリーダンスの領域も含め、劇中における俳優のダンスについて、初歩的な手ほどきを行います。
また、「ステージ・コンバット」では、和物の立ち回りや翻訳劇のフェンシングなど、 どちらにも対応できるように、ステージ上で行われる武闘のベーシックな様式を実際的な訓練によって学びます。

また、本研修所では、実技偏重の弊害を避け、自ら思考し、 演劇の新しい地平を切りひらく理念を持った知的な俳優を養成します。
座学は、主に「演劇について」「戯曲について」「俳優について」「日本語について」の4ジャンルに分類されます。 「演劇について」では、伝統演劇から前衛まで、舞台表現を支えてきた理論を紹介す るとともに、その実際的な展開について、視聴覚資料を駆使して学びます。「戯曲について」では、台詞の行間に込められているサブテキストを精査するとともに、俳優のみならず、演出家、スタッフが戯曲に向かうとき、どのような読解を行うかが示さ れます。「俳優について」では、単に舞台上の職人ではなく、美しい日本語の継承者 −伝達者としての役割を果たし、ついには時代の象徴ともなりうる俳優のあるべき姿 について講義が行われます。
それぞれの講座は、集中講義形式で行われ、演劇界で活躍する評論家、劇作家、研究者が中心となって担当します。

さらに、本研修所の特色として、「観劇とディスカッション」と「金曜サロン」があります。俳優は基礎段階で、すぐれた舞台表現に接することが重要です。新国立劇場主催公演に限らず、伝統演劇から小劇場まで年間を通して数多くの観劇を行い、その直後に担当講師を囲んでディスカッションを重ねます。現在形で進行する舞台を素材に、単なる技術論にとどまらず、政治・経済・社会をめぐるさまざまな問題について討議します。 「金曜サロン」は、週末の午後に設けられた自由な意見交換の場です。現代演劇をリー ドする劇作家・演出家・スタッフ・俳優のみならず、アーティストや音楽家など、隣接分野の芸術家を迎え、時代の先鋭的な空気を呼吸する機会を設けます。

1年目の主な実技

シーンスタディ
朗読

声と演技
身体と演技
コメディア・デラルテ
身体は喋る
つくらない演技
Pleasure in Play
歌唱と演技

日本舞踊
伝統芸能
ダンス
ステージ・コンバット
マナー
【1年目の主な座学】
演劇について
俳優について
戯曲について
日本語について
観劇とディスカッション
金曜サロン

【研修2年目】
キャラクターを創造する−俳優としての出発

関係性の網目のなかで

研修2年目の中心になるカリキュラムは、「シーンスタディ」です。創作劇、翻訳劇のバランスを考え、また時代や国に偏りのない立場から、総合的な見地から見て重要と思われるテキストが、スタジオ・サポート委員会によって選定され、本格的な「シーンスタディ」に取り組んでいくことになります。
それぞれの俳優が、さまざまな役柄に挑む過程で、俳優としてもっとも大切な自らの キャラクターを、従来の類型にとらわれるのではなく、それ自体を斬新な表現行為と して創造していく意志が求められます。
また、演出家を中心に行われる「シーンスタディ」は、その授業時間で完結するものではありません。同時に、取り上げた場面が、舞台表現として豊穣なものとなるために必 要とされる技芸(ステージ・コンバット、殺陣、歌唱、ダンスなど)を学ぶ授業が「シーンスタディ」と密接な連携をとって構成されます。また、各「シーンスタディ」の最終回には、原則として、自主的な試演を想定しています。そこでは、舞台を支える装置・照明・音響・衣裳などは最小限に抑えられ、演技の実質を観客に向けて提示していく作業が行われます。研修生は、演出家に過度に依存するのではなく、演劇を実践する主体としてこの「シーンスタディ」に関わり、自主的な試演会を通して、演劇の本質とは何かを自ら問いかけていくことになります。
「声と演技」 や「身体と演技」の基礎科目は、研修生それぞれのレベルや課題に応じた個別のトレーニングに発展し、1年目で培われた基礎力をさらに高めていきます。「日本舞踊」の基礎が出来上がったところで、歌舞伎や狂言などの所作、和楽器の奏法を学ぶカリキュラムが加わり「和物」への素養をさらに高めていきます。また、「映像演技について」「オーディション・テクニック」についての短期集中講座が置かれます。

この学年の座学は、「シーンスタディ」との連携によって行われます。「演劇について」では、シーンスタディで取り上げられるその戯曲の上演史、批評史を含めたバックグラウンドを理解するとともに、書かれた時代の思想的な潮流や他ジャンルの芸術の動向を学びます。また、「戯曲について」では、シーンスタディと連携を取りながら、 取り上げた戯曲を担当演出家とは異なる視点から読解する試みを行うとともに、同一の劇作家の他の代表作や同じ時代の対照的な劇作を概説します。自らの演技プランをつくるために戯曲を読むのではなく、戯曲を全体として把握し、複眼的な視点を持つ訓練を行います。
また、補足的な授業として、演劇における商習慣・保険や事故対策・著作権な ど実演家として自立していくために必要な実践的知識を学びます。 
「観劇とディスカッション」「金曜サロン」は、一年次と共通の講座が設定されます。

【2年目の主な実技】

シーンスタディ
朗読

声と演技
身体と演技
歌唱と演技

日本舞踊
伝統芸能
和楽器
ステージ・コンバット
ダンス
オーディション・テクニック
映像演技
【2年目の主な座学】
演劇について
俳優について
戯曲について
日本語について
観劇とディスカッション
金曜サロン
演劇実務

【研修3年目】
役柄を確立する −舞台人として働く

世界演劇のなかで、自分はどこに立っているか

研修の3年目は、発表公演を通じて、一個の舞台人としての表現を確立するための実践的な活動にあてられます。大劇場から小劇場まで、ステージの規模や客席数、舞台を取り巻く環境が異なる劇場での発表公演を通じて、幅広い演技を身につけるとともに、舞台芸術の創造者として、演劇の未来を担うための自覚を高めていきます。

座学では、発表公演のたびに、その公演を行うにあたっての基礎的な知識を学び、現代においてその戯曲を取り上げ、研修生によって公演が行われる意義についての討議が事前に行われます。また、稽古が進んでいく段階では、稽古過程で起こるさまざまな問題を解決するためのクリニックが開かれ、1,2年次で学んだ基礎訓練を見直す立場からコーチングをあわせて行います。そして、発表公演の直後には、演技を中心に技術評を行うとともに、その舞台が上演史のなかで、いかなる意味を持ったか、世界演劇のなかでいかなる位置を占めるかについて、演出家同席のもとに、評論家、研究者、ジャーナリスト、観客代表によるポスト・パフォーマンス・トークが行われます。



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