マリエッタの一座
19世紀末のブルージュ。愛する亡き妻マリーを忘れられないパウルは、妻の遺品に囲まれた「思い出の部屋」に引きこもり、悲しみの中に生きている。パウルは自分を訪ねてきた友人フランクに、街でマリーに瓜二つの女性に出会い、家に招待したと話す。フランクと入れ替わりにその女性が訪ねてくる。彼女はマリエッタという名で、リールから来た踊り子だった。彼女の魅惑的な歌や踊りにパウルは魅了される。マリエッタはマイヤーベーアのオペラ「悪魔のロベール」のリハーサルのために家を出て行き、ひとり残ったパウルはマリーへの愛とマリエッタへの欲望の間で苦悩する中、マリーの亡霊を見る。パウルはマリーに忠誠を誓うが、今度はマリエッタの幻を見るのだった。
幻想の中で、パウルはマリエッタを追い彼女の家の前をさまよっている。そこでパウルはフランクと出くわす。フランクもマリエッタの魅力の虜になっていたのだ。マリエッタの一座が現れ、物陰に潜んだパウルの前で陽気に騒ぐ。興に乗ったマリエッタは、「悪魔のロベール」の尼僧が生き返り男たちを誘惑する場面を演じるが、死者の復活を馬鹿にされたと感じたパウルは怒り、飛び出していく。マリエッタと二人きりになったパウルは、マリエッタの中に亡くなった妻の面影を見てその面影を愛した、君を愛してはいないと伝える。マリエッタは悔しさのあまりパウルを誘惑し、彼はその魅力に屈してしまう。
翌朝、パウルの部屋。パウルとマリエッタは窓から聖人の祝日の行列を見物するが、マリエッタはパウルの敬虔な信仰心を茶化し、妻の遺品に囲まれた生活を嘲笑する。怒ったパウルは、マリーの遺髪を首に巻いて踊るマリエッタを絞め殺してしまう。暗闇が立ちこめ、そして徐々に明るくなっていき、パウルは夢から目を覚ます。マリエッタが忘れ物の傘とバラの花をとりに立ち寄り、続いて友人フランクが訪れる。全ては幻想だったのだ。パウルは、死者への想いと決別し、友人と共に死の都ブルージュを立ち去ることを決意する。
写真:フィンランド国立歌劇場公演より©Stefan Bremer