ベルギーの古都ブルージュを舞台に、愛妻を亡くした主人公パウルが妻と瓜二つの女性と出会い、倒錯のひと時を過ごす物語を幻想的に描いた「死の都」。かねてから上演を望む声が多かった傑作オペラがついに新国立劇場に登場します。コルンゴルトは20世紀初頭、ウィーンの神童として人気を博した作曲家で、1920年23歳の時に発表した「死の都」は大成功を収め、ヨーロッパ中のオペラハウスでレパートリーとなります。しかしながら、ユダヤ系であったコルンゴルトはナチスの迫害を逃れその後アメリカに亡命、映画音楽の分野で名声を築き、クラシック音楽界からしばらく忘れられた存在となります。現在ではコルンゴルトの再評価が進み、特に代表作である「死の都」は、世界中でこぞって上演されるようになりました。コルンゴルトの音楽は、R.シュトラウス、マーラーを思わせる後期ロマン派の作風で、甘美な旋律と豊潤な管弦楽が魅力。オペラファン必見の公演です。
本公演の演出は、気鋭の演出家として世界的に注目されているホルテン。フィンランド国立歌劇場で好評を博した美しく幻想的なプロダクションにより上演いたします。指揮は12年「ルサルカ」の名演奏が記憶に新しいキズリンクです。難役揃いのキャストには、理想的な歌手陣を迎えました。パウル役のケールは世界でも指折りのヘルデン・テノールで、なかでもこのパウル役は自家薬籠中のもの。マリエッタ/マリー役は13年「タンホイザー」エリーザベトで、その豊かな美声を披露したミラー、フランク/フリッツ役は、ヨーロッパで幅広く活躍する実力派バリトンのケレミチェフです。「死の都」新国立劇場初上演に相応しい強力な布陣にどうぞご期待ください!
1897年、オーストリア=ハンガリー帝国領のブリュン(現チェコのブルノ)に生まれ、後にウィーンに移り住む。幼少期より神童ぶりを発揮し人気作曲家として活躍、1920年に初演された「死の都」でヨーロッパにおけるコルンゴルトの名声は決定的となる。1930年代よりハリウッドで映画音楽に携わり、アカデミー賞を2度受賞。1938年ナチスの迫害を逃れアメリカに亡命。第二次世界大戦後ウィーンに戻るが、クラシック音楽の分野で再び成功することはなくアメリカに帰国。1957年、失意のままハリウッドで60年の生涯を閉じる。1970年代よりコルンゴルトの再評価が進んでいる。