演劇公演関連ニュース

2026/2027シーズン 演劇 ラインアップを発表しました!

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本日2026年2月16日(月)、新国立劇場内にて2026/2027シーズン ラインアップ説明会が開催され、次シーズンの演目が発表になりました。

2026/2027シーズン 演劇 ラインアップ

巨匠とマルガリータ

ミノタウロスの皿

ナハトラント~ずっと夜の国~


見えざる手


Ruined 奪われて


抱擁


エンジェルス・イン・アメリカ

プロジェクト

集団創作による新作

グリーン・リバイバル・ラボ

ドラマクエスト ─物語の探求

上村聡史 次期演劇芸術監督からのメッセージ

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2026/2027シーズンより、芸術監督に就任いたします。私事ではございますが、初めてこの劇場に関わったのは、2005年の演劇公演『花咲く港』の演出助手でした。それからおよそ二十年近く経ち、まさか自分がこの職に就くとは夢にも思っていませんでした。ですが近くで見てきた芸術監督諸先輩たちの功績をお手本としながら、私自身の個性や感性を時代の変化と照らし合わせ、その発想が劇場運営に反映できるよう努めて参りたいと思います。何よりも、公共劇場としての役割を十分に果たす空間性を念頭に置きながら、昨今の世界の在り方を見つめ、より多くの方が交流できる場を創造できればと思います。

演劇は、紀元前から始まったギリシャ劇、シェイクスピアを中心に花開いた中世演劇、社会の在り様をリアリズムの視点で捉えた近代演劇、そして、表現の可能性を多彩な劇言語で広げてきた現代演劇と、その時代と呼吸しながら今も絶えることなく発展し続けてきました。それは先人の作り手たちが時代と世界に向き合い、多くの観客がライブパフォーマンスから感動を得て、作り手と観客がともに獲得してきた創造の喜びが、発展の土台になっているように思います。インターネットやSNSの普及に伴い、著しいスピードで価値観が多様化していく昨今、演劇もまたさらなる進化が期待できます。言葉と身体が語りかける物語こそが主となる演劇は、今を生きる私たちの情感を揺さぶりながら、より視野の広い価値観を提供し、未来を培う想像力を提供しなくてはなりません。そのような意味においても、在任中の大きな指針として、時代の変化とともに演劇の進化、つまり『物語の更新(アップデート)』をしていくことを目標に掲げていきたいと思います。そのうえで、以下の4つの視点を基盤に据えながら、プログラムを構成していきます。

1. 現代的、国際的、批評的
書き下ろし新作、古典・近代戯曲などの上演を問わず、どの演目においても、問題提起すべき事象を意識した現代性、グローバルスタンダードを見つめた国際性、演劇が社会における役割を果たす批評性、を踏まえた作品作りを目指します。

2. クロスオーバー、他ジャンル(音楽、ダンス、文芸、漫画、映像など)とのつながり
これからの新しい表現方法を展開していくために、他ジャンルとの交流を積極的に図った作品作りを目指します。

3. 新しい才能との出会い
次代の演劇の発展のため、出演者・スタッフともに、新しい才能の登用、そして交流できる場を目指します。

4. 消費で終わらないパフォーマンス
舞台芸術が、社会生活と共にあるためにも、舞台空間を構成する素材・資源等の長期活用や、再演作品の上演形態を工夫し、消費で終わらない舞台芸術を目指します。

以上4つの視点を踏まえ、1年目のシーズンの開幕を飾るのは『巨匠とマルガリータ』。ミハイル・ブルガーコフの名著を、主人公"巨匠"を小説家から劇作家に翻案したエドワード・ケンプのヴァージョンで上演します。"奇想天外"と評される長編小説ですが、「原稿は燃えない」という名台詞から語られる、権力に立ち向かう芸術のあるべき姿、社会における善と悪といったテーマを中劇場において、オープニング作品にふさわしいスペクタクルをもって描きます。11月の上演で、演出は新芸術監督の私が担います。

続いて12月は、様々なジャンルとのクロスオーバーを目指す作品、『ミノタウロスの皿』をお送りします。藤子・F・不二雄の短編漫画をもとに、ダンスカンパニーCHAiroiPLINを主宰するスズキ拓朗さんの演出で、"命を食するとは"といった食と倫理の問題を、ダンスや映像を駆使した演出でお届けします。また本公演は4歳以上の未就学児からお楽しみ頂ける、幅広い観客層にむけてのクリエーションになります。

27年3月からは、「現代的、国際的、批評的」をテーマに掲げた4作品が並びます。3月は、ドイツの現代作家マリウス・フォン・マイエンブルクの『ナハトラント~ずっと夜の国~』。先進国を中心に巻き上がっている移民の排他主義といった右派ポピュリズムを風刺した家族劇になります。諧謔的なシーンも多く、皮肉の効いた作品になるでしょう。演出は柳沼昭徳さんが務めます。4月は、イスラム系テロ組織によるアメリカ人銀行家の誘拐に端を発するアヤド・アクタルの傑作『見えざる手』。"金融取引"をテーマに、世界経済から垣間見える"分断"をサスペンスフルに描きます。続いて5月は、ピュリッツァー賞受賞作品『Ruined 奪われて』。コンゴにおける女性の実態に基づくセンセーショナルな物語です。今なお続く、男性至上社会を強く批評しながらも、女性たちの生き様をユーモアと力強いタッチで描きます。演出には当劇場『どん底』『貴婦人の来訪』で高い評価を得ている五戸真理枝さんが担当します。6月は生と死の選択をテーマに、山田佳奈さんが書き下ろす新作『抱擁』を上演します。母と娘の確執を軸に、生命の誕生と終焉について、日本の視点と国際的な視点を交えながら展開する力作になります。

7月は、消費で終わらない舞台芸術、すなわち社会の持続性に伴う資源の有効活用を目指す作品として、『エンジェルス・イン・アメリカ』を上演します。新国立劇場での上演版を踏まえながらも、過去上演された『レオポルトシュタット』『白衛軍 The White Guard』(ともに美術・乘峯雅寛)の舞台美術を一部使用、そして舞台形状も23年の初演時より変化させ、出演者の演技やスタッフのアイデアといったアナログ的手法に注力した創作になります。また本作の舞台形状と舞台美術をそのまま使用する形で、「グリーン・リバイバル・ラボ」と称し、2030年までの毎シーズンひとつの演目は、長編やダブルビルを上演する予定です。

上記作品以外にも、世界各地で話題になっている演劇ムーブメントや、新しい形式の戯曲を発見・考察するプロジェクト「ドラマクエスト ─物語の探求─」を立ち上げて、トークイベントやリーディングイベントといった様々な形で、現在形の演劇を皆さまに提供していきたいと考えています。

そして「新しい才能との出会い」の実現に向け、新しい形のクリエーションを目指す公募型劇作者コンペ作品を、27/28シーズンに予定しています。今まで新国立劇場では、日本人劇作家による新作を、芸術監督からの委嘱によって制作してきました。一方、日本演劇における新作の多くは、劇団における創作が主流となっています。これは、劇団創作の集団性といった良質的な側面が、日本演劇を支えてきたといっても過言ではありません。そのような集団創作の可能性を新国立劇場という場において展開するため、劇作者を公募し、加えてその作品の出演者をフルオーディション形式でキャスティングし、集団創作による新作の上演を行うプロジェクトをスタートします。実際の上演は、28年4月頃を目指しますが、クリエーションの初動を鑑みて、本年(2026年)上半期中に詳細を発表いたします。

また、劇場は人が行き交うことで成立する場所です。より多くの皆様が交流することを叶えるためにも、演劇部門において、劇場に足を運びやすい価格帯のチケット料金を提供する「Theatre Day」をいくつかの演目において試みる予定でいます。具体的な内容は検討段階ですが、幅広い価格帯、そして格安料金日を設けることなどで、観劇体験を活性化することができればと考えております。

最後になりましたが、日本での公共劇場における芸術監督制度の歴史は、ヨーロッパに比べまだまだと言えます。しかしヨーロッパ各国の国立劇場も、それぞれの文化や生活習慣、言語感覚、歴史の流れと密接につながっていて、各国それぞれの独自性があります。古典から現代作品まで多彩なラインアップを並べる国立劇場もあれば、芸術監督の個性を活かし、交代ごとにガラッとテイストを変える国立劇場もあります。
"日本にとっての現代演劇の国立劇場の役割とはなにか"。この命題に対し、国際社会の発展と、現代日本の社会性の双方を鑑みながら、明確にコンセプトを打ち出していくことができればと思います。そのためにも実際に創り手と観客が集まる劇場全体が、精神的にも身体的にも開放された環境であることを維持できるよう、責任を持って監修していく所存であります。どうぞ、よろしくお願いします。

プロフィール

1979年、東京生まれ。フリーの演出家として活動。2026年9月より新国立劇場演劇芸術監督。09年、文化庁新進芸術家海外留学制度において1年間イギリス・ドイツに留学。第22回・第29回読売演劇大賞最優秀演出家賞、第17回千田是也賞、第56回紀伊國屋演劇賞を受賞。近年の主な演出作品に、『みんな鳥になって』『グッバイ、レーニン!』『夜は昼の母』『My Boy Jack』『野鴨 -Vildanden-』『ガラスの動物園』『森 フォレ』『Oslo(オスロ)』など。新国立劇場では、『スリー・キングダムス Three Kingdoms』『白衛軍 The White Guard』『デカローグ』『エンジェルス・イン・アメリカ』『斬られの仙太』『オレステイア』『城塞』『アルトナの幽閉者』を演出。