演劇公演関連ニュース

演劇『イロアセル』にて目や耳に障害を持つお客様への観劇サポートを実施いたしました

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11月21日(日)、23日(火・祝)、27日(土)13時の演劇『イロアセル』にて、目や耳に障害を持つお客様向けのサポートを実施いたしました。

今回、耳に障害をお持ちの方向けのサポートには8名、目に障害をお持ちの方向けのサポートには35名、総勢43名のご参加をいただきました。(そのうち、障害をお持ちの方は20名)

サポートの様子とサービスの内容、そして今後の導入が期待される施策についてご紹介いたします。


耳に障害を持つお客様向けの観劇サポート(11月23日(火・祝)開催)

手話通訳などの受付時のサポート

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手話通訳
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指差し会話表

耳に障害を持つお客様向けの観劇サポートの受付には、手話通訳者と要約筆記者がおります。

事前に準備した文章を指さしながら受付のご案内を行いますが、手話・要約筆記によってその場でのご質問にもスムーズにお答えできることにお客様も安心されているご様子でした。

耳に障害を持つお客様にとっては口元の動きが大変重要であるため、スタッフはご説明のときに限って十分な対策をした上でマスクを外したり、透明で口元が見えるマスクを使用したりしています。

新国立劇場では、観劇サポートの実施に関わらず、案内係が指差し会話表や筆談具を準備しております。

お困りの際は、気兼ねなくお近くの係員までご質問ください。

ポータブル字幕機の貸出

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音の情報を⽂字でご覧いただける、ポータブル字幕機をお貸し出しいたしました。

字幕機には、俳優のセリフに加えて、場面の切り替わりに流れる音楽や効果音の情報も表示されます。


字幕は進行に合わせて自動的に切り替わり、お客様自身での操作は必要ありません。首に下げるストラップや膝上で字幕機を安定させるためのクッションもお貸し出ししています。

言葉に色がついて目に見える設定の本作は、舞台上でも登場人物に対応した色の演出がありました。

舞台上の様子と字幕で表示される音の情報を同時に追うことで、さらに物語に集中してお楽しみいただけたのではないでしょうか。


目に障害を持つお客様向けの観劇サポート(11月21日(日)、27日(土)開催)

事前舞台説明会

開演前の舞台説明会では、舞台装置の模型や小道具を触っていただきながら、舞台をお楽しみいただく助けになるよう、今回の物語の設定や演出についてご説明を行いました。

まずはホワイエで、客席やステージの形状を触れる模型で確認していただきました。

今回の舞台は奥に進むにつれて幅と高さが狭くなる不思議な形です。説明役は「台形のような形」「側面には俳優が出入りする隙間があります」などの言葉でお伝えしました。

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客席の全体像とともに、ご自分の座席の
位置を把握していただきました。
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「最奥の幅は3m」など具体的な数字とともにご説明しました。

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俳優の立ち位置によっての声の響きの変わり方を
感じていただきました。


その後は、実際に作品が上演される小劇場客席にご案内し、舞台上からの声の聞こえ方を実感していただきながら、舞台の様子をご説明しました。

説明役の窪田壮史さんが歩数を数えながら舞台上を歩き、舞台の大きさをお伝えしました。舞台手前のスロープは、幅や長さのほかに「丘に登ってくる、などの表現に使われます」との解説も行いました。

そして再度ホワイエに戻り、模型や小道具を触っていただきました。

『イロアセル』は島民の言葉に色がつく島が舞台となっていますが、その色の濃度を調節する架空の機械「ファムスタ」、棒を使った演技で競う同じく架空の得点競技「カンチェラ」が登場します。

目に障害をお持ちの方にもこのような架空の設定をお楽しみいただくべく、工夫してご説明を行いました。

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「ファムスタ」はどのように使われるのか、
使う時の動作とともにお伝えしました。
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「カンチェラ」の道具の「カンチェラ棒」です。
実在のスポーツに例えながらご説明しました。
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触れる模型には人間の模型も付属し、
縮尺を感じていただける造りです。
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囚人の檻の形状を確かめていただきました。

客席でのご説明前に舞台の模型を触ったお客様からは「スロープの形状がよく掴めていないのでもう一度確認したい」とのお声が。再度模型に触れていただいて補足のご説明をした後は、模型・舞台上からの二つの説明がうまく組み合わさり、より深いご理解につながったのではないでしょうか。

上演中のリアルタイム音声ガイド

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片耳にイヤホンを挿す形状です。

そして、上演中にはリアルタイム音声ガイドのサービスをご提供しています。

このサービスは、舞台上の照明や装置・小道具、俳優の動作について別ブースからナレーターがリアルタイムに行う解説を、実際の舞台の生音と同時にイヤホンでお聞きいただけるものです。

上演直前には作品の見どころを解説し、上演の最中には役者の体勢や舞台上への出入りを音声でご説明しています。

間髪入れず交わされる会話が生み出すユーモアも本作の魅力の一つですが、ナレーターの持丸あいさんによる今回のガイドでは、的確にその会話の合間を縫うようにして、しっかりと動作の解説が行われていました。



今後の導入を検討中のサービス

ヒアリングループ

より様々なお客様に舞台芸術をお楽しみいただくため、新国立劇場ではこれまでご提供してきたサービスに加えて、新しいサービスの導入も目指しています。

「ヒアリングループ」とは、補聴器等を使用されている方に音声を効果的にお伝えするための設備です。

磁気誘導を行う特別なケーブルでぐるりと囲った範囲内で補聴器もしくは専用の受信機を使用することで、音声を聞きやすくする効果、ノイズを少なくする効果が期待されます。

先日、小劇場とオペラパレスでそれぞれ導入に向けての試行が行われました。今後の公演での導入にどうぞご期待の上、続報をお待ちください。

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客席の一部区画をケーブルで囲っての導入を想定し、
テストを行いました。
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オペラパレスでの試行では、補聴器をお使いの方に
モニターとしてご参加いただき、聞こえ方のご意見を伺いました。



観劇サポートは2022年5月『ロビー・ヒーロー』でも実施予定です。日時など詳細は後日発表いたします。

新国立劇場は、多くの方にとって舞台芸術や劇場が身近なものになりますよう、これからも取り組みを続けてまいります。