演劇公演関連ニュース

演劇『東京ゴッドファーザーズ』にて目や耳に障害を持つお客様への観劇サポートを実施いたしました

5月22日(土)13時、23日(日)、24日(月)の演劇『東京ゴッドファーザーズ』(会場:新国立劇場 小劇場)公演にて、目や耳に障害を持つお客様向けの観劇サポートを実施いたしました。

この観劇サポート公演は、より様々なお客様に、より舞台芸術を楽しんでいただくことを目指して、新国立劇場が2018年から続けているサービスです。
7回目の開催となる今回は、22日(土)に8名、23日(日)・24日(月)合計で33名、総勢41名のご参加をいただきました。(そのうち、障害をお持ちの方はのべ24名)

情報量の多い本作品を余すところなく味わっていただくため、一層の工夫を凝らした今回の観劇サポートの様子とその内容をご紹介いたします。


耳に障害をお持ちの方向けの観劇サポート(5月22日(土)開催)

ポータブル字幕機の貸出

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音の情報を文字でご覧いただける、手持ち型ポータブル字幕機をお貸し出しいたしました。

俳優のセリフが劇の進行に合わせて表示されるのはもちろんのこと、

場面の切り替わりを演出する効果音、開演前・終演後のご案内のアナウンスの内容も字幕機でご確認いただけます。

本作はアニメーション映画の舞台化。場面は目まぐるしく替わり、多くの人物が入れ代わり立ち代わり登場します。このスピード感あふれる舞台を、文字の色、太さなどを使い分けることにより、わかりやすくお伝えするようにしています。


字幕機には首から下げられるストラップが付属しております。また、膝上に置きやすくするためのクッションもお使いいただけます。

手話通訳などの受付時のサポート

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受付では、手話通訳者と要約筆記専門スタッフがチケットや字幕機のお渡しをサポートいたしました。

また、上演時間など注意事項については受付係が事前に準備した文章を指差しながらお話しします。



目に障害をお持ちの方向けの観劇サポート(5月23日(日)、24日(月)開催)

上演中のリアルタイム音声ガイド

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リアルタイム音声ガイドとは、舞台上の照明や装置・小道具、俳優の動作について別ブースから"生放送"で行われる解説を、実際の舞台の生音と同時にイヤホンでお聞きいただけるシステムです。

作品のドラマをより深くご理解いただくため、ナレーターの持丸あいさんがセリフや効果音にかぶらないように、舞台上の様子を丁寧に簡潔に解説しています。

この解説の内容は、障害当事者の方にモニターとして事前にリハーサルへの参加をお願いし、いただいたフィードバックをもとに練られたものです。

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事前打ち合わせの様子。
順を追って作品を振り返って、目に障害をお持ちの方にとって、
ガイドがどう感じられたかを確認していました。

「このシーンでは誰が登場しているのか認識できなかった」「ガイドでは笑いのポイントが分かりにくかった」などたくさんの具体的なご意見をもとに、観劇サポート開催当日に向けて、ナレーター・スタッフ一同、改善をしました。

今回特に工夫がされたのは、舞台中央が昇降して舞台上に"2階"部分をつくることができる特徴的な装置についてでした。
モニターの方からは「装置が『元の位置に戻る』という説明では変化の様子がイメージしにくい」とのお言葉があり、どんな表現が最適か話し合いました。


最終的には、舞台事前説明会で説明役を担う窪田壮史さんによる、『フラットに戻る』の語を使い、それはどのような状態かを説明会で模型を使ってお話しすることで、お客様との共通言語をつくろう、との案が採用されました。

事前舞台説明会

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今回の舞台説明会は、会場である小劇場のご説明からスタートしました。
説明役の窪田壮史さんが舞台をぐるりと回りながら話し、舞台の大きさを音でお伝えします。

今回は舞台の両側に客席が配置されており、俳優が背を向けてしゃべることもあるため、背を向けた時の聞こえ方も事前に確認していただきました。
お客様は声の響きから会場の様子を感じ取り、本番の舞台をイメージなさっていました。


次にホワイエに移動して、作品の設定やあらすじのご紹介をしました。
そのあとは感染対策のビニール手袋をご着用の上、数人のグループに分かれて、順番に舞台装置の模型や劇中の小道具を実際に触っていただくタッチツアーです。

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お客様からのご質問は、装置の移動の向きなど
細かなディテールにまで及びました!
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クライマックスのカーチェイスの場面で活躍するハンドルを
握っていただくと「これ本物?」という驚きのお声が。

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形だけでなく、色やカートに入った荷物の解説も。
風車が回る効果をうなずいて聞いていらっしゃいました。
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赤ちゃんが入るバスケットです。持ち手の形状を確認して
持ち上げていただきました。


事前の打ち合わせ通りに『フラットに戻る』の語を使うなどお客様とのイメージの共有も万全。ご参加の皆様は舞台上を彩るアイテムを通じて、作品の世界観を事前にイメージしてご観劇いただくことができたようです。

説明会の他にも、観劇サポート公演ご参加の皆様へは、あらすじや見どころ、出演者自身による役どころの紹介を収録した音声プログラムをご希望に応じて提供しております。

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なお、今回も盲導犬をお連れの方にご参加をいただきました。

勿論、通常公演日でも盲導犬をお連れになってご観劇いただけます。
ぜひご一緒にご来館ください。

新国立劇場は、さらに様々な人に舞台芸術を身近に感じていただけるよう、これからも環境整備とサービスの向上に努めてまいります。