2019/2020シーズン シリーズ 「ことぜん」三作品 詳細決定!

芸術監督・小川絵梨子の掲げる「ことぜん」とは

2019/2020シーズンの幕開けはこの「ことぜん」シリーズ3本からスタートします。「ことぜん」とは個と全という意味合いで、個人と国家、個人と社会構造、個人と集団の持つイデオロギーなど、「一人の人間と一つの集合体」の関係をテーマとしています。

閉塞感ある全体主義やその圧力に取り込まれる「個人」。しかしながらその「個人」が集まり「全体」を創りだしてしまう......。そんな切っても切れない個と集合体の関係性や、相互作用、その中での軋轢や葛藤を、三人の演出家がそれぞれの作品でそれぞれの視点から描きます。上演作品は日本初演作品を含み全て新翻訳です。演出にはそれぞれ新国立劇場初登場の五戸真理枝、瀬戸山美咲を迎え、さらに芸術監督の小川絵梨子も担います。

   

                                                 

2019年10月

シリーズ【ことぜん】Vol.1

  どん底 [新訳上演]

作:マクシム・ゴーリキー

翻訳:安達紀子

演出:五戸真理枝

出演

立川三貴 廣田高志 高橋紀恵 瀧内公美 泉関奈津子 堀 文明 小豆畑雅一

伊原 農 鈴木亜希子 谷山知宏 釆澤靖起 長本批呂士

 クリスタル真希 永田 涼 福本鴻介 

原金太郎 山野史人

公演詳細:https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_lower_depths/

                                   

〈作品〉

 2019/2020演劇シーズン、シリーズ「ことぜん」の第一弾は、ロシアの作家ゴーリキーの『どん底』を上演します。この作品は我が国の演劇界において、1910年(明治43年)に『夜の宿』と題して初演されて以来、百年を経た現在でもたびたび上演され、数々の名舞台を産み出してきた名作です。母国ロシアでの初演が1902年だったことを鑑みると、そのわずか八年後の日本初演も画期的であれば、その後上演され続けてきたことも驚異的で、我が国で最も愛された西欧戯曲のひとつと位置付けることも可能です。

 その、いわば慣れ親しんだ戯曲に果敢に挑むのは、文学座の新鋭、五戸真理枝です。小川絵梨子監督の「ことぜん」の企画に対して、五戸は『どん底』という作品の中に「社会と人間」というテーマを見出し、新しい視点でその本質を突こうとしています。若い感性で描く21世紀の『どん底』にご期待ください。

              

                

〈あらすじ〉

 20世紀初頭のロシア。社会の底辺に暮らす人々が集う木賃宿。様々な職業の人間が暮らしている。

 早春。それぞれが思い思いの朝を迎えていた。商売道具の手入れをする者、まだ寝ぼけまなこの者、病に臥せっている者、そして他愛もない無駄話に興じている者。また、きょう一日が始まったのだ。

 そんないつもと同じ日常にひとつの波紋が訪れる。新しく住人になった巡礼、ルカが現れたのだ。60歳を越えたこの男は事あるごとに、住人に「説教」を垂れる。虚実判然としないその「説教」はほかに行き場のない彼らの福音となるのか、或いは絶望をもたらすのか。やがて、住人たちの間に些細な軋轢が生まれ、ひとつの事件が起こる...。

                    

                     

                         

                       

2019年11月

シリーズ【ことぜん】Vol.2

  あの出来事 [日本初演]

作:デイヴィッド・グレッグ

翻訳:谷岡健彦

演出:瀬戸山美咲

公演詳細:https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_events/

※出演未定

                        

                            

〈作品〉

 シリーズ第二弾は、デイヴィッド・グレッグ作『あの出来事』。今年3月日本でも公開された映画『ウトヤ島、7月22日』の題材でもある、2011年にノルウェーのウトヤ島で起きた、極右青年による銃乱射事件をモチーフに描かれたフィクションです。

登場人物は、たった二人。生き残った合唱団の女性指導者に対し、犯人の少年役の俳優が、他のすべての役を演じます。合唱団と伴奏者は、劇中で歌うだけでなくコロスとして参加する面白いスタイルで、2013年にエジンバラ演劇祭で初演、高い評価を得た本作の日本初演となります。

 新国立劇場初登場のミナモザの瀬戸山美咲が演出、本作の英国公演も見ている谷岡健彦が翻訳をつとめます。

          

                 

〈あらすじ〉

教師をしながら合唱団の指導者も務めるクレア。彼女がいる合唱団は、移民や難民、子供を持つ母親など、さまざまな立場の人たちを受け入れていた。ある日、練習中に突如入ってきた少年が銃乱射事件を起こし、たくさんの人が亡くなる。生き残ったものの、目の前で団員が殺されるのを目撃したクレアは、それ以来、魂が自分から離れてしまったような気持ちになってしまう。クレアは自らの魂を取り戻すべく、犯人の少年を「人間」として捉えようと、自分や少年の関係者との対話を試みるが・・・。

           

                                

                             

                                

                                     

2019年12月

シリーズ【ことぜん】Vol.3

タージマハルの衛兵 [日本初演]

作:ラジヴ・ジョセフ

翻訳:小田島創志

演出:小川絵梨子

出演:成河 亀田佳明

公演URL:https://www.nntt.jac.go.jp/play/guards_at_the_taj/

                           

                                         

〈作品〉

 新国立劇場で2015年12月に上演された『バグダッド動物園のベンガルタイガー』の作家であるラジヴ・ジョセフが同年6月に初演した『タージマハルの衛兵』を、ことぜんシリーズの第三弾として日本初演いたします。

タージマハル建設中のムガル帝国。その完成前夜から始まる物語の登場人物は、フマーユーンとバーブル、たった2人。タージマハルの建設現場で夜通し警備をする、幼馴染でもあるふたりの会話からは、美と権力、支配者とレジスタンス、国への忠誠と個人の尊厳など、多くの問題をはらみ、時間が経つにつれて次第にスリリングになっていきます。ある枠組みの中に生きる人間が抱える、普遍的な葛藤を描く物語。

                        

                         

〈あらすじ〉

1648年、ムガル帝国のアグラ。建設中のタージマハルの前。「建設期間中は誰もタージマハルを見てはならない」と、皇帝からのお達しがあった頃。

ついにタージマハルのお披露目の日の前日、夜通しで警備についている、フマーユーンとバーブル。二人は幼い頃からの親友であり、現在は軍に入隊をしている。警備中はタージマハルに背を向け、沈黙のまま直立不動でなくてはならない。だが、空想家のバーブルは黙っていられなくなり、律儀に立ち続けるフマーユーンに話しかけてしまう。二人の会話はまるで「ゴドーを待ちながら」の二人のように、もしくは「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」の二人のように、とりとめのない言葉の応酬のようでありながら、二人の人間の差を描き出して行く。やがて二人は、バーブルが不用意に発した一言を発端に、あまりにも理不尽で悲劇的な状況に追い込まれていく。その先にあるのは......。