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オペラ『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が初日を迎えました

2021/2022シーズンオペラ・オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が初日を迎えました。

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『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第3幕より

『ニュルンベルクのマイスタージンガー』はワーグナー作曲の壮大なオペラで、20人近くのソリストを始めとする大勢の出演者を擁し、上演時間も6時間近くかかる大作です。芸術のあり方そのものをテーマとした作品でもあり、世界中の劇場で節目となる機会に上演されることの多い祝祭的作品として知られています。

今回の上演は、2020年夏に向けて新国立劇場と東京文化会館の共同制作で展開してきた<オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World>の第2弾として、この年の夏に相応しい祝祭作として企画されたものです。東京では15年ぶりとなるこの大作の上演に大きな期待が寄せられていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年公演、そして今年8月の東京文化会館も残念ながら公演中止となり、今回が待望の上演でした。

このプロダクションはザルツブルク・イースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場との国際共同制作で、2019年にザルツブルクで初演を迎えていました。

イェンス=ダニエル・ヘルツォーク演出の『マイスタージンガー』の舞台は"劇場"。歌合戦をめぐる人間模様が、現代の劇場に出入りする人々のぶつかり合いになって活き活きと描かれます。最終シーンに用意された、胸のすくような解決も極めて今日的です。


要となるハンス・ザックス役に出演したトーマス・ヨハネス・マイヤーは、この公演でついに、延び延びとなっていたザックスのロールデビューを飾りました。世界最高峰のワーグナー歌手であり、新国立劇場でもおなじみのマイヤーの艶やかな声とスケールの大きな演技は、観客の深い共感を呼びました。皆の笑いものになるベックメッサーには、新国立劇場で大人気のアドリアン・エレートが面目躍如を果たし、コメディ俳優ぶりと悲哀の滲む表現を見せて大きな拍手を贈られました。深い声と繊細な表現が持ち味のポーグナー役ギド・イェンティンス、ヴァルター・フォン・シュトルツィング役として急遽ドイツから駆け付けたヘルデン・テノールのシュテファン・フィンケも大きな拍手を受けました。そして、ザックスやヴァルターらと激情を交わすエーファには林正子が出演、踏み込んだ表現力が大好評を博しました。

さらに、ダーヴィット役は若手テノール伊藤達人が飛躍を見せ、充実した声で存在感を示したコートナー役の青山貴をはじめ、村上公太、与那城敬、秋谷直之、鈴木准、菅野敦、大沼徹、長谷川顯、妻屋秀和と、日本を代表する歌手陣が勢揃いしたマイスター達の迫力のアンサンブル、マグダレーネ役のメゾソプラノ山下牧子、夜警の志村文彦の活き活きした演技も圧倒的でした。


合唱には新国立劇場合唱団と二期会合唱団が出演、感染対策を配慮しながらも、圧倒的な歌唱と溌溂とした演技で観客を魅了しました。

オーケストラピットには、大野和士が音楽監督を務める東京都交響楽団が入り、大野和士の指揮のもと、繊細で喜びに満ちたワーグナーを聴かせました。新国立劇場オペラ芸術監督、<オペラ夏の祭典>総合プロデュースとして長い時間このプロジェクトを統括し、6時間に渡る演奏を片時の隙もなくリードした大野和士には、カーテンコールでも盛大な拍手が贈られました。

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『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕
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『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第2幕
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『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第3幕


『ニュルンベルクのマイスタージンガー』は、12月1日まで公演が続きます。心震わせるワーグナーの祝祭作を、どうぞお楽しみください。