尾高忠明芸術監督による特別企画
コジ・ファン・トゥッテ<演奏会形式>

新国立劇場オペラ公演には、出演するソリストの全ての役柄にカヴァー歌手がキャスティングされています。
カヴァー歌手は、本役歌手と同様、事前の勉強をし、稽古から公演までいかなるアクシデントにも対応できるよう本役歌手の控えとしてスタンバイしますが、本役歌手にトラブルがない限り、舞台に立つことはありません。日本のオペラハウスで、日本人歌手の活躍の場は必要不可欠と考える尾高芸術監督は、日本を代表するオペラ歌手たちが、カヴァー歌手として新国立劇場オペラ公演を支えていること、そして、日本人歌手たちの実力を、観客の皆様にも知っていただくために、2011年5月の『コジ・ファン・トゥッテ』公演カヴァー歌手による歌唱の場を演奏会形式で企画しました。副題を「恋人たちの学校」というこの作品、異性に対して感情のおもむくままにしていると痛い目にあいますから、理性をお忘れなくという“教育的寓話”とも呼べる作品として誕生しました。このモーツァルトの美しいアンサンブル・オペラには、6人のソリストがみな、そろって高いレベルで優れたアンサンブルを聴かせることを求められます。尾高忠明芸術監督による特別企画『コジ・ファン・トゥッテ』(演奏会形式)にご期待ください。

ものがたり

18世紀のナポリ。士官のグリエルモとフェルランドは、美しい姉妹フィオルディリージとドラベッラとそれぞれ婚約している。老哲学者ドン・アルフォンソにそそのかされ、ふたりは恋人の貞操観念をめぐって賭をすることになる。戦場に赴くことになったふりをして偽りの別れを演じた後、嘆き悲しむ姉妹を女中のデスピーナがたしなめていると、変装したグリエルモとフェルランドが登場し、あの手この手で姉妹を口説く。姉妹の心は次第に揺らぎ、ドラベッラが姉の婚約者グリエルモに、さらに「自分の貞操は岩のように固い」と言っていたフィオルディリージもフェルランドの口説きに陥落してしまう。新しい2組のカップルの結婚式が行われるところに、軍隊(婚約者たち)の帰還が告げられる。姉妹は恋人たちに死ぬ覚悟で罪を告白すると、ドン・アルフォンソが芝居の種明かしをし、婚約者たちはめでたく元の鞘におさまる。