尾高オペラ芸術監督が最も愛するドイツ後期ロマン派を代表するR.シュトラウス作品。2007年に英国の名匠ジョナサン・ミラーにより演出されたプロダクションを『ばらの騎士』初演100周年を記念して再演します。時代背景を、原作にある貴族文化が頂点に達した18世紀のウィーンから、1912年に置き換えています。共通しているのは、劇中の登場人物たちも作曲・台本の名コンビも、それぞれが戦争を目前にした暗雲立ち込める時代の前夜に生きたことです。聡明な元帥夫人が、「時計を止めてしまいたい」と歌いますが、若い恋人との別れへの諦念や、時と共に容赦なく重ねる年齢だけでなく、世界全体の「時代」の移り変わりをも、彼女は感じ取っています。今回は新日本フィルハーモニー交響楽団が新国立劇場オペラに初登場となります。
20世紀初頭のウィーン。元帥夫人は夫の留守中に若き愛人の伯爵オクタヴィアンと愛し合っている。そこへ好色な田舎貴族オックス男爵が現れ、元帥夫人はオクタヴィアンを女装させ「小間使いのマリアンデル」と紹介して急場をしのぐ。オックス男爵は、新興貴族ファーニナルの娘ゾフィーと婚約し、オクタヴィアンに結納品として銀のばらを届けさせるが、若い2人は互いに一目惚れしてしまう。元帥夫人は若い恋人との別れの時を予感する。オックスはオクタヴィアンに決闘を挑まれ、軽い傷を負って大騒ぎ。さらに女装したオクタヴィアン“マリアンデル”からの偽りの恋文でまんまと騙され、結局ゾフィーとの婚約は破棄となる。元帥夫人も若い男女の恋を見抜いて、祝福しながらその場を立ち去る。