シェイクスピアの名作「オセロ」に晩年のヴェルディが7年の歳月をかけて作曲したイタリア・オペラ悲劇の頂点に立つ作品。冒頭の嵐の場面からオテロの破滅的な最期に至るまで、一瞬の隙もなく音楽が緊密なドラマを描いています。シェイクスピアの戯曲を元にしたオペラは数多くありますが、原作を勝るともいわれるのが、ヴェルディ傑作中の傑作「オテロ」です。愛の二重唱、オテロとイアーゴの復讐の二重唱、デズデーモナの「柳の歌」、「オテロの死」など聴きどころも数々。ヴェルディがワーグナーの影響を受けた作品としても知られ、ワグネリアンにもお勧めしたいイタリア・オペラです。
物語の舞台をキプロス島からヴェネツィアに移したマルトーネによるプロダクションは、ステージ上に50トンもの水をたたえた運河を蜘蛛の巣如く配し、水面の表情や色でオテロの妄想やイアーゴの陰謀を視覚化。美しく幻想的な舞台で、心理劇を見事に描き出しています。
テノールの難役オテロを歌うのは、強靭な美声を誇るイタリア屈指のドラマティックテノール、ヴァルテル・フラッカーロ。今シーズン開幕公演の「イル・トロヴァトーレ」マンリーコに続いての出演となります。今、ノリに乗っているフラッカーロが、満を持してオテロ役を初めて歌ったのは2010年チューリッヒ歌劇場。絶賛を博したフラッカーロのオテロにどうぞご期待ください。デズデーモナ役に急遽迎えたのは、昨年の新国立劇場「コジ・ファン・トゥッテ」で透明感溢れる美声と繊細な演技が印象的だったイタリアの若手ソプラノ、マリア・ルイジア・ボルシ。デズデーモナ役はザルツブルク音楽祭とローマ歌劇場でムーティ指揮のもと歌い、好評を博しました。タクトを握るのは、ウィーン国立歌劇場など世界の一流歌劇場で幅広く活躍する実力派指揮者ジャン・レイサム=ケーニックです。
15世紀末、ヴェネツィアの将軍オテロがトルコ艦隊に勝利し、嵐の中キプロス島に帰還する。カッシオが副官に昇進し、それを妬む旗手のイアーゴは、オテロを破滅させるべく謀略を企む。まずはカッシオを失脚させ、オテロへの取りなしを妻デズデーモナに頼むようカッシオに入れ知恵する。さらにデズデーモナの落としたハンカチを手に入れ、カッシオに持たせる。妻とカッシオの不貞を信じ込んだオテロは嫉妬に狂い、デズデーモナを絞め殺すが、真実を知り自害する。
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