28歳のワーグナーが自己の作風を確立し、後の名作群への幕開けとなった傑作。永遠に海をさまよう呪われたオランダ人船長を、乙女ゼンタの愛と自己犠牲が救う物語で、ワーグナー生涯のテーマである「愛による救済」が描かれています。有名な序曲、オランダ人のモノローグ、ゼンタのバラード、水夫の合唱など聴きどころ満載で、ラストはワーグナーの魔力ともいえるカタルシスに聴くものを導きます。比較的古典的な手法で書かれており、上演時間も短くワーグナーは初めてという方にもおすすめ。2007年初演のフォン・シュテークマン演出による舞台は、正統派のアプローチで好評を博しました。日本を代表する舞台美術家、堀尾幸男によるスケールの大きな舞台装置、テレビ・舞台など幅広い分野で活躍するひびのこづえのユニークな衣裳にも注目です。
タイトルロールのニキティンは、世界の一流歌劇場で活躍し、06年「ニーベルングの指環」ヴォータンなどマリインスキー劇場日本公演でたびたび来日。日本にもファンが多く待望の登場となります。来夏、ワーグナーの聖地・バイロイト音楽祭でもオランダ人役で出演が決まっており、一足早く新国立劇場でニキティンの歌うオランダ人が聴けるのは贅沢な限り。ゼンタ役のウィルソンは、DVD化されたバレンシア州立歌劇場「指環」ブリュンヒルデで一躍脚光を浴びた期待の逸材で、12年5月にはウィーン国立歌劇場でもゼンタ役を歌う予定です。バイロイト音楽祭でもダーラント役を歌っているランデス、幅広いレパートリーで大活躍のムツェックなど強力な出演者が揃いました。指揮は、35歳の若さで昨年ベルリン・フィルにデビューしたチェコの俊英ネトピルです。
悪魔の呪いを受けて永遠に海をさまようオランダ人船長。彼は、7年に1度だけ上陸が許され、永遠の愛を捧げる乙女に出会った時、呪いから解かれる運命にあった。彼はノルウェー船船長のダーラントと出会い、娘のゼンタに求婚する。宿命的な出会いを感じたゼンタは、永遠の貞節をオランダ人に誓う。ゼンタを愛するエリックは彼女の心変わりを責め、それを聞いたオランダ人は絶望し出航を命じる。ゼンタは彼を追って海中に身を投じ、彼女の永遠の愛によりオランダ人は呪いから救われる。
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