
現代演劇の最先端を疾走する演出家、野田秀樹のオペラ初演出作品。永年温めていたという『マクベス』解釈を鮮やかに披露し各方面から熱い注目を集めた舞台が、早くも再演されます。
『マクベス』は、ヴェルディが初めてオペラ化したシェイクスピア演劇。それまでの形式の枠を超え、ドラマとしてのオペラという新境地へ踏み出した記念碑的作品でもあります。全曲を通じて原作と同じく暗鬱で劇的緊張感溢れる音楽が満ち、予言、野心、疑念、陰謀、錯乱と極限へと追い込まれていくマクベス夫妻の心理を描ききる重厚な作品です。
野田演出は、運命を予言する魔女たちを戦場の死者ととらえ、繁栄に潜む死者の影に怯えながら権力への執着から逃れられないマクベスに焦点をあて、解放という大義のもとに権力を行使する現代の情勢にも通じる説得力をもって、スピーディーにドラマ展開を見せます。舞台上に群衆の創り出す重厚で幻想的な世界は圧巻です。マクベスにはスカラ座など世界を席巻するスター歌手カルロス・アルヴァレス、マクベス夫人にはゲオルギーナ・ルカーチが登場。王冠をめぐる緊迫の舞台を熱く彩ります。
ものがたり
11世紀のスコットランド。マクベスとバンクォーは森で魔女たちから、マクベスは王になる、バンクォーはその子孫が王位に就くと予言される。野心に燃える妻にそそのかされ王を刺殺したマクベスは、王位を手にするもののバンクォーへの予言が疑心を呼び起こし、バンクォー親子の殺害も企む。現場から息子を取り逃がし、死者の幻影に錯乱するマクベス。一方マクダフは、先王の遺児マルコムと共に反マクベスの旗を上げる。
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