平成20年度文化庁新進芸術家育成公演等事業
新国立劇場演劇研修所の成果

「珊瑚囁」
大人の為の少し残酷でとても静かなお話

  • 制作:新国立劇場演劇研修所

  • 小劇場

 2006年春に入所し、2年間にわたる基礎教育と1年間の舞台実習を経てきた2期生が、その成果を新国立劇場・小劇場で修了公演としてご披露いたします。
 この公演は、研修の仕上げというだけではなく、俳優としてのデビュー作ともなるような作品を目指して取り組んでいます。研修生一人ひとりの特色が際立つように、新作の書下ろしを活躍の著しい深津篤史氏に依頼、そしてその演出には演劇研修所所長(前・演劇芸術監督)の栗山民也が取り組みます。14人の瑞々しい感性とベテランスタッフとのコラボレーションもお楽しみください。

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ものがたり

 ありふれた大きな街のお話。街の中心部から繁華街を抜けてちょうど街のランドマークタワーが建物の陰に隠れて見えなくなる所にちょっとした空き地がある。私達はここをお化けビルジングと呼んでいる。誰が名付けたかは誰も知らないし、昔ここに大きな建物が建っていたかだって誰も知らない。ただ、いつでも私達はここに来ればここがお化けビルジングだってわかる。私達はそこで受付嬢になったり、社史編纂室長になったり、夜警になったり、掃除夫になったり、社員全員のパンを焼く職人になったり、してる。ただ、中々、社長になったり、重役になったり、普通の社員になったりする人がいないのが困りものだ。ある日、私達はこの街の旧市街図を手に入れた。
 それは折しも隣の国が戦争に負けた日の事、世界はこれまでちゃんと戦争に勝ったり負けたりって事を暫く忘れてた。
 これは埋もれた時間を透視する物語、平らに塗り潰す世界と戦う物語、時の声に耳を澄ますちょっぴりの人々と、それ以外の沢山の人々の物語です。