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これこそが私の作りたい映画なのだ『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』

『ヘンリー四世』だけではなく、さかのぼって『リチャード二世』から『ヘンリー五世』までの四部作(プラス『ウィンザーの陽気な女房たち』の援用も)を圧縮して映画化したのが、『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』(スペイン=スイス合作・1966年製作、原題は"FALSTAFF CHIMES ATMIDNIGHT〈" =真夜中の鐘〉)。タイトル通り、もちろん脚本・監督、そしてフォルスタッフ役もウェルズ。

映画『マクベス』や『オセロ』、舞台でも数多くのシェイクスピア作品を演出・主演してきたウェルズにとって、この映画は50歳になり太ってフォルスタッフにふさわしい体形になったのではなく、いつの日かフォルスタッフを演じることを目指して太ったのではないかと思わせるほど、フォルスタッフそのものになってのウェルズの集大成ともいえる。

前述のように、『ヘンリー四世』を中心に各作品のフォルスタッフに関する部分のみを入れ子細工のように緻密に組み込み、天衣無縫の悪党フォルスタッフと、裏切りたわむれてついに巨大な何かを失うハル王子の独創的な物語が展開されるが、セリフはすべてシェイクスピアの原典を厳格に守っている。

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